29 休息と趣味
アストラ……回復持ち……だと!?
マザーから仕事の話しを聞いて次の日、俺は自分に割り振られた自室にて目を覚ました。
「うーん、馴れない部屋だったけど良く寝れたな」
「シューウ」
くま吉も一緒に伸びをすると、服を着替えて食堂へと向かう。
途中で欠伸をしているライと合流すると、食堂に入る。
「あ! おはようぉマヒトちゃん、ライとくま吉ちゃんもおはようぉ」
「お、おはようございますですわ」
食堂ではユキとヨミが朝食を作ってくれていたらしく、此方に気付いて挨拶をしてくれる。
俺達も二人に挨拶をする。
「ああ、おはよう二人とも」
「おふぁよぅ」
「シュイ!」
挨拶を返してから1人居ない事に気が付いた。
「シノブはどうした? 見当たらないみたいだけど……」
「御呼びですか? 我が主……」
「ぬお!? い、いつの間に!?」
気付いたら隣に居たシノブに、不覚にも驚いてしまう。
シノブは満足気な雰囲気で挨拶をする。
「おはようございます、我が主……」
「突然現れないでくれ、心臓に悪い……」
全員が揃うと、ユキ達が出来た朝食を各々に配り。
二人が席に着いたら皆で「いただきます」と手を合わせる。
朝食はシンプルなスクランブルエッグとベーコンとサラダだが……サラダはユキ特製のドレッシングがかかって居るし、スクランブルエッグは絶妙な火の通り加減で旨い。
「ふふ、今回はヨミちゃんがほとんど作ったのよぉ?」
「お、御姉様程上手では有りませんですの」
「いや、充分美味しいよ? ヨミは良いお嫁さんになりそうだ」
「お、お嫁……ほ、褒め言葉として受け取っておきますわ御兄様」
朝食を食べ終わると、皆を集めてこれからの予定を話す。
「今日は取り敢えず王都へと向かって織姫にシノブの服を頼もう、寝間着や普通の服は買ったが冒険者用の服はまだだからな」
「……おお? ご配慮感謝……」
「ついでに王都を見て回ろうか? ヨミは一度行ってるけどゆっくり出来なかったしな?」
「そ、それでしたらわたくし、本屋に行って見たいですわ」
ヨミの言葉に俺は首を傾げるが、ライとユキは微笑ましそうにしている。
俺は疑問に思い、どうしてか聞いてみる。
「ヨミはどうして本屋に行きたいのかな?」
「ふぇ!? え、えっと……絵本を見てみたくて……」
「絵本? 小説とかじゃなくて?」
この世界は意外な事に書籍関係はしっかりとしている。
雑誌も有れば小説、絵本等とレパートリーも豊富である。
また、この世界絵本は地球の絵本より文字が多い。
「……好きですのよ……絵本……」
「そうか、良いよ服を頼み終わったら本屋巡りをしよう……シノブは何か無いか?」
「お嬢……優先で」
因みにシノブ内での序列が定まった様で、ライとユキを姉御と呼びヨミの事をお嬢と呼ぶのだ……当然の様に自分が一番下らしい。
まあ、ヨミも嬉しそうだし予定はこれでよさそうだ。
王都へと行くために街の外に行こうとすると、ハワードさんに声を掛けられた。
「おはようマヒト、朝から街の外へ?」
「ハワードさん、おはようございます。ええ、王都の知り合いに頼み事が有りまして」
「そうか、ギルドマスターから伝言でな……明日か明後日辺りにギルドに来て欲しいそうだ」
はて? 何かやらかしたかな? 身に覚えはないが呼ばれて居るなら行かないとね。
俺は頷いて了承する。
「分かりました、ドリトンさんに了解と伝えて下さい」
「ああ、伝えておくよ」
ハワードさんは頷くと、そのまま持ち場へと向かったようだ。
待ってくれて居たライ達に声をかけて王都へと出発する。
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時間は少し戻って、真人のカミングアウト後……フリーデン含めたイゴール領の領主であるエリック・イゴールは二人の男と話していた。
1人はエリックより体格は良くないが、スラッとした長身の青年で知性的な顔立ちしている。
「……なるほど、確かに父上が好みそうな話しですね」
「分かるかロニー、ここまで心沸き立つのは冒険者をしていた時以来だ!」
「しかし、騙されて居る可能性は?」
「無い、ギルド職員数名、ギルドマスター、上級冒険者剛剣のカインにアイザックの部下も一人彼の事を知っている」
エリックの言葉に彼の息子である長男、ロニー・イゴールは「そうですか」と返す。
すると、今度は体格の良い爽やか系の顔立ちの青年が話しに入る。
「部下って、ハワードの事だろ? 最近やたら疲れた顔してんなって思ったらそう言うことかぁ!」
「彼は剛剣のカインと友人らしくてね……それ故にって所らしい……たまには休暇をやれよ? 優秀な人材を潰したくはないからな」
アイザックと呼ばれた青年はエリックの次男でアイザック・イゴール、イゴール領を守る騎士団の団長である。
彼らが冒険者ローレンス・イゴールの兄弟達で有った。
「確か、ローレンスとマヒトくんは知り合いらしいな?」
「ええ、ローレンスからは何か有ったらよろしくと来て居ましたが……アイツは彼が王で有るのは知らないらしいです」
「まあ、城を出てから分かったならしょうがなくね?」
因みにイゴール兄弟の仲はかなり良好である。
エリックはニヤっと笑うと面白そうに言う。
「アイツには言わなくて良い、なんかの拍子に知って驚くのが楽しみだ……」
「……はぁ、父上今回の件ですが……イゴール家はマヒト殿を支持する方向で行くべきと思います」
「俺もさんせーい、って言うか是非ともその従者と手合わせしてみてぇ!」
そんな流れでイゴール家は家族総出で真人を支援する事になったのだった。
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「それで、王都まで来たわけね……ナナフシのアクセサリーは腕輪にしようかしら」
現在俺達は王都の外でシノブのナナフシの姿の採寸を織姫にして貰って居る。
その際、織姫には俺の事をちゃんと説明した。
「……なんか、真人君は凄いことになってるわね……」
「まあ、第一は問題を解決して元の世界に帰る事だろ?」
「そうね……ねぇ、真人君……本当に元の世界に帰る気が有るの?」
「……」
「なんてね……私らしく無いわね。忘れて……」
織姫の言葉に咄嗟に返せなかった……俺はライ達を置いて元の世界に帰るのだろうか?
俺の顔を見ていたライが、優しく声を掛けてくる。
「マヒトくん、何を思い詰めて居るのかな? お姉さんに聞かせてみなさい」
「……もしも、俺達が元の世界に帰る時に俺はどんな選択をするんだろうか……」
俺の言葉にライは「何だそんなことか」と言わんばかりに笑う。
仕方ないだろ? 勿論元の世界には帰りたい……しかし、その為にライ達が困るなら俺は……
「マヒトくん、私達は大丈夫だよ……だからそんな辛そうな顔は辞めて欲しいな」
「……ライ、俺にとってライ達も大切な存在だ……だから……考えるよ俺は……その時がくるまで……」
俺の決意の言葉に、ライは嬉しそうに「そっか」と呟く。
元の世界に帰れるのが何時になるかは分からない……後悔の無い選択がしたいそう強く思った。
「おーい! 真人君、シノブさんの採寸が終ったから明日取りに来て……? 何か有った?」
「いや、ちょっと頑張らないとなって思っただけだ」
「ふーん、まあ良いわ! 服は直ぐに出来るから明日取りに来て……ピーンと来たわシノブさんに絶対似合うと思うわ」
「分かった……じゃあ、また明日」
俺はそう言うと織姫と別れる。
ソワソワしているヨミの頭を撫でると、早速街へと繰り出すことにした。
「よーし、じゃあ本屋巡りにしゅっぱーつ」
「ふふ、楽しみですわ……」
元の世界に帰るのが何時になるかは分からないが、ライやヨミ達の笑顔を見て更に決意を改めるのだった。
次回 本屋巡り~魔道書何かより断然絵本~
ヨミ「絵本ですわ! ……恋愛小説……?」
ライ「ヨミには早いかもね」
ユキ「あらぁ……顔真っ赤で止まってるわぁ」




