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ムシテイマー~役目も無いので虫達と自由に暮らす事にしました~  作者: SUZUKING
第一章 想いは遥か遠くより君に……

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25 捕獲作戦実行!!

 ルーシィとの会話の後、戻ってきたナナフシから奴等の動向を聞く。


『今回も奴等は森に入ってきたな……恐らくお前達を探してる』

「この家に来る可能性は?」

『無い……個々には俺の魔力を被せてある』

「ルーシィはここに居てくれ、ユキ行くぞ」


 今回の作戦はおれとユキだけで囮になり獲物を油断させる、ユキの罠は察知されないよう行きながら仕掛ける事になるが問題無いらしい。


「むしろその方が楽しいわぁ……優位に立ったと思った時には終ってる……ふふ、ど~んな表情をするかしらぁ」

「ユキさん、表情が怖いです」

「あら、早速嫌な気配が来てるわねぇ」


 ユキは気配感じてるらしいが俺は何も感じない……そう考えるとユキ達に気付かれること無く部屋に入ってきたナナフシの異様さが目立つ。

 現在も作戦通りなら気配を消して、ライ、ヨミと共に追随してくれてる筈だ。


「それに比べてナナフシちゃんは流石よ全く気配がないわぁ……本当に来てるか怪しいくらいよぉ」

「そろそろナナフシから聞いた開けた場所に出る筈だ……大丈夫か? ユキ」

「ふふ、しっかりと絡め取ってるから安心してぇ?」


 ユキの言葉に頷くと同時に開けた場所に出た。

 そして、一休みの振りをして近くの岩に腰掛ける。


「捕獲せいこーう……本当に何も見えないわぁ」

「え? これ取れてるの?」


 突然のユキの捕獲宣言に、思わず聞いてしまった。

 ユキは気を利かせて見えにくい魔力の糸を見えやすくしてくれる。

 すると、人が何かを絡め取っていることが分かる。


「グルル??!?」

「うわ、姿が見えた……え? カメレオン?」

『インビジブルリザード……醜悪な見た目の人喰いトカゲだ』


 ナナフシ達が姿を見せると、自身の状況を察したのか更に激しくもがき始めるが徐々に衰弱していく。

 それを見て、ユキは恍惚と笑うとインビジブルリザードに向けて絶望の言葉を放つ。


「無駄よぉ? この糸は特別なのぉ、遅効性の毒がゆっくりと貴方の身体を蝕んで……貴方は終えていくそういう毒だものぉ」

「グル……ル、グガァ!」

「おっと!?」


 最後の力を振り絞り、俺に飛び掛かってくるインビジブルリザード……

 しかし、それは叶う事は無い。

 いつの間にか元の姿になったヨミがインビジブルリザードの首を経ち斬ったからだ。


「グル……」

『御兄様に牙を向ける何て許せませんわ!!』

「ふー、ビックリしたな……ヨミ、ありがとう」

「でもぉ、元の姿になるのは頂けないわぁ? 次から気を付けましょうぉ?」


 俺達の言葉にヨミは「うぅ、はいですわ」と顔を赤くして頷く。

 それはそうと、コイツの飼い主は何処に居るんだ……そう言えばナナフシの姿もない?




 場所は少し離れた木の影で、魔物の視界を覗く魔法を使い一連の状況を見ていた男が居た。


「見つけた……見つけたぞ!! 間違いないあの男だ!! あの男が新たな王……!」


 男は興奮気味に声を上げる。

 探し続けていた存在……その報告は迅速に主に送り、自身の昇格も確実になる興奮しない筈もない。

 その時だった……


『生憎だが……此処までだ……』

「ぬう!? な、何だ身体が動かん……クソ、放せ!」


 何者かに拘束された男……しかし、男も狡猾だった……抜かり無くマヒトの姿は……敵にばれることになる。


「ヒヒッ、た、確かに新たな王の姿は受け取りましたぞ……ヒヒッ」


 遠く離れた場所にて、魔族の男とは別の魔族がニヤリと笑う。


「虫の王……それが新たな王!! 主も喜ぶ事だろう……ヒヒッ」


 大きな闇が蠢き出す。




 しばらくした後に、ナナフシが喧しい荷物を持って現れた。

 それはどうやらこのカメレオンの飼い主らしい。


「クソ! 貴様らこんなことをしてただで済むと思うなよ!」

「ライ、コイツが占い師に化けていた魔人族か?」

「間違い無いね……少しおいたが過ぎたようだね?」


 ライの言葉に男は何やら得意気な表情をする。


「まあ良い、此方の目的は既に果たした! きっと我等が主はお喜びになるだろう!」

「あらぁ、是非ともその目的とやらを聞かせて欲しいわぁ」

「ククク、良いだろう! 我等が主は命じられたのだ新たな王を探し出せとなぁ……」

「でも貴方はわたくし達に捕まった……これでは目的を達したとは言えないのでは無くて?」


 ヨミの言葉に魔人族の男は更に得意気になる。


「お前達の動向は我が同胞へと視界を通じて送ってある……ふふ、ふははは! 最早手遅れだバカどもめ」

「んー、ちょっと困った事になったねぇ……」

『コイツはどうする……』

「ああ……“任せる”よ僕達はルーシィの家に居るからさ」


 ライの冷たい声にナナフシが頷くと、ズルズルと魔人族の男を何処かに引きずって行く。

 どうするのか聞くつもりは無い、今後の事も話し合う必要が出てしまったので取り敢えず俺達はルーシィの家へと帰るのだった。




 真人達と別れたナナフシは魔人族の男を森の深くへと連れてきていた。

 男は何とか抜け出そうと踠いて居る。


「クソ、離せムシケラの分際で……ぶふぅ」

『さあ、色々と吐いて貰う……なに、エゲツナクイタイダケダ』

「は!? や、辞めろヤメロォォォォ」


 森の深い闇に魔族の男の絶叫が響くが闇に飲み込まれたその声は誰にも届くことはなかった。




 その後、ルーシィの家でルーシィに安全が確保出来た事を報告して。

 眠っている冒険者達は村人達に協力して貰い、ナナシ村へと連れていくことになった。


「ルーシィ! 良かった無事だったのね!」

「ん、心配かけてごめんなさい……アイリス叔母さん」

「良いのよ貴女が無事なら」

「血縁だったのか」


 話を聞くと、ルーシィとアイリスさんの関係はアイリスさんがルーシィの母親の姉らしい。


「エリーが病気で亡くなってから、一人で森に住んでいたから……」

「ん、心配しないでこれからは此方で住むから」


 アイリスさんが驚いた表情でルーシィを見る。

 優しく微笑み掛けると頷く。


「そう、なら家に来なさい……夫も凄く気に掛けていたから……ね?」

「うん!」


 どうやら彼方は丸く収まった様だ……問題はあっちだが……


「でも、一旦家に戻っても良い? 色々やることが有るから……」

「……分かったわ、行ってらっしゃい」


 ルーシィは近付いてくると、俺達に声をかける。


「家に戻ろ?」

「ああ、ちゃんと話し合わないとな」


 俺達はナナフシが待っているであろうルーシィの家へとむかうのだった。




 ────────────────────




 ルーシィの家に着くと仕事を終えたらしきナナフシが姿を見せた状態で立っていた。


「ただいま」

『……おかえり』


 ルーシィの言葉にナナフシも返す、これだけで二人の関係性の良さが見える。

 ルーシィは俯いてしまうが、ナナフシはそんなルーシィに話し始める。


『エリーと出会ったのは少し森の奥の薬になる綺麗な花の群生地だった……』

「……?」


 ルーシィは突然のナナフシの話しに首をかしげる。

 ナナフシは気にせず話し続ける。


『エリーとの会話はごく普通の会話だった、「手間の掛かる娘が居る」、「姉の要望は何時も細かい」……凄く楽しそうに話していた』

「でも、死んじゃった……あんなに元気だったのに……何も教えてくれなかった!!」


 ルーシィの母親はルーシィに心配を掛けない為に無理して居たみたいだな。

 泣き始めたルーシィの言葉にナナフシは頷く。


『ああ、俺も言った娘には伝えた方が良いと……でも、エリーの病は予想よりも悪かった「もう数日も生きられない……だから今のうちに娘に教えないと行けないの……」と言ってた』

「そんなの……もっと……私もお母さんと一緒に知ってたら……」

『エリーからの伝言だ「ルーシィ、ごめんね……愛してるわ」……彼女は最後までルーシィの為に生きたそれだけは忘れないでくれ』


 ナナフシの言葉にルーシィは頷く。

 そして、ナナフシはついでとばかりに話を続ける。


『ナナシの森のナナシ様は俺の事じゃない、この森は少し特殊だ』

「どういう事だ?」

『この森は俺達が住み着く前から、森全体が村人と森を守り続けていた』


 え? ってことはこの森はナナシ様とは別の意思が居るって事か?

 俺達が困惑していると、ナナフシは頷いた。


『森には森の意思が有る、ルーシィ……エリーは森の意思と共に生きていた……』

「森の意思?」

『ルーシィ、これからも森と生きろ……別に森に住む必要は無い、森の意思を尊重し共に生きて行けば良い』

「お母さんが何時も言ってた「森の恵みは森の意思からの贈り物」って」


 ルーシィは懐かし事を思い出したのか、少し表情が和らぐ。


『村を守れ、エリーがしていた様にな……俺は出掛ける』

「そっか……また会える?」

『ふ、森の導きが有ればな……手紙ぐらい出す、会いたかったら会いに来い』

「うん……今度は一緒にお花を見に行こう?」

『……ああ、そうだな』


 少女とナナフシの間に風が通っていく……暖かいその風は二人を包むと過ぎ去っていった。

 ナナフシは此方に来ると、少し気まずそうに話し掛けてくる。


『ルーシィは村に住むのだろ? 俺はお役御免と言うわけだ……前話での発言は撤回する連れてってくれ』

「突然のメタ発言!? ……良いのか?」

『ああ、俺はもう必要無いだろう……ルーシィは一人じゃない』

「そうか、じゃあよろしく」


 こうして、俺達の旅にナナフシが着いてくることになったのだった。

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