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23 神隠しの森

ゼンゼロの新バージョンとブラザーシップがほぼ被ってる……だと!?

 真人達はライに乗って……では無く馬車を使って依頼に書かれた森の近くの村であるナナシ村へと向かっていた。


「しかし、兄ちゃん達は何でナナシなんかに? あそこは森しかねぇだろうによ」

「ははは、その森に用が有りましてね」

「別嬪さんを三人も連れてかい?」

「おー、おじさん良いこと言うねぇ」


 ナナシへの馬車の御者は少し歳の行ったおじさんだが、ナナシへと行くことを不思議に思って居るみたいだ。

 ライが上手いこと話しを合わせているのに少し感心する……コミニュケーション能力が高い。


「森ねぇ、ここ最近物騒な噂が多いから気を付けな……神隠しに合うだとか、魔女が住んでるだとかよ」

「魔女?」

「そうだよ、何でも森の奥には怪しい女が住み着き出したとか何とか……」


 ライがおじさんから噂話と言う情報を聞いてる間、こっちはと言うと馬車になれないのか少しヨミがソワソワして俺とユキの間にすっぽりと収まって居る。


「な、何と言うか落ち着きませんわ……はぅ……」

「あらぁ、乗り物酔いかしらぁ? んー、それにしては顔色は良いわねぇ」

「こ、こんなに狭い中で居るのは少し緊張しますわ……」


 そんなやり取りをしていると御者のおじさんの声が聞こえる。

 どうやらナナシの村が見えて来たみたいだ。


「おーい、ナナシが見えて来たぞ!」

「ヨミ、もうすぐ着くみたいだからそれまで辛抱してくれ」

「わ、わかりましたわ」


 しばらくすると、馬車が完全に停止したので扉を開けるとそこにはいかにも田舎な村の風景があった。

 そして、村の奥には鬱蒼と生い茂る森が有る。


「確かに何も無いな……」

「……? 何だか森から不思議な気配を感じる?」

「おやおや、旅の御方かい? こんな寂れた村に来るなんて珍しいねぇ」


 送ってくれた馬車を見送ると、一人の村人が話し掛けてきた。

 少し悲しそうな村人の話しを聞くことにした。


「この村で一体何があったんですか?」

「最近森で行方不明者が続出してね……占い師様の助言で呼んだ冒険者達も帰ってこない有り様で……今じゃナナシ様の森も神隠しの森なんて畏れられる様になっちまった」

「ナナシ様?」


 村人の言葉に俺は思わず聞いてしまう。

 村人は少し明るい表情でナナシ様の事を話し始める。


「なんだい知らないのかい? この森はナナシの森と呼ばれていてね、この森には魔物が少なくて狩りなんかもしやすかったのさ……昔の伝承にこの森には姿の見えないナナシと呼ばれる存在が魔物を倒したり、村人を守ってくれてると書かれて居たのさ」

「今はナナシ様は居ないと言うことですか?」

「それは分からない……でも最近だとナナシ様の祟りだとか騒ぐ者達も出始めてねぇ、占い師様まで賛同するし何が何やら……」


 村人から話を聞き終えて、俺達は宿へと向かっていた。

 ライ達にさっきの話しについて聞いてみる。


「三人共、今の話しどう思う?」

「間違いなくナナシ様がマザーが言っていた奴だと思うけど……」

「そうねぇ……そうだとしても、この村に世話を焼く理由が分からないわぁ」

「どのみち、人への危害を本当に加えて居るのならば手を打つ必要が有りますわね」


 三人の言葉に頷くと、俺は「よし!」と気合いを入れる。

 分からないなら調べるしか無い、その為に明日は森に入るべきだろう。


「それじゃあ明日は森に入って見よう……」

「その前にもう一つ気になることが有るんだよねぇ」

「ん? 気になること?」


 ライの言葉に俺が首を傾げると、やれやれと首を振ってヨミが説明してくれる。


「占い師ですわ……胡散臭い事この上ないですわ」

「そうそう、この世界で占い師は村人にはすがり付く存在で大体は村人を安心させると思うんだけどさ」

「今回の占い師は不安を助長させている?」


 俺の言葉に頷くライ。

 そうだとすれば一つ矛盾するのは冒険者に依頼を出した事だ……いや、もしかして……


「依頼を出したのは、冒険者を誘き寄せる為……?」

「どのみち探りを入れた方が良いね……今夜私が行くよ……」

「OK、その件はライに頼むよ」

「後は御者のおじ様が言っていた魔女も気になりますわね……」

「はいはい、もう宿に着くからお話はそこまでぇ……取り敢えずライちゃん待ちで明日は森に行きましょうぉ」


 宿が見えた所でユキが話しを締めてくれる。

 そんな訳で今夜のライの調査結果を聞いた後で森に行くことで話しは纏まった。




 その後深夜、ライは予め宿の店主に聞いていた占い師の家へと来ていた。


「至って普通の民家だね……〈認識阻害〉」


 認識阻害は気配だけでなく音も認識出来なくなる、格上には効かないが大抵の存在がライに取っては格下なので問題無い。

 後は堂々と窓へと近付いて中を覗くだけだ。

 しかし、その際に足下の違和感に気付いた。


「んー? 罠だね、しかしも警報系や察知系が多い印象だね……当然只の占い師には要らない物だ」


 罠をヒョイヒョイと避けて窓へと到着、そのまま窓の中を覗き込む。

 そこには占い師と思われる存在が何かをしていた。


「また、新しい冒険者が着たみたいだな……あの御方へと良い報告が出来るといいが……」

「あの御方? それにあの姿は……魔人族?」


 占い師の家に居たのは魔人族だった。

 誰かと何かで通信している様子なのでライはそのまま耳を澄ます。


『ヒッヒッヒッ、此方も順調に事を進めておりますとも』

「……一刻も早く見つけ出すのだ……あの御方の憂いを払うのだ……」

「何かを探してる……あ、やば」


 聞くのに集中していたら、ベタベタな展開の植木を落とすを発動! ガシャン!

 その音に魔人族の男が此方を振り返る。


「誰だ!? ……? 誰も居ないな」

『風に吹かれたのでしょう……それよりも……』

「ふー、認識阻害があるとは言え……ここが潮時かな取り敢えず占い師は黒だった……魔女の方はどうかな?」


 魔人族の男が確認に来た時から、じっとしていたライはその後占い師の家を後にした。




 ライが帰った後の占い師の家では魔人族の男が今だ話して居た。


「しかし、この村の住人も夢にも思わぬだろうな……永く手助けしていた占い師が偽者と入れ換わって居るとはな」

『妙案で御座いましたな』

「ふん、占い師もしぶとかったが……森の魔女娘も邪魔だな……」


 一人の存在に正体がバレた事に気付か無いまま男達の話しは続くのだった。




 ────────────────────




 翌朝、俺達はライと情報共有をしていた。

 ライから聞いた話しに思わず顔をしかめる。


「つまり占い師は既に殺されていると?」

「そういう事になるね……どうする? 直接叩くか森に調査に行くか」

「一旦森へ行こう、今回の神隠しが魔人族の仕業なら何か手掛かりがある筈だ」

「その方が良いと思うわぁ、突然心の拠り所が無くなれば村人達も混乱するでしょうしぃ」


 俺達が話してる間、くま吉とヨミが戯れているのを発見。

 跳ねならが遊ぶくま吉を捕まえて、背中を優しく揉んでる? しかし、くま吉は気持ち良さそうだ。


「何故貴方は御兄様と一緒に居るんですの?」

「シュフゥ~……シュイ?」

「ふふ、そうですのね……これからも御兄様を守って下さいませ」

「シュシュウ!」


 何かを話しているのが気になる。

 でも、何となく楽しそうだから気にしないでおこう。

 そう思った俺はヨミ達に声を掛ける。


「二人共、森に行くから準備してくれ」

「わかりましたわ」

「シュイ!」


 そして、準備を終えた俺達は森に行くことを宿の主人に伝えて外に出た。




 外に出て、早速村の人に森へ行くことを伝える。


「そうですか……気を付けて行ってきて下さい」

「はい、分かってます」


 そして、ふと一人の女の子此方を見てることに気が付いた。


「お兄さん達は森に行くの?」

「ああ、神隠しの調査にね」

「ふーん、気を付けたら良いよ……森には得体の知れない者が住み着いてるから」

「それって……」

「ルーシィ!」

「あ、バイバイ」


 女の子は焦った表情で走り去ってしまった。

 女の子の名前を呼んだ女性は息を切らせながら立ち止まってしまう。


「はぁ……はぁ……こん、こんな時位家に来れば良いのにあの娘は……」

「えっと、大丈夫ですか?」

「貴方達! もしかして冒険者!? お願いあの娘が心配なの森へ行くならあの娘を連れてきて!」

「ええ? と、取り敢えず話しを聞かせて貰えませんか?」


 俺達は女性の必死の形相に取り敢えず話しを聞くことになったのだった。




 鬱蒼とする森の中、一軒の古ぼけ家が建っていた。

 その家に入り扉を閉めた少女は何かの気配に眉間に皺を寄せる。


「帰ったのか魔女の少女……」

「何度聞いても不思議、どこから声を出してるの?」

「練習した」

「そう」


 少女は素っ気なくそう返すと、買ってきた物を調理し始める。

 その間に気配が消えたのに気付く。


「ん、勝手に居なくなって……」


 少女はムッとした表情で言う。

 居なくなった得体の知れない存在、少し前に会った存在に悪態をつく。


「バカ、余っちゃうじゃん」


 少女は食事を終えると、村へ届ける薬の調合を始めたのだった。

異形と少女の構図って良いよね

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