閑話 勇者達の旅2 情報を探してサカエへ
ジャンボリー買っちゃった……11月にはブラザーシップがあるのに……
正義達は情報収集の為に商人達の国、商業国家サカエへと向かっていた。
現在はサカエの国境近くの街〈マドメ〉まで来ていた。
「ここまで来ても、気になった情報は無かったね……」
「気を落とさないでユイ、情報収集は根気が大事なのよ……きっとサカエに入れば何か掴めるわ」
しかし、サカエの国境まで来ても目立った情報は無く、ユイは「はぁ」とため息をついていた。
そんな優衣を慰めているのはレティアだが、レティア本人も少し疲れが見える。
「元々当ての無い旅だったが……こうも何もないとな……」
「魔物不自然な凶暴化も無ければ何者かの怪しい噂も入ってこないか」
正義とローレンスも険しい表情で顔を見合わせている。
それもそうだろう、ここまで巡った街の数は三つ程だろうか……何処に行っても何の情報も得られなかったのだ。
「サカエなら流石に何かしら集まって居ると思う……早めにサカエに入ろうと思うが大丈夫か?」
「了解、川崎さんも問題ないかな?」
「うん! サカエにはどのくらい滞在する事になるの?」
優依の質問に答えたのはレティアだった。
「短ければ一週間……長くても三週間位は必要になるわね」
「そんなに長いの?」
「情報は足が早いのよ、移り変わる物だからある程度滞在しないと有効な情報は得られないのよ」
「ほぇ~」
レティアの言葉に優衣は感心した声をだす。
レティアは少し照れた表情で話題を反らす。
「そ、それにあの国の首都には大きな港が有るし海の向こうの情報もある程度手に入るわ」
「海の向こうの大陸には流石に出向けないが……それでも何か有る事を知るのが重要だからな……」
レティアの言葉にローレンスが頷く。
「それじゃあ今日はもう休もうか……明日は早朝から移動する事になるしね」
「そうだな……俺はちょっと兄さん達に何か情報が無いか伝書鳩を飛ばして来るから先に行っててくれ」
ローレンスと別れると、正義達は泊まっている宿へと戻るのだった。
ローレンスはギルドの所有の伝書鳩でイゴール家に手紙を送っていた。
『サカエへの街での目ぼしい情報は無し、イゴール領周辺での情報を求む』
簡潔に書かれた手紙を受け取った鳩はそのまま空へと飛びだった。
「時間が取れたら久々にクルーデンに帰りてぇな……その時はマサヨシ達も一緒にだな」
ローレンスはそう言うと宿へと戻るためにギルドを後にしたのだった。
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翌朝、正義達は早速馬車に乗ってサカエの関所へと向かっていた。
「さあ、もうすぐ国境の関所に着くけど、サカエは結構何事にも寛容な国だ……勿論裏側にもな……」
「う、裏側……」
「裏稼業……盗賊とかそう言う類いが居ると?」
「そう、だから単独行動は慎んで下さい」
「「わかりました」」
ローレンス達の注意に素直に頷く二人、そんな話しをしていると関所に着いたのか馬車がスピードを緩め始めた。
馬車が完全に停まると窓を叩く音が聞こえる。
「サカエの国境ですので身分の証明出来るものをお願いします」
「全員分のギルドカードだ」
「……!? ローレンス・イゴール!? 特級冒険者の!?」
「出来れば騒がない様に願いたい」
「ああ、すいません……んん、問題無いそのままお進み下さい」
「ありがとう」
少し驚かれたものの問題なくサカエへと入る事に成功した。
その後正義達はサカエについてレティアから話を聞いていた。
「サカエは少し特殊な政治体制を取っていることで有名ね」
「特殊な政治体制?」
「サカエは商業国家……その所以は10年に1度行われる国主交代に有るの」
レティアの話に興味深そうに聞き入る二人と興味無さ気なローレンス。
少し呆れた表情でレティアはローレンスを見るが直ぐに話しに戻る。
「その交代の方法が10年間で最も利益を出した商会の会長が10年間、国主を務める事になるのよ」
「へぇ、凄い国だね」
「そして、今国主を務めて居るのが……確か、ヒノモト商会のキノシタって人だった筈……」
「「え!?」」
聞き覚えの有る言葉が連続して出てきて驚く正義達。
二人の様子に首を傾げるレティア。
「どうしたの? 二人共、そんなに驚いて」
「え、えっと……」
「レティアさん、ヒノモトって言うのは俺達が居た世界で俺達が住んでいた国の別名なんだ」
「そうなの?」
「それにキノシタ……恐らく俺達のカワサキやクドウと同じく名字だと思う」
俺達の言葉に今まで静かにしていたローレンスが会話に混ざる。
「もしかしたら案外召喚された別世界の人間は居るのかも知れねぇな……それかその子孫か」
「そうだよね……子孫の可能性も有るのか」
「……気になるなら会いに行きましょうか! 私の身分を明かせば無碍にはされないわ」
「それは……」
言い淀む正義達と対象的にローレンスは乗り気だった。
「確かに国主とも成ればかなりの情報も集まってるだろうし……悪くないな」
「そうよ、それにもしも同郷の人だったらある程度貴方達に融通してくれるかも知れないし……助けると思って……ね?」
レティアの言葉にむしろ心配だったのはレティアの身分を明かす事に対してだったが……二人共乗り気なので正義は頷く。
「分かった、首都に着いたら国主様に挨拶に行こう」
「ええ!? で、でもそうだよね情報収集の為にも顔を憶えて貰うのも大切だよね!」
「ふふ、ユイも成長してる見たいで私嬉しいわ」
「そうかな? えへへ……」
レティアは娘の成長を見守る母の如く有り様だがとにかく正義達はサカエの首都〈セイカイ〉へと向かい国主と会う事にしたのだった。
はたして、有益な情報を得ることは出来るのだろうか? 次回へと続く。
時間的には真人達の服作ってる辺りの想定ですがちょっとその辺りがばいです。