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閑話 私が本当に探していたモノ

カマキリさんは結構重い過去を持ってる……

 物心ついた時にはわたしは、死神カマキリもといデスサイズマンティスと言う種族で有ることに誇りを持っていた。

 父も母も優しかった、他のマンティスの種族はもっと殺伐としているらしいがデスサイズマンティスは仲間意識が高い。


「母さんの強さに一目惚れだったんだぞ!」

「あら、私だって貴方の諦めの悪さに惚れ込んだのよ」

「惚気を聞かされる娘の気持ちになってよ」


 わたしはまだまだ子供で、長の昔話が好きだった。

 特に長が会ったと言う恩人の話しは特に気に入っていた。


「我々デスサイズマンティスは特殊な力を鎌に宿しておる、様々な種族が各地で生活を始めた時我等は窮地に立たされた」

「窮地?」

「すべての種族が我々を排除するために結託して攻めて来たのだ……我々は危害など加える気は無かったが仕方なく戦う道を選んだ」


 長は思い出す様に話を続ける。


「しかし、そんな時に一人の人族が降り立ってきた。トンボと大蜘蛛を連れたその人間は我々を率いてこの地へと導いてくれたのだ」

「凄い!」

「我等は今でも恩人との約束を守っている。この地を守り、いつか必要な時に力を貸せるようにな」


 そんな英雄が居ることが信じられなかった、でもわたしはそんな英雄に想いを馳せていた。

 そんな平凡で幸せな日々は続いていた。

 しかし、突然その幸せは奪い去られた。


「お父さん、お母さん……」

「大丈夫よ、私達は強いもの……」

「ああ、必ず迎えに来る……お利口に待って居るんだぞ!」

「うん」


 でも、二人は帰って来なかった……

 何れだけ時間が経っただろう? 隠し洞窟の中では時間の感覚が分からない。

 こんな時に思い出したのは英雄の話しだった。


「英雄なんて居ない……」

「昔長に聞いた場所はここの筈……」


 微かに誰かの声が聞こえた……誰? そう思った瞬間隠し洞窟の入り口が開いた。

 そこから顔を出したのは大きな蜘蛛だった。

 大きな蜘蛛さんはホッとした表情をすると、糸を使って優しくわたしを洞窟から出してくれた。

 結構な日数が経っていたらしい……


「ごめんなさい……遅れてしまって……貴女家族を助けてあげられなくて」

「……」


 隠し洞窟から連れ出されて目についたのは変わり果てた仲間とお父さんとお母さんの姿……

 そこからの記憶は曖昧だったけれど暫く、大きな蜘蛛さん……マザーの元で暫く暮らしていた。

 そこで御姉様達と会った、わたしを家族として扱ってくれた……嬉しかった。

 住みかに有った一つの絵本を見つけた。


「これは……?」


 その絵本には一人の女の子が英雄に頼ることなく、様々な困難に立ち向かい、最後には悪の王を倒すと言うありふれたストーリーだった。

 でも、わたしはその物語に夢中になった、気付けば主人公の女の子と同じ口調で話してしまう程には読み続けていた。




 あれからそれなりの年月が経った。

 長命なわたくし達にはあっと言う間の時間でしたけれど、人間に取っては永い年月が経ちましたわ。

 住みかにはわたくしとマザーの二人きりで過ごして今したけれど、わたくしは一つの決断をしてマザーと対面していますわ。


「御母様、わたくしは旅に出たいと思います……」

「家族達の形見を探す旅に出るのですね?」


 マザーの言葉にわたくしは真剣な表情で頷く。


「あれから永い年月が経ちました、あの時の襲撃者達は既に生きては居ないでしょう……」

「探し出すのは困難を極めると思いますわ……でも、わたくしは諦めるつもりは有りませんわ!」


 マザーはわたくしの言葉にフッと微笑むとソッとわたくしの鎌を撫でます。


「貴女の意思は分かりました。行きなさい貴女の願いを叶える為に……でも忘れないで? 貴女には頼れる姉達も私も居ると言うことを……そして旅の途中で頼れる存在が更に出来るかもしれません……その時はしっかりと頼りなさい」

「……はい!」

「ふふ、元気でね……何時でも帰って来なさいわたしは何時でも貴女達の帰りを待ってますから……」


 マザーは優しくわたくしの頭を撫でて見送ってくれました……最後の言葉はわたくしだけへの言葉では無いでしょう……御姉様達は元気にしているかしら?




 あれから更に永い年月が経ちましたわ。

 形見の手掛かりは無く、意気消沈のわたくしは御姉様成分が早急に必要ですわ!

 そう思い、御姉様の住みかと聞いていた場所に行けば御姉様は居らず……思わず故郷の出来事を思い浮かべました。

 それから必死に探して漸く気配を見つけたと思ったら。


「見つけた」


 その男は何者なんですの!? わたくしの御姉様を誑かしたのは貴方ですわね! 抹殺して差し上げますわぁぁぁぁぁ


 ギィィィィン


 しかし、男に鎌が届く前に何者かに阻まれましたわ……チッ……

 わたくしの鎌を阻んだ女性を見てみますわ……美しい黒髪、何故か侍女の様な格好をしていますが問題は気配ですわ。

 わたくしの鎌を受け止める技量、気配、匂い間違いなくこの女性が御姉様ですわ!?


『この気配! 匂い! 強さ! ああ、御姉様何故その様なお姿に!?』

「やっぱりぃ、カマキリちゃんだったのねぇ……もう、おいたはメッよぉ?」

『うぅ、御姉様ぁぁぁぁ!! 突然居なくなって心配しましたのよぉぉぉぉ!』


 その後御姉様から話を聞きました、御姉様達が無事でホッとするのと同時に少し複雑な心境でしたわ。

 御姉様が誘ってくれた時、正直嬉しかった……でも巻き込むのが嫌で思わず目の前の男を理由にしようとしてしまいましたわ。

 そんなこときっと御姉様はお見通しなのに……近くに有った池の水面を見ながら物思いに耽ってみますわ。


『一緒に……でも、あの人間は信用出来ますの?』

「それは君が決める事だね」

『ぴぁい!?』


 本当にこの男は読めない人ですわ。

 勝手に人の心に寄り添って、黙ってわたくし話を聞いて、力を知って尚わたくしに手を差しのべたこの男……

 ふと思い出したこはマザーとの会話……『頼れる存在にはしっかり頼りなさい』……ああ、そうでしたわね……御母様。


「これからは頼りにさせて貰いますわ……あ、名前聞き忘れましたわ……そうですわねぇ?」

「さっきまで結構焦ってたのにね」

「急に呼ばれた時は何事かと思ったけどぉ……ふふ、改めてよろしねぇ? ヨミちゃん」


 御姉様達の言葉を聞きながら、わたくしはいたずらな笑みで膝で眠る少年に声をかけますわ。


「早く目を覚まして下さいませ……“御兄様”?」

「あ、名前はマヒトくんだよ?」

「良いんですのよ……わたくしが呼びたくて呼ぶのでライ御姉様」

「ふふ、ヨミちゃんもマヒトくんが気に入ったのぉ?」

「ほ、他の人間よりマシな程度ですわ! ユキ御姉様、勘違いしないで下さいませ!」


 そんな何気無い会話が嬉しく感じる、もう一人では無い。

 頼れる人達と、今度こそは形見を見付けれる様な気がする。

 でも、本当に探して求めていたものは……この暖かさだったのかもしれない。

次回! カマキリさんにも服を!

「これが本当のトンボ返りってやつか……」

「次しょうもない事を言ったら舌を抜きますわよ」

「ブフォ……と、トンボに乗ってトンボ返り……フフ……」

「笑いのツボが浅ぇですわ!?」

「平和ねぇ……」

「そうですわね! 御姉様!」

「「態度が違う!?」」

※この会話は本編とは関係ありません

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