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ムシテイマー~役目も無いので虫達と自由に暮らす事にしました~  作者: SUZUKING
第一章 想いは遥か遠くより君に……

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17 王都のギルドは個性的

青衣を1凸位させたい!!

 ライ達の採寸を終えて、インスピレーションが溢れた織姫は直ぐ様工房に籠ってしまった。


『大体3~4日掛かるから王都でも見て回ってみたら? どうせさっさと別の街に行って見てないでしょ?』


 そう言われてしまったのでしばらく王都に滞在することにしたのだった。

 更に言えば御者のおじさんがゴブリンの事を報告すると言っていたので当事者としては話を聞きたい気持ちもあった。


「と言うわけでこれからギルドへ行きます。取り敢えず宿は既に取ったのでこのままギルドへと行こうと思う」

「はい! お腹が空いたので食べ歩きしながらいこう!」

「採用!」


 そんなふざけたやり取りをしながら、通りの屋台で食べたい物を買って食べながらギルドを目指す。

 ユキは焼き鳥見たいな物を上品に食べている、対してライは豪快に食い付いている……同じ人を師にもつのに何故こんなに違うのだろう?


「は! ふふへほほへほほ!」

「ライちゃん、食べながら喋らないのぉ……ほらぁ、お口が汚れてるわぁ」

「んむむ……ありがとう、ユキ」

「まるで姉妹だな……此処が王都のギルドか……デカイな」


 王都のギルドはかなり立派な建物だ、クルーデンのギルドは小さく無かったが此処はクルーデンの2倍は有る。

 早速入って見ると流石は王都のギルドだ……クルーデンの2倍有るのにかなりの賑わいだ。

 何とか空いてるカウンターに辿り着くと受付嬢がにこやかに対応してくれる。


「いらっしゃいませ! ワームルス城下町ギルドにようこそ! ご用件をどうぞ!」

「あの、フェルト村がコブリンの群に襲われた件について聞きたいのですが……」

「おお!? もしかしてして! マヒトさんですか!?」

「え、ええ? そうですけど……」


 突然豹変した受付嬢、さっきまで事務的だったのに……

 不思議そうに見ていると、受付嬢は慌てて居ずまいを正す。


「し、失礼しました……ワームルス城下町ギルドの受付嬢、ミリア・サービスです! よろしくおねがいします!」

「えっと、マヒト・モリハラです。こっちは仲間の……」

「ライだよ!」

「ユキですぅ」


 自己紹介を終わらせると、ミリアさんは先程の話しを続ける。


「今朝にフェルト村の御者のギルさんがゴブリンの群の報告をして行きまして! その時に助けてくれた冒険者がマヒトさんって聞いて調べてみたら……何とビックリ! 最近登録された初級冒険者の新人さんではありませんか!」

「何か問題でも?」

「いえいえいえ! ただ、ゴブリンの群の討伐は中級なりたての依頼なんですよねぇ……つまり! ギルドとしては有望な人材には目を付けておきたい訳なのです!」

「な、なるほど」


 かなりテンションの高い受付嬢の様だ。

 すると、何処からかすかした感じの声が聞こえて来た。


「まさか、こんなむさ苦しい場所で君達の様な可憐な女性に出会えるなんて……きっとこれは運命……」

「「……」」


 ライ達に視線を向けると金髪のイケメンがライ達を口説いていた……当人達は絶対零度の視線だけど……冷た!

 見かねた俺はそのイケメンとライ達の間に入る。


「ん? なんだね君は? 僕は今そちらのお嬢さん達と話していたのだが?」

「すいません、二人とも俺の連れなので……ナンパは他をあたって下さい」

「ほう……僕に口答えするのかね?」


 何やら機嫌を損ねた様だ、辞めて欲しい……ライとユキの温度が下がり続けている。


「……へぇ、マヒトくんに敵意をむけるのかぁ……シニタイラシイネ……」

「無礼に無礼を重ねるあの態度……ツミブカイワァ……」

「あーあー、えっと、聞きたい事も聞いたし! 俺達はこれで!」


 俺はライ達を強引に引っ張ってギルドを後にする。

 にしても、ギルドは個性的で無いとだめなのか?


「ルーデンスさん! 新人に迷惑掛けないで下さいよ!」

「いや、すまないね……美しい物を見るとついね……気に食わないねぇ」

「……? 何か言いましたか?」

「ふふ、何、先輩冒険者として指導をと思ってね」


 ルーデンスと呼ばれた男はそのままギルドを後にする。

 その背中を見送りながらミリアさんはため息を付いた。


「あんなでも上級冒険者なんですよねぇ……何もなければ良いけど……」


 しかし、彼女の呟きは虚しくも当たってしまうのであった。




 ────────────────────




 ギルドを後にして、街中を探索中……ユキがアクセサリー屋を見ては目を輝かせている。

 ライは興味が無いらしく、途中で買ったクレープに良く似た食べ物を食べている。


「興味深いわぁ……鉱石でこんな細かい細工が創れるなんてぇ」

「見るだけでいいのか?」

「ふふ、気持ちは嬉しいけど……今はいいわぁ」


 アクセサリー屋から離れると今度はライが何かを見つけた様だ。


「へぇ、魔道具が珍しいね……」

「い、いいらっしゃい……な、な何かお求めで?」


 どうやら魔道具屋らしく、店頭に並んでいるのは何れもガラクタにしか見えない。

 しかし、ライは違ったらしく何個かを拾い上げて此方に見せてくる。


「マヒトくん、確かにほとんどただのガラクタだけど幾つか買って行こうか」

「むむ? 中々に目敏い嬢さんだな」

「あれ? 喋り方……」


 さっきまでみすぼらしかった店主が、眼帯をした渋い男性に変わってる。

 ライとユキは驚いた様子はない。


「しかしなぁ、まさか見破られるとは……嬢さん達はただ者じゃないな?」

「変身の魔道具は魔力の綻びが分かりやすいからね……安くしてくるかな?」


 ライの言葉に店主は「まいった」と両手を上に挙げている。

 その間もライが欲しい物を幾つか選んでいく。


「で? この魔道具? はどんな力が有るんだ?」

「まずはこれだね、これは地図何だけど使用者の魔力を登録することで……地図に自分がいる場所がマークされるのさ」

「凄い便利だな……」

「でしょ? これは敵意の有る存在が居ると知らせてくれる魔道具、こっちは魔物避けの魔道具だね……買うのはこの三つだ! 値段は?」


 ライが店主に聞くと、店主は方を竦めながら答える。


「全部で金貨一枚で良いぞ」

「ほんと? 太っ腹だねぇ……買った!」


 ライがそう言うので俺は財布代わりの袋から金貨を一枚店主に渡す。

 店主は金貨を受け取るとすぐに店じまいを始めた。


「毎度あり、出来ればご贔屓願うよ……じゃあな!」

「行っちゃったけど……」

「さあ! 私たちもそろそろ帰るよ!」

「そうですねぇ、今日の夕飯はわたしが作りますよぉ!」


 二人が気にした様子も無いので、俺も二人の後を追う。

 周りはだいぶ暗くなって来ている、宿に門限は無かったが風呂の時間が遅くなったりすると迷惑が掛かるから早く帰らないと!

 そう思いながら歩いて居ると、不意にライとユキが足を止めた。


「……? どうかしたのか? ライ、ユキ?」

「出て来なよ、気配は隠せても殺気が漏れてるよ?」

「しかもぉ、ゾロゾロ腰巾着を引き連れて……不愉快ねぇ……」


 剣呑な雰囲気を纏う二人、同時に鳴る魔道具の警報……止めとこ。

 すると、キザったらしいすかした声が暗闇から聞こえて来る……複数の足音と共に。


「いやいや、まさか目麗しいだけでなく感覚まで鋭いとは……ますます欲しくなった」


 その言葉にイラッと来た、俺の仲間を欲しくなったなんて物見たいに言いやがった!

 嫌悪感を隠さないのはライ達も同じで、物凄く嫌そうな顔をしている。

 そんな事を考えてる間にも、周りは見るからにガラの悪そうな男達に囲まれる。


「ふふふ、コイツらは実力で言えば中級冒険者並みの男達だ下級冒険者の君達では勝ち目は無いよ?」


 キザ男の言葉に男達が下品な笑い声を上げる。

 しかし、ライもユキも何一つ焦ってはいない……むしろ退屈そうにキザ男の話を聞き流している。


「さあ、分かったらお嬢さん達を此方へ渡したまえ!」

「断る……ライ、ユキ……蹂躙しろ、殺すなよ……」

「「……!?」」

「んな!?」


 え? 今の俺の声? ビックリする程冷たいよ!? ライとユキも驚いている。

 しかし、二人は互いに顔を見合わせると、楽しそう且つ嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 俺達のその姿に男達は少し後ずさる。


「ふふ、はい我が主の仰せのままに……」

「ええ、必ずやご期待に沿えて見せますわぁ」

「何だコイツら雰囲気が……」

「な、何をしているのかね! 早くやってしまいなさい!」


 キザ男の焦った声が聞こえる。

 しかし、俺は驚く程冷静に現状を見ていた……ライ達が負けるなんて微塵も思わない。

 そして、ライ達もまた内心歓喜に打ち震えていた。

 自身の王たる者から命令、それこそは信頼の証、故に我らに敗北はあり得ない!


「瞬きの間の一瞬だ……君達には認識すら出来ないよ」


 ライのその言葉と共に、周りの男達が崩れ落ちた……無論死んではいない。

 突然の出来事に戸惑うキザ男。


「な、何だお前達は!? 下級冒険者じゃないのか!?」


 そう言いながらもキザ男は俺に向かって剣を振り下ろす。

 俺は動かない、いや“動く必要”が無い。


「ふふ、わたし達の王に刃を向ける……本当にぃ、罪深いわぁ」

「な! い、いつの間に!?」


 ユキが間に入り剣を受け止める。

 そして……


 ジャキン……カラン


「……は?」


 キザ男の剣は物の見事に鋏で切られてしまう、呆然とするキザ男……


「ぼ、僕は貴族スレイル家の長男ルーデンス・スレイルだぞ!」


 挙げ句、偉そうにそう喚くキザ男を見下ろして、俺は笑い掛ける。

 後ろではライとユキがほんの少し本当の姿を晒す。


「な、なん、何なんだお前達は……」

「この事は秘密だ……もしも、不審だと思ったら……」


 見下ろす俺をキザ男は惚けた顔で見てくる。

 気にする事無く、俺は言葉を続ける。


「……その血を絶つ……それだけだ……」

「……」


 動かない男を置き去りにして、いつの間にか元の姿に戻り服も着ている二人を連れて宿へと戻るのだった。




 とある男はある出来事の後、うわ言のように呟いていた。


「あの方こそが、新たな王に違いない……あの時に感じた威圧、異様は正に……」


 うっとりとした表情で呟く男……ルーデンスは気付けばその姿を見ることが無くなった。

 まるで何かの時を待つかの様に……

王の片鱗を垣間見る……

次回は閑話、勇者達を覗き見します。

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