14 森の断罪者……?
ゼンゼロをやりたくてスマホを買い換えたおろかものです!
目を開けると薄暗い森の中……どうやら結構寝ていたらしい。
そして、目線を動かすと覗き込む少女が1人……黒いストレートの髪、端正な整った顔、そして所々に感じる虫らしさ。
ああ、恐らくこの娘がユキだと理解する。
「あらぁ、お目覚めですかぁ? マヒトちゃん」
「悪い、すぐに退くよ」
俺がそう言って立ち上がろうとすると、ユキに「ダーメ」と少し強引に膝へと戻される。
「強い頭痛と倦怠感は魔力切れの症状なのぁ、だからまだ安静にしてないとダーメ」
「ライとクマ吉は?」
「近くの村に果物取って来て貰ってるのぉ……森の安全と引き換えに専用に育てて貰ってるの」
「もしかして、ユキを連れ出したらヤバいのか?」
「それは大丈夫ぅ」
話しを聞けば、村とは共存関係で森の治安は手下が居るから問題なしだと言う。
そんな話しをしていればライ達が色んな果物を抱えて戻ってきた。
「おっ待たせ~! 沢山貰って来たよ!」
「シュー!」
「ありがとぉ、ちゃんと村に説明してくれたぁ?」
「バッチリだよ!」
ユキの言葉にライが笑顔で答えると、ユキは少し寂しげに微笑むと果物を受け取る。
そして、心を切り替える様に手を叩くと暖かい笑顔で話し始める。
「さてぇ、魔力切れから回復するなら安静にする事が重要なのぉ……でもぉ、もっと重要なのはね? 沢山食べることよぉ!」
「ユキ! お肉ならオークがあるよ!」
ライが道中手土産として倒したオークを取り出す。
因みにオークは二足歩行の豚型の魔物だ、カイン達もコイツらに襲われていた。
「調味料はぁ?」
「たしか……あった! はい、これ」
手際良く材料を渡してくるライに、ユキは若干ジト目で見ている。
「ライはぁ、お料理や掃除の授業はサボっていたものねぇ」
「う、そ、そんな昔の事は覚えてないよ……」
「まあいいわぁ、取り敢えずはぁ……美味し物を作りましょうか!」
ユキはそう言うと慣れた手付きで次々に調理を進めていく。
その結果、俺達の目の前には美味しそうな料理が並んでいる。
オークで作ったしょうが焼きの様な物、サラダ、貰ってきた果物はいつの間にかジュースになっていた。
「ま、まさか、魔法で台所を作るなんて……」
「片付けが楽で良いのよぉ」
「ねえねえ、早く食べようよ!」
ライの催促に俺達はやれやれと首を振ると3人で手を合わせる。
「それじゃあ、食材達に感謝して!」
「「「いただきます!」」」
「シュイ!」
取り敢えずしょうが焼きらしき物にかぶり付いてみる。
「う、旨い! しかも、柔らかい!」
「んー、やっぱりユキの作る物は美味しいねぇ!」
「ふふ、淑女の嗜みですからぁ」
肉は柔らかく、味はまんましょうが焼きで凄く旨い!
ユキの料理を食べながら、少し気になった事を聞いてみる。
「度々二人が言う“淑女の嗜み”って何なんだ?」
「あー、マザーって私の先生が居るの私より相当ヤバいのがね」
「ライさんは反抗してばかり居るから怒られるんですよぉ……えっとぉ、マザーは私のお母様何ですぅ」
へぇ、つまりライでも頭の上がらない巨大な蜘蛛……何それコワイ!
「そして、マザーは私達にいつか必要だからと魔法、一般教養そして家事全般を教えて下さったのですぅ」
「それが“淑女の嗜み”って事か……」
「そう言う事」
そしてもう一つ聞きたい事があった。
「なあ、ムシテイマーと契約出来る条件は何なんだ?」
「んー? そうだね幾つか有ると思うけど……一つは監視員の資格だろうね」
「どういう事だ?」
「要はマヒトちゃんとお話出来るか出来ないかって事ねぇ」
「なるほど……」
かなり理解しやすいようにユキが言ってくれた。
つまりこの先でも話が出来る奴なら契約が可能って事か……
聞きたい話しを聞き終えて、食事を終えた俺達は街に戻ることなった。
確認の為にユキに視線を向けると……
「なあ、本当に森の事はだいじょ……ブフゥ!」
「あらら?」
「シュ!」キラン
虫らしい部分か剥がれて産まれた姿のユキ、突然の出来事に吹き出す俺、いち速く気付きユキの裸体を隠すクマ吉……ライより大きくないけど全体的に綺麗でした!! 俺! 気持ち悪い!
そんな事が有りつつも俺達はクルーデンへと帰るのだった。
────────────────────
街に帰ってきた俺達は一つの問題にぶつかった。
その問題と言うのは……
「ユキの身分証明が出来ない……」
「だから俺の所に来たのか……もしかして、この可憐なお嬢さんも……」
「そう! 私の昔馴染み何だ!」
ライの言葉に苦労人門番ハワードさんは、頭に手を当てて居る……何かすいません。
しかし、ハワードさんは俺のギルドカードだけを受け取ると、そのまま通してくれる。
「ギルドマスターと領主様がマヒトに関しては報告さえ怠らなければ好きにさせろと聞いてる……ちゃんとギルドに顔を見せる様に……」
「おおー、しっかりと私の作戦が聞いてるみたいだね!」
「ライちゃん、貴女此処で何をやったのぉ?」
二人の会話を聞き流しつつ、俺は頷きながらギルドカードを受け取る。
そして、珍しそうに周りを見渡すユキを連れて先ずはギルドへと向かうことにするのだった。
ギルドへと入ると目敏くユキを発見したのは美少女大好きなハーデリアさんだった。
ハーデリアさんは目を輝かせながら此方に声を掛けてくる。
「ま、マヒトさん! そちらの素敵な方は!?」
「はいはい、落ち着いて下さいハーディ先輩……んん、こんばんはマヒトくん、朝から出掛けて居たようですが……そちらの方と関係が?」
「ああ、出来ればギルドマスターを呼んで貰えると助かる……」
俺が小声でそう言うと、察しが付いたであろうアイナさんが俺達を案内してくれる。
そして、何度かお世話になった部屋へと入ると、こっちをみて少し渋い顔をしたドリトンさんが座って居る。
「……今度は何だ? まだ、そんなに経ってないのに...…」
「えっと、新しく契約をしましてぇ……」
「……そうか……」
コワイよドリトンさん! しばらくすると吹っ切れたのか来客用のソファに勢い良く座ると話を聞く体勢になる。
こんな雰囲気でもユキは穏やかに微笑んでいるのは中々胆が座ってる。
「それで、今度は一体何の虫なんだ?」
「ではぁ、自己紹介しますわぁ……初めまして、デスフォレトススパイダー改めてユキですぅ、本日よりマヒトちゃんにお仕えさせて頂いておりますわぁ……以後お見知りおきを」
ユキの丁寧な自己紹介を聞いて何故か固まるドリトンさん。
そして、しばらく経ってようやく言葉を発した。
「デスフォレトススパイダー……だと? “森の断罪者”の?」
「森の……」
「……断罪者?」
ドリトンさんの言葉に俺とライが咄嗟にユキを見る。
当の本人は顔が真っ赤……分かるよ、思春期の黒歴史的な物だよねー
「二人ともぉ、生暖かい視線を辞めてくれるかしらぁ……それに、勝手に呼ばれただけですし……」
「シュイシュイ」ポンポン
「クマ吉ちゃん……」
涙目でクマ吉に慰められてるユキ……マイナスイオン出てそう。
その空気を霧散させたのはドリトンさんだった。
「オホン! 話しは分かった……ユキのギルドカードと従魔契約も了承しよう……後でハーデリアから受け取ってくれ」
「分かりました! しかし、何で森の断罪者何て物騒な名前を?」
俺の疑問にドリトンさんが聞いた話を聞かせてくれた。
「森でのマナーが良い奴は守護せれて、森で悪さをすると断たれるって話しに聞いたが?」
「私達には隠し鋏を前足二本に備えていますぅ、ちょっと聞き分けのない子の武器をエイヤ! って」
ユキはそう言いながら、何処からともなく取り出した大振りの鋏をチョキチョキしている。
いやいや、「蜘蛛時はこんな感じでぇ」って鋏を二つに別けないで仕舞いなさい物騒でしょ!
「ふぅ、お前さんと会うと退屈しねぇな……」
「何かすいません」
「いや、大丈夫だ……その分仕事で還元してくれ! コカトリスや稀少な薬草でギルドの財政は暖かいからな!」
「だったら、また何か落として行こうか?」
ライの言葉にドリトンさんは首を横に振る。
何か事情が有るのか、少し困った様に頬を掻いている。
「今は辞めてくれ、コカトリスの件で詮索されてるんだ……一応誤魔化して居るがな」
「本当に迷惑掛けて申し訳ないっす」
俺は再びドリトンさんに謝ると、ライ達を連れてカウンターへと戻るのだった。
カウンターへと戻り、ユキのギルドカードを受け取って居るのだが……
「艶やかで綺麗な黒髪、おしとやかな雰囲気、極東の姫君と言われても違和感無いですよ!」
「ふふ、貴女もとってもぉ、可愛らしいわぁ」
「う、ズルいです! お姉ちゃん属性も有るなんて!」
「早くカード貰えませんか……」
結局、帰る為に私服だったアイナさんが来てくれてようやくギルドカードを貰えた。
宿への帰り道で明日どうするかを三人で相談する。
すると、ユキが「はぁい!」と手を上げる。
「わたしはぁ、可愛らしいお洋服が見たいわぁ」
「良いんじゃないかな? 明日は休みで商業区に行こうよ!」
「うーん、分かったそうしよう……丁度服の事で話しも有ったし」
「「……?」」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
そんな二人を気にせず、暗くなったクルーデンの街を歩くのだった。
次回! 久々の登場! 可愛い服を求めて
閑話予定! 勇者達を覗き見




