9 多種族の街〈クルーデン〉
エレン取ったどー
俺達はクルーデンの街へと向かっている間、馬車の中で話し合いをしていた。
因みに何故か気を利かせてくれたカインは御者のおじさんと座ってる。
「ライが使ってた短剣は何だったんだ?」
「どうやら、従者になった時に私の……エンシェントドラゴンフライの顎が短剣になった物らしいね」
「つまり従者になると自身の武器としてた身体の一部が武器として発現する?」
「そう考えて良いだろうけど……もしくはだけど、ムシ自身の特徴を模した武器の可能性もあるね……私の場合は高速戦闘に適したのが短剣だった……とかね?」
俺はライの言葉に頷く、これ等の事は契約虫が増えれば自然と分かる事なので後回しで良いだろう。
そうやって話し合ってしばらくすると、御者の席からカインの声が聞こえる。
「おーい! クルーデンが見えて来たぞぉ!」
「へー、どれどれ……おお! すげぇ……」
カインの声に馬車から身を乗り出して前を見てみると、まだ距離が有るにも関わらず大きな街並みが見えてきた。
俺の感嘆の声にカインは「そうだろ?」と視線で自慢気にしている。
「クルーデンは魔族も、エルフやドワーフ、獣人の多種多様な人種が集まる街だ人呼んで〈多種族の街〉だ」
「何か賑やかそうな街だな」
「もうすぐ門に着くから、身分証明出きるものを要してくれ」
「あ゛」
カインの言葉で思い出した……ライの身分を証明出来るものがない。
俺の慌てた様子にカインは察しが付いたのか、自身の胸を叩いて見せる。
「どうしたかは分かった、任せとけ何とかしてやるから」
「な、何とかって……」
自信満々のカインを信じて俺達はクルーデンの街門へと向かった。
門へと着くと若い門番が此方に近付いてくる。
「申し訳ないが交通には身分の証明出来る物が必要だ……見せてくれ」
「どうぞ」
「……よし、次」
「ほら、所でよハワード」
「……何だ? カイン」
どうやら、カインと若い門番は知り合いらしい、カインの声にカードを確認しながら反応を返してる。
「実は連れの一人が訳有りでな……証明書もギルドカードも持ち合わせて無いんだ……」
「訳有り? まさか犯罪者じゃ無いだろうな……」
「それは無い……誓って無い、悪いんだがこのまま通らせてくれないか?」
カインの言葉にハワードと呼ばれた若い門番は溜め息をつく。
すると、困ったような笑顔を浮かべると
「……貸しだぞ? ……よし、通れ!」
「ああ、今度奢るよ……」
これで何とか無事にクルーデンの街へと入る事が出来た。
クルーデンの街を見回してみると、ケモ耳の獣人やゴーザさんと同じドワーフ、美しく輝く角を持っているのが恐らく魔族だろう……勿論人族も居る。
隣では俺と同じ様にライも興味深そうにキョロキョロしている。
「さあ、着いたぞ馬車乗り場だ……おっちゃん! 世話になった!」
「いやいや、此方こそあんたらのお陰で命拾いしたよ……それじゃあな」
カインが御者のおじさんに別れを告げると、初めての街で呆気に取られて居る俺達に声を掛ける。
「おーい、マヒト! お前はこれからどうするんだ?」
「え? ああ、先ずはライの服を見ようと思ってるんだ」
「そうか、じゃあ此処でお別れだ……冒険者ギルドに来ることが有ったらまた会おうぜ!」
「ああ! その時はよろしく!」
俺達はカインと握手を交わして別れる。
そして取り敢えず、ライの服を手に入れるのが先決だ!
「やだ~♡ こんな可愛い子の服を選べるなんて幸せ~♡」
「はは、お、お手柔らかに……」
カインと別れてから、取り敢えず目に付いた女性服を売ってる店に入って見れば……中々インパクト強い男店主が現れた。
「なにぃ? 恋人に服をプレゼント? 待っててねぇ~跳びっきり可愛くしてあ・げ・る♡」
「で、出来れば動きやすい格好で……」
「それなら問題ないわよ、一応家はね冒険者御用達なのよ……! 終わったみたいね」
「お、おまたせ……」
ライが少し恥ずかしそうに更衣室から出てくる。
黄色主体の軽装に、ハーフパンツの動きやすい格好で胸元はそこそこ開いているのに目が行く……そして、黒いリボンで髪をポニーテールに結んでいる。
「ど、どうかな?」
「おお、に、似合ってるよ」
「ふふ、ありがと!」
「しゅ!」
「……クマ吉もありがと」
その後、空間魔法を誤魔化す鞄と裸足のライに靴を買い。
俺達は手頃な店で昼飯を食べながらこの後の事を話し合った。
「んー、おいし~」
「しゅ~」
「それは良かった……俺としてはこの後は冒険者ギルドに行くべきだと思う……」
「はむはむ、はんで?」
「身分証明の問題だよ、俺も勿論一番の理由はライの事だよ」
そうだ、それから色々な街へと行くなら身分証明の出来る冒険者ギルドのカードは出来るなら有った方が良い。
しかし、それだけが理由ではなかった。
「魔物の素材何かの買い取りもギルドが主体でやってるらしいからね……」
「あー、確かにオークの群れの処理が有ったね」
「じゃあ決まりだね」
俺達はこのまま冒険者ギルドへと行くことに決めたのだった。
やれやれ、カインとは早すぎる再開になりそうだ。
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場所は変わって、世界の何処かの円卓で座っている者達が居た。
「それはさぁ……気のせい何じゃないのぉ? そもそもさぁその事象自体がいつぶりだっけ?」
「千年は前だそこからはその子孫が引き継いで行くからな……」
「そんな馬鹿な何故今頃出現するのだ! 我等龍人族がおれば事足りように!」
痩身の耳が尖った男、宝石の様な角を持つ女性、竜の鱗を持つ大男が順番に声を発する。
そんな声を鬱陶しそうにするのは背の小さい筋骨隆々の男と悪魔の様な翼が生えた男達だ。
「だあ! うるせぇぞ! 此方とら二日酔いで気持ち悪いってのに!」
「ふん、所詮はカス共だ……何人増えようが変わらん」
しかし、彼等は本当に円卓に居るわけではなく、各々の居城から魔力を使って通信しているに過ぎない。
それはかつて顔を合わせた結果、凄絶な殺し合いが勃発したからに他なかった。
そんな円卓の席の一つが埋まった。
「相変わらず、騒々しいですな……」
「エリオット……来たか」
「おお! 魔王殿は変わらずお美しいですな……」
「世辞はいらない……セシリアが怒るぞ」
そこに現れたのはエリオット王だった。
この円卓会議は種族の王が集まる会議である〈王卓会議〉であった。
滅多に召集が掛かることは無い……ましてや、現在は龍人族と魔族、人族の間では戦争中である。
「エリオット! 貴様ぁ! 魔王と手を組むとは小賢しい奴め! 喰い殺してくれるわぁ!」
「止めなよ見苦しい……そもそもこの場で諍いの話しは御法度だよ……」
「まあ、ドラゴン族に喰らい殺されたいなら別だがのぉ!」
「ぬぅ……くそ!」
エルフの王とドワーフの王の言葉に龍人族の王は悔しそうに席に座り込む。
その間、エリオットは周りを見ると疑問を口にする。
「しかし、そのドラゴン王殿……それに海王殿、獣王殿の姿も見えませぬが?」
「家の猫は来ないよ、仲間と狩りに出掛けたからね」
「全く、あやつの奔放な所はどうにかならんのかのぉ」
エリオット疑問に最初答えたのは同じ国を治めているエルフ王とドワーフ王だった。
次に魔王が眉間に皺を寄せて海王の所在を説明する。
「あのバカクジラは神殿から勝ってに離れて昼寝してる……」
「変わりませんな、海王殿は……ではドラゴン王は……」
『遅くなってすまぬな』
「「「「「「!?」」」」」」
声が響いたと思えば円卓の中央に神々しいドラゴンが一頭空から降りたって来た。
それと同時に眩い光が瞬き、ドラゴンの姿は白銀の長髪に長い髭を蓄えた老人が各王達全員を見渡せる席へと腰をおろした。
「……海王と獣王は居らぬのか……まあ良い」
「エンシェントドラゴン……あれが……」
「そうか、儂を知らぬ者も居るか……儂はドラゴンの王、エンシェントドラゴン……円卓会議の議長である」
「……」
エンシェントドラゴンの威容に誰もが声を出せずに居る……訳では無い。
実際、エルフ王は欠伸をしているし、魔王と龍人王は「ふん」と鼻を鳴らし、悪魔の翼を持つ魔人王は我関せずである。
かくいうエリオットも何も言わなかった……正確には言う必要が無かったのが正しいが……
「まあ、うぬらが何代目だろうと興味はない……有るのは一つ“新たな王”の存在である!」
エンシェントドラゴンは席から立ち上がると、声を高らかに宣言する。
「これより王卓会議を始める! 議題は“新たな王”の出現についてである!」
エンシェントドラゴンの宣言によって、世界にも多大な影響を及ぼすとされる王卓会議が始まるのだった。
早速バレてしまったのか?
次回! 王卓会議! 冒険者ギルド! 従魔契約騒動!




