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8 初めての契約虫

ゼンレスゾーンでエレンを手に入れて御機嫌です。

 ライとの契約が終わった後、真人は気を失って居た。

 そんな真人を介抱する女性が居る、真人を膝枕して愛おしそうに頭を撫でている。


「んぁ……?」

「あ! 良かった~心配したんだよ急に倒れるからさ……」

「え……? だ、誰?」


 俺が目を覚ますと知らない女の子が俺を撫でていた。

 安心した顔をする女の子は、年は俺より少し上に見える。

 しかし、何処か昆虫の雰囲気を感じる……まさか!?


「もしかして、ライ?」

「そうだよ! びっくりだよ、私が知ってるムシテイマーにこんな力は無かったからさ!」


 そうはしゃぐライの姿は、服を着てはいないものの虫の甲殻らしき物を纏っている。


「ぐぅ!」

「まだ痛むかい? なら寝てて良いよ私が見張ってるから、それにもう夜だしね」


 俺はそう言われて周りを見て見ると、確かに更に暗くなっている気がする。

 こう言う事ならお言葉に甘えようか……


「じゃあ、頼む」

「うん! 任せて!」


 嬉しそうに頷く、ライを確認して俺は眠りにつくのだった。




 翌朝、俺は顔に感じる違和感に目を覚ました。


「しゅしゅ~!」

「……おはようクマ吉……所でライは?」


 目を開けると、クマ吉のどアップだった。

 クマ吉に朝の挨拶をすると、周りを見渡してライを探す……何処に行ったんだろう?


「あ! マヒトくん、起きたんだね! おはよう!」

「ライ? おは……よ……う?」


 森の中から此方に駆け寄ってくる、黄色い髪に少し黒が混じったポニーテールを揺らして、活発な美少女で身長は俺より少し高い。

 だが、俺が言葉を失った理由は別だ!

 健康的な肢体、揺れるたわわ、昨日まで有った甲殻が無くなり限り無く人に近い姿になっていた

 故に……


「ら、ライ! ふ、服を!?」

「ふく?」

「しゅ!」キラン

「わわ! どうしたんだい!? クマ吉くん!?」


 俺の言葉を聞いて首を傾げるライにクマ吉が飛び付き、ライの美しい身体を駆け回り始める


「んん、く、くすぐったいよ? クマ吉くん……」

「く、クマ吉!? な、なにを?」

「しゅしゅしゅしゅしゅー!」


 暫くすると、クマ吉はライの身体から降りて前足を激しく動かし始めた。

 息を切らしてるライにどぎまぎしつつ待っていると、クマ吉は何かを持ち上げた。


「え? 服? おお、クマ吉良くやったぞ!」

「えっと、これを着ればいいのかな?」

「しゅー!」


 クマ吉が頷くのを見て、ライは服を着始める。

 しかし、それでも下着無しを考えてしまうがクマ吉が考慮してくれたらしく生地は厚く作ってあるようだ……透けたら余計ヤバかった。

 クマ吉が作った服は真っ白な短パンとシャツな為、ライの為に服を買わないといけないなとおもった。

 しかし、それよりも考えるべきは契約の時に聞こえた言葉だ……街へ行く前にライと話し合って見よう。


「お待たせ、サイズも問題ないしクマ吉くんは多才なんだね!」

「確かにクマ吉は凄い……って、そんな事より何で夜より人間に近くなってるんだ?」

「分からないけど……突然、甲殻が外れ初めてね、キミにかかると思って森で落として来たんだ」


 だから森から出てきたのか……そんな事を思っているとライが質問してくる。


「そう言うマヒトくんは何か心当たりはないのかい?」

「……ライとの契約の最中に〈ムシの王〉って聞こえた、恐らくこれが原因でライは従者になったらしい」

「なるほどね、確かに人間の従者が虫の姿じゃ不便だしね」

「それはそうとさ、人の身体になって不自由なないか? 慣れない姿だろうし無理はしないでくれ」


 俺がそう言うと、ライは嬉しそうすると立ち上がってその場で走ったり、跳んだり、アクロバティックな動きをしたりする。


「心配してくれてありがとう! でも、見ての通り何ともないよ?」

「おー」パチパチ

「しぉー」


 見事な動きに思わず拍手、問題が無いと分かれば次はこの森から出るだけだ!

 そう思っていると、ライが突然思い出した様に話し掛けてくる。


「そう言えば、クマ吉くんは契約の条件を満たして無かったね?」

「そうだな、クマ吉は懐いてくれてるだけだよ」

「そっか……それじゃあ……」


 ライは悪戯な笑顔を浮かべると、俺の顔を覗き込むようにすると言った。


「キミの“初めて”(契約)は私のだね?」

「……!」


 正直かなりドキッとしました!




 ────────────────────────




 顔の火照りか取れた頃、俺はどうしようかと考えていた。

 問題は解決していない……「はい!」と元気良く手を上げるライ。


「はい、ライ君! 意見をどうぞ!」

「私が元の姿で送るよ!」

「んー……却下ぁ!」

「うぇい! 何でさー!」


 事前に聞いていたがどうやらライは蜻蛉の姿に戻れるらしい……しかし、バカデカイ蜻蛉が飛べば当然目立つ、故に却下。


「しゅしゅー!」

「ライ、通訳を……」

「んー、お腹空いたって」

「クマ吉、最後の干し肉だよ」

「しゅ!?」


 悠長にしてる暇はない、食料は二人と一匹で分けるには心許ない。

 すると、ライが再び「はい!」と手を上げる。


「はい、ライ君! 意見をどうぞ!」

「私が背負って木々を跳んでいく」

「きゃ……」

「却下は認められませーん……よいしょ!」

「ま、待ってくれ……これはおんぶじゃないお姫様抱っこだ!」

「舌噛むよ?」

「な、まっ! うお!」

「しゅっしゅー!」


 俺の制止も聞かずにライはそのまま身軽に木から木へと跳び移って行く。

 木の上を跳んでる為に見晴らしは良い、その為森の出口は直ぐに見つかった。

 しかし、それ以上に健全な男児にはこの状況は恥ずかしいのと同時に色々ヤバい……


「ら、ライ! そのまま真っ直ぐだ……森の出口が見えた!」

「了解! クマ吉も落ちないでよ!」


 こうして、俺の色々な者を削りながら俺達は森から出る事に成功するのだった。




 森を抜けて久々の日の光を浴びながら、俺はライの能力を整理する。

 ライはスピード特化で力は人間より強い、魔法は適性検査では説明の無かった雷の魔法が得意らしい。


「身体の筋肉に微弱の電流を流して身体強化を促す〈ブースト〉が私の得意魔法さ! 高速で飛び回るのは気持ちいいからね!」

「道理で男一人抱えてあれだけの動きが出来る訳だ……」


 納得した、それは置いておいて周りを見渡して見ると少し遠くに道らしき物が見える。


「あっちに道が見えるから、行こうか道が有るなら街に続いてる筈だからね」

「はーい! 今度こそ背負う?」

「流石に自分で歩くよ……」


 俺達は道へと着くとそのまま道に沿って歩き始めた、その間にライが俺に話し掛けてくる。


「所でムシテイマーなら契約した虫から強化が貰えると思うけど何か変わった様子はあるかな?」

「そんなのがあるのか?」

「うん、って言っても大雑把に足が速くなるとか、身体が丈夫くなるとかそんな感じだけどね」


 そう言われても実感が無い、この力の事は追々考えれば良いだろう。

 それよりも今は街へと向かうのが先決だ!


「……!」

「ライ? どうした?」

「もう少し先で誰かが戦ってるみたいだね」

「な!? 見えるのか!?」


 俺の言葉にライが頷く、俺から見たら確かに僅かに何か見える気がする。

 俺はライに声を掛ける。


「もっと詳細に分かるか?」

「オークの群れが馬車を襲ってるみたいだね……それを大きな剣を持った人が応戦してる」

「大きな剣……もしかして……カイン?」

「知り合い?」

「多分……」

「そっか……」


 俺はカインの事を思い浮かべる。

 良い奴ぽかったし、出来れば助けてやりたいが俺は強くない……どうしたら……


「……じゃあ助けよっか!」

「え? だ、だけど二人だけじゃ……」

「知ってる? マヒトくん……トンボはね強力な顎を持ってるのさ!」


 ライはそう言うと、俺を背負って掛け出したのだった……早!

 そして、その両腕には見覚えの無い二振りの短剣が握られていた。




 場所は変わって、森から出て少ししたところでカインはオークの群れから馬車を守っていた。

 昨日の朝から居なくなった真人が心配だったが馬車を遅らせる訳も行かず、こうして予定通り森を抜けたところでこのアクシデントだった。


「くそ! 数が多い上に囲まれるなんてな……うらぁ!!」

「ぐもぉ!」

「よし! まずは一匹!」

「ぐもぉぉぉ!!」

「なっ!? しまっ!」

「伏せて!」

「は?」


 突然の呼び掛けに、呆けながらも身を低くすると猛スピード何か通り抜けてオークの首を跳ねた。


「ぐも!?」

「ライ……早すぎ……だ……」

「ゴメンねマヒトくん、ちょっと危なかったからさ」

「しゅいしゅい!」

「なに!? マヒトだって!?」


 突然の乱入者の口から知り合いの名前が出て、カインは思わず口に出してしまった。

 それの声に真人は反応すると、ライの背中から降りてカインに声を掛ける。


「あ、ああ……ってそれは俺のセリフだ!! クマ吉を捕まえるとだけ書き置きして居なくなりやがって!」

「ごめん、説教は後にしてくれ……ライ!」


 俺はライに声を掛けると、ライは頷いてくれる。

 何か通じあってるみたいで良いな。


「オーケー! マヒトくん、良く見ててねこれが私の戦い方だよ!」

「しゅっ!」

「おっ? クマ吉もやる気だね、じゃあオークの動きを阻害して! 速攻で仕留めるよ!」

「しゅ!」


 ライとクマ吉は声を掛け合うと、オークの群れに向かっていく……何となく少し疎外感を感じるが戦えない俺が交ざっても邪魔になるだけだ。


「しゅ!しゅ!しゅ!」


 クマ吉の糸がオーク腕や足に絡まって、オーク達は動きにくそうに悶えている。

 そのオーク達を確実に仕留めて行くのはライだ。


「ぐもぉ!ぐもー!」

「遅いね?」

「ぐ!?」


 身体に電気を纏いながら高速でオークの頸を切り裂いて行く。

 そして、接敵からものの数秒で10匹近く居たオークを殲滅して見せたのだった。




 オークの死体の山を見て、俺はライに声を掛ける。


「ライ! お疲れ様、凄かったよ!」

「ふっふー、キミの為だったらこのぐらいお安い御用さ!」

「しゅ!しゅ?」

「はは! クマ吉も凄かったよ!」


 俺はライ達の活躍に興奮していた。

 そんな俺を冷静にさせたのは、引き気味のカインの声だった。


「あ、ああ、凄かったな……あれだけのオークを一瞬で仕留めるのは常軌を逸してるぞ」

「そ、そうなの?」

「当たり前だ……その女といったい何処で会ったんだ?」

「も、森の中で偶然……ばったりと……」


 俺の苦し紛れの言葉に、カインは疑いの目を向けるが直ぐに溜め息を着くと困ったように笑う。


「まあ、命の恩人何だ……言いたく無いなら聞かないさお前達も乗って行くだろ?」

「え? あ、ああ……大丈夫ですか?」


 俺が御者のおじさんに声を掛けると、御者のおじさんは惚けた様に言う。


「大丈夫も何もお前さんは乗車料を払ってるじゃないか速く乗りなりなさい」

「はい!」

「しかし、このオークの死体はどうしようかねぇ」


 ふとそんな声が聞こえて来た。

 確かにこのままだとまずいか……そう思っていると……


「私にまかせてよ! 実は昔、知り合いから便利な魔法を教わってね! 〈空間魔法〉の〈イベントリ〉って言う魔法さ!」


 ライはそう言いながらポイポイと空間にオーク投げ入れていく。

 その姿をカインと御者のおじさんは驚いた顔で見ている。


「えっとさ、その魔法は凄い魔法なのかな? ライ?」

「え? 教えてくれた人は『淑女の嗜みです』って言ってたよ!」

「な、なんだぁ? 最近の淑女は最上位魔法がつかえるのかぁ?」

「もしかして使えないのかい!? マザー、騙したなー!」


 最早情報量が多すぎる……マザーって誰よ?

 それはともかく俺はカインに確認してみる。


「空間魔法はもしかして、ヤバい?」

「いや、〈イベントリバッグ〉ってのがあるから鞄を使えば誤魔化しは効く……収容量も……何とかなると思う」

「そうか……わかった、ライ! ちょっと」

「なになに?」


 ポニテを弾ませながらライが此方にやって来る。

 ライには街に行っても問題を起こさない様に釘を刺す必要がある。


「ライ、まずライの魔法や能力は一般的では無いことがわかった」

「成る程、それで?」

「人間の街ではそれらの力は使わない様に……でもだ」

「でも?」

「もしもライ自身が危なくなったら遠慮は要らないよ? ……ライが無事なのが一番だからね?」


 俺がそう言うとライは顔が真っ赤になった気がした……風邪かな? 無理をしてないと良いけど……

 その後、ライは首を縦にぶんぶんと振ると「分かった」と返事をしてくれた。

 俺はカイン達に振り返ると手を振って声を掛ける。


「ごめん、それじゃあ街へ行こうか!」

「おう、見せつけやがってこのやろう……」

「いや、私も家内とあんな時期がありましたなぁ……」


 何故かカイン達は生暖かい眼差して見てくる。

 こうして俺達は無事にクルーデンの街へと向かうのだった。

次回 ようやくクルーデンの街へと到着! 冒険者ギルドだったり、買い物デートだったり? オークが街道に居たのは何故か?

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