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7 王様、お仕事の時間です

あ!? ペーパーマリオRPGが途中がけだ!!

 出発式の後日、ワームルス王国の国王であるエリオットは深い溜め息を着きながら玉座へと腰を下ろした。


「ふぅ」

「お疲れ様です、あなた……」

「セシリアか」

「陛下お疲れ様です」

「ライオットも居たのか……」


 出発式は大きな問題も無く終わり……真顔クマ吉ダンス事件は別として。

 エリオットはここ最近の事を考えていた。

 不穏な予言、別世界からの召喚、真人の事等王として考えなければならない事が余りにも多すぎる。

 昨日の出発式の後でも、部下に貴族連中の監視……特にオルコット伯爵家とメルゴール伯爵家には細心の注意を命じて居る。


「全く……先代時代を笠に着よって」

「陛下、件のご子息達が冒険者を集めていると報告が有りましたが?」

「ふぅ、それだけでは動けないが引き続き見張りを続けさせておけ」

「は!」


 ライオットの言葉にエリオットは顔をしかめる。

 やることは多い……しかし、朗報も有った。


「最後にマヒト殿についてですが……グリンデル商会が接触して何やら買い取ったみたいでして……恐らくベアスパイダー関連ですね」

「ほう! して、マヒト殿はそれなりに纏まった金銭を得たと?」

「はい、その後どうやら馬車で城下町を出たそうです」

「そうか、それは良かった……城下町から出たのも良い判断だ、いざこざに巻き込まれずに済む」


 続いたライオットの報告にエリオットはホッとした様子だった。

 エリオットは愚王では無いし、人でなしでもない。

 一人放り出すことになった真人を気に掛けていた。


「マヒト殿に何事なければいいがな」


 エリオット王の呟きは……フラグにしかならなかった。




 ────────────────────────




「何でこうなったんだー!」


 エリオット王の心配はむなしく真人は迷子になっていた。

 何故森で迷子になったか……事の発端を思い出す。




 遡る事数時間前だ、フェルト村で森を通る専用の馬車に乗ることに成功した俺は御者のおじさんに挨拶をする。


「お願いします!」

「おう! この森を通る事で注意が一つ有るから良く聞けよ」

「はい」

「まずは馬車から絶対に離れるな、この馬車は特殊な木で出来ていてな……淡く光るから森を迷わず進める。そして、もう一つは道を逸れるな……それこそ命取りになる」

「分かりました」


 俺は御者のおじさんから注意を聞くと早速馬車に乗り込む。

 膝の上にクマ吉を置いて暫くすると、馬車がゆっくりと動き始めた。

 どうやら乗客は俺ともう一人だけらしい。

 もう一人の乗客は、身の丈以上の大剣を横に立て掛けていて、青みかかった黒髪にキリッとした表情の男で年は俺と同じくらいだ。


「ん? そいつはベアスパイダーか?」

「ええ、俺の仲間何ですよ」

「なあ、敬語は辞めてくれないか? 年も近いと思うしさ」

「わかった……俺はマヒト・モリハラだ、今はただの旅人だ……で、仲間のクマ吉」

「しゅ~」

「俺はカイン・ベルシム! 冒険者だ。短い間だが宜しくな」

「ああ、宜しく」

「しゅっ!」


 もう一人の乗客は冒険者で名前はカインと言うらしい、カインも行き先は俺達と同じクルーデンだと言う。

 そんなカインはクマ吉をまじまじと見ながら顎を擦っている。


「にしても、ベアスパイダーが仲間か……虫って確かテイマーでも仲間に出来ないって話しだったんだけどさ」

「実はテイムしてる訳じゃ無いんだ」

「へ?」


 俺の言葉にカインは呆けた顔をする。

 しかし、直ぐに正気に戻ると俺に「どういう事だ?」と視線を向けてくる。


「クマ吉は俺に懐いて守ってくれてるんだ……な? クマ吉」

「しゅっしゅっ!」

「へー、不思議な奴だなお前」


 カインはそう言うと、クマ吉の頭を人差し指でつつくように撫でる。

 クマ吉も気持ちいいのかペタンと身体を投げ出している。

 緩やかな一時が過ぎて、周りが暗くなってきた所で馬車が停車した。

 話しでは森を抜けるのには、3日は掛かると聞いて居たのでどうやらここで夜を明かすようだ。


「森で夜を過ごすなら直ぐに動ける様に馬車の外で過ごした方が良いぞ」

「確かに、焚き火はどうする?」

「そこらで集めよう、馬車から離れないようにな」


 俺達が焚き火の薪を集めていると御者のおじさんも降りてきて夕食の準備を始めた。




 暗い森の中、俺達は御者のおじさんが作ってくれたスープを食べ終えると御者のおじさんから毛布を借りて眠りに着いた。

 そして、朝になり俺は皆より先に目を覚ました。

 周りを見渡すと、クマ吉が森の奥をじっと見てることに気付いた。


「クマ吉何か有るのか?」

「しゅ! しゅっしゅしゅー!」

「なあ!? く、クマ吉!! 何処に行くんだ!」


 俺が声を掛けると、クマ吉は突然森の奥に走っていってしまった。

 御者のおじさんの注意を思い出す……しかし、クマ吉を放置する選択肢は無い!

 俺は荷物から紙とペンを出すと、簡単な書き置きを借りた毛布に乗せて走り出すのだった。




 そして、時は戻り俺は視界の悪い森の中を走っていた。

 幸いなのはクマ吉の位置がムシテイマーの力でわかる事と、森に済む魔物等に出会わなかった事だろう。


「くそ! クマ吉の奴何処まで行くつもりなんだ!」


 走り続けて、暫くクマ吉が止まる様子がない……しかし、クマ吉に何か有ったらと思えば立ち止まる選択肢は無い!

 すると、クマ吉の反応がピタリと止まった、俺はスピードを上げてクマ吉の元へと急ぐ。


「はっ、はっ、はっ、い、居た! クマ吉!」

「しゅぅ?」

「はー、はー……良かった無事で……」

『ん? なんだい? キミは?』

「へ?」


 立ち止まったクマ吉を抱き上げると、クマ吉は「なに?」と頭を傾げている。

 安心した……だからこそ気付かなかった、クマ吉が見上げていた何かに……


『……!? そうか……やっと……見つけたよ』

「な、な、な、なんだ!? この……」


 何かしゃべった気がしたが良く聞こえなかった、しょうがないだろうだって。


「バカデカイ蜻蛉は!?」

『初めまして、私はエンシェントドラゴンフライ……永く生きすぎてドラゴンすら倒せるようになった……ただのトンボさ』

「しゅー!」


 目の前に居たのはオニヤンマの様な綺麗な黄色いのデカイ蜻蛉だ。

 しかし、この出会いが俺の人生を変える、大きな転機になるのだった。




 気分か落ち着いた俺は巨大な蜻蛉……否、エンシェントドラゴンフライに事情を説明していた……何故俺はこんなに落ち着いて居るのだろうか?

 まあ、エンシェントドラゴンフライに敵意が全く無いのが理由なのだが……


『なるほどね、そのクマ吉って子が森の奥に行ってしまったから追いかけて来たわけだね?』

「ああ、邪魔するつもりは無かったんだ済まない」

『いやー、気にして無いよ……でもひじょーに言いづらいんだけどね?』


 俺の謝罪にエンシェントドラゴンフライは快く受け入れてくれた。

 しかし、直ぐに気まずい雰囲気をかもし出す。


「なんだ?」

『その子とっても賢いみたいでね……見えないだろうけどキミの身体に糸を付けて戻れるようにしてたみたい』

「え? つ、つまり?」

『キミが追って来ちゃったから完全に迷子になっちゃったね……』

「おうふ!?」

「しゅ~?」


 なんてこったい、知らなかったとは言え……まさか、自分で状況を悪化させていたなんて!?

 クマ吉が俺の頭を撫でて慰めてくれる……良い子だなぁ。


「じゃない! クマ吉、何でこんな所に?」

『きっと私の気配に気付いて見に来たんだと思う……好奇心が強いんだね』

「しゅっ!」


 エンシェントドラゴンフライに元気に返事をしているクマ吉の横で俺は周りを見渡す。

 円形にここだけ広い範囲で拓けている。


「なあ、何で此処はこんなに拓けてるんだ?」

『あー、私が百年前に来た時に着地の風圧で無くなっちゃったんだーその後もたまに羽を解すのに羽ばたいてたからかな』

「な、なるほど……しかし、本当にどうしようか、これじゃあ森を抜けれない」


 俺がそう言うと、エンシェントドラゴンフライが明るい声で俺に話し掛けてくる。


『じゃあ私が送ってあげるよ!』

「え!? いやいや、羽の風圧で気が飛ぶ蜻蛉は流石にヤバいだろ?」


 俺はそう言って断ると、エンシェントドラゴンフライは明るい声のまま話し続ける。


『キミさ、特殊なスキルが有るでしょ? ムシテイマーってスキル』

「!?……何でわかった?」

『私は永く生きてるからね……一人……会った事が有るんだムシテイマーを持ってる人に……』


 気のせいか、少し声が寂しそうな気がしたがそれよりもエンシェントドラゴンフライの言葉が気になった。


「じゃあ! 契約の条件もしってるのか!?」

『しってるよ……そして、私自身も契約条件を満たしてる虫の一匹だよ』

「つまり、契約をしろと?」

『そう、契約すれば出力を抑えやすくなるし、キミの戦力になれる……どう? 悪くないでしょ?』


 エンシェントドラゴンフライの言葉に俺は考える。

 確かに、エンシェントドラゴンフライが仲間になってくれれば生存率は飛躍的に上がるだろう……

 しかし、会って間もない俺にそこまでする理由はなんだ?

 返事を渋る俺にエンシェントドラゴンフライは心を読んだように俺の疑問に答える。


『キミはね、似てるんだ……元の私の主にね……だからさ一緒に行かせて欲しい……ダメ……かな?』

「……わかった……一緒に行こう!」

「しゅー!しゅ!」


 何処と無く悲しそうな声、何故か分からないがほっと置けないそんな感じがした。

 少なくとも百年……もっと永い間一匹だったのかも知れない。

 なんとなくだが、嫌だった……分からないけど幸せになって欲しいと思った……だから


「契約しよう」

『うん!』


〈契約を開始します〉


 頭の中に声が響く。


〈エンシェントドラゴンフライと契約します〉

〈名前をお決め下さい〉


 響く声に俺はエンシェントドラゴンフライに思わず聞いてしまう。


「お前名前は? 昔の主人に付けて貰った名前とか」

『キミが新しく付けて』


 エンシェントドラゴンフライの言葉に俺は見た時に思った名前をつける。


『「ライだ。その身体を見た時思ったんだ、力強くて綺麗なイカヅチのようだなって」』

『!? ……わかった、私はライ……末永くよろしくね?』


 一瞬、エンシェントドラゴンフライ改め、ライの言葉が詰まった気がした。

 しかし、そんな事を気にする間もなく、契約が続いていく。


〈契約完了……〉

〈ムシの王の力により、契約虫“ライ”が従者へと変化します〉


 なんだ!? 知らないスキル!? ライは!?

 その言葉が響くと同時に激痛が全身を駆け巡り……俺は意識が飛んでしまう。


「ぐっ!? ……ライ……!」

「マヒトくん!!」


 意識が薄れる中でライの声が聞こえた……さっきよりハッキリと聞こえた気がした。

 あれ? そう言えば……俺って……ライに名前って……


「……教えたっけ」


 俺は完全に意識を失った。

……次回……キミの事を知っているよ……内に秘める心

閑話 キミに出会うまでのトンボ

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