私の下僕?
放課後友達と部活に行こうとしていた柏木未耶は男子生徒に止められた。
「柏木、なんか体育館裏に来てほしいって奴いるんだけど」
「誰?」
「さぁ?」
「ごめん先行ってて」
「分かったよ」
未耶は友達にそう言うと体育館裏に行った。
「誰だろ?もしかして告白?!私に初の彼氏ができるのかな~?」
未耶はそんなことを考えわくわくしながら行った。
体育館裏に着くと黒髪で未耶より身長が高くかっこいい男子生徒が立っていた。ネクタイを見ると未耶と同じ学年だということが分かる。そしてこの男子生徒は今朝未耶のクラスに転校してきた生徒だ。
だが未耶は居眠りをしていて誰だか分からない。
「えっと・・・」
「柏木未耶様ですか?」
男子生徒はかしこまった口調で言った。
「(なんで様?)そうですけど・・」
「お会いしたかったです」
そう言って未耶を抱きしめた。
「・・えぇぇぇぇ////(何この人?!てか、抱きしめられてるぅぅぅぅ!!)」
「あ、すみません」
男子生徒は未耶を離し頭を下げた。
「大丈夫だから頭あげてください!ところで貴方は・・・?」
「申し送れました。俺は神坂悠。貴方の下僕です」
男子生徒はニコリと笑った。
「(は?下僕?この人が私の下僕?)え~と・・・下僕?」
「ハイ。俺は未耶様に仕える者。未耶様のために存在する者です」
「・・・つまり私はキミの主と?」
「ハイ」
「何故私が主に?」
「未耶様はある国の姫で俺はその下僕でした。ある日国から未耶様がいなくなり大変でした。数年かかってやっと未耶様を見つけました。
未耶様はこの国を気に入ってらしゃっているので国に連れて行くのをやめましたが、未耶様だけでは不安です。そこで下僕の俺がこの国に残り未耶様を護るということに」
未耶は話についていっていない。
「あー、えー、国?姫?」
「ハイ」
「ちょっと待って。私は生まれたときからここにいたわよ。人違いじゃないの?」
「いえ。その印が王家の証です」
悠は未耶の左腕を持ち、制服の袖をめくった。肩付近に黒いマークがある。
「これが証・・・」
「ハイ。王家の者には必ずついています」
「・・・(これが証?いやいや、こいつ適当なこと言ってるって。何が王家よ。あんま関わらない方がいいわね。)キミの妄想には付き合ってらんないよ。私部活に行くからバイバイ」
後で悠の呼び止める声が聞こえたが気にせず部室に向かった。
音楽室では友達の真貴と琥夏が喋っていた。黒板には「自由練習」の文字。
「あ、お帰りぃ、みぃちゃん」
真貴が未耶に気づき寄ってきた。
「で、何の話だった?」
琥夏が興味津々で聞いてきた。
「んー、何か妄想君だった」
「妄想君?」
「そうそう、俺は未耶様の下僕ですとか、私がある国の姫だとか」
「あははははは!!それヤバイって!!」
「あはは!!」
「だから、キミの妄想に付き合ってらんないって戻ってきた」
「あははは!!それ正解だよ!」
「で、かっこよかった?」
「うん。かなりね。確か名前は、神坂悠って言ってたなぁ」
「神坂君って・・・」
真貴と琥夏は顔を見合わせている。
「ん?」
「神坂ってうちのクラスに転校してきた奴だよ」
「マジ?!」
「みぃちゃん寝てたから・・」
「同じクラスとか気まずいなぁ」
やがて部活の時間が終わり未耶は自宅に帰った。
「お姉ちゃんお帰りー!」
「姉ちゃんお帰り」
家に着くと妹の和と弟の聖が迎えてくれた。
「ただいま」
「姉ちゃんにお客さん」
「客?」
リビングに行くと兄の愁助と未耶と同年代らしき男子生徒が話している。
「あ、未耶。お客さん」
愁助と喋っていたのは未耶を体育館裏に呼び出した悠だった。
「ななななな何であんたがここにいんのよ!!」
「未耶様お待ちしておりました」
「未耶様?」
キッチンにいた母の奈緒が顔をひょこっと出してきた。
父の仙太郎は顔を未耶の方に向けている。
「ねぇねぇお兄ちゃん誰?」
和が悠に聞いた。
「俺は未耶様の下僕です」
「ちょ!」
「げ、下僕?!」
奈緒はお玉を落とし、仙太郎は唖然としている。愁助は笑っている。
「あははははははは!!お前面白いな!!こいつの下僕って!!」
「ねぇねぇ下僕ってなーに?」
「主の召使みたいな者です」
「じゃあお姉ちゃんは偉いの?」
「ハイ。偉大なるお方です」
「ちょい待って!!キミの妄想に付き合ってらんないって言ったでしょ!!」
「妄想ではございません。本当のことです。もしかして記憶がないのですか?」
「最初からそんな記憶ないわよ!!帰ってよ!!」
「未耶、そんな言い方ないでしょ」
「で、でも!・・・キミ私の下僕なんでしょ?命令よ。出てって。私の前に二度と現れないで」
「・・・・分かりました」
といい、悠は出ていってしまった。
「お兄ちゃん!!」
和が呼び止めたが悠は去ってしまった。
「いいすぎじゃないか未耶?」
「・・・知らない」
未耶は部屋に戻ってしまった。
「お兄ちゃん・・・」
聖と和は小学校低学年で同じ部屋。二人が部屋に戻ると窓の外に悠が立っていた。
「お兄ちゃんだ~!」
和は悠に抱きついた。
「どうしてここにいるんですか?姉ちゃんにあんな事言われたのに?」
「お兄ちゃんお家ないの~?」
「・・・ハイ」
「じゃあ今日は和の部屋で寝ていーよ!」
「ですが・・・」
「僕達は兄ちゃんの部屋で寝るから」
「ありがとうございます」
「じゃーね♪」
「いい人たちだ」
和たちが出てった後に呟いた。