姫と帝⑶
ぼんやりと部屋の天井が見える。俺はスマホで時間を確認したら、まだ起きる時間まで1時間ほどあった。もう少し寝ようと思ったが、昨日の月姫との電話を思い出し、声が聞きたくて電話した。
『もしもひ?』
「ごめん起こしたか?」
『んん~?……はやて? えへへ♪ 颯の声がするぅ~♪』
「眠そうだな。電話切るから、もう少し寝とくか?」
『切っちゃ、やぁ~!』
ダメだ……月姫は完全に寝ぼけてるな……
「悪かったな。ゆっくり寝てくれ」
俺はそう言って電話を切った。流石に朝早すぎたか……
プルルルル♪
月姫から着信……
「もしもし?」
『は……颯いま電話した!?』
「眠そうだったから切ったけど?」
『私変なこと言ってなかった!?』
「ん~、可愛かったけど?」
『最悪だぁー!!』
その後、何かあったのか聞かれ、素直に声が聞きたかったと、言ったら月姫は喜んでくれた。電話で色々話した後、俺は準備をして、月姫を迎えに行った。月姫の家に行ったら、既に月姫は外で待ってて、俺を見つけるなり、駆け寄ってきた。
「おはよう颯♪」
「おはよう月姫。中で待っててくれてよかったのに」
「声聞いたら、早く会いたくなったの♪」
そう言って、当たり前のように俺の腕に抱きついてきた。俺も今までは、恥ずかしさが勝ってたが、今は落ち着く様な気持ちになる。
「ところで颯、なにか手がかりはあるの?」
「え? あぁ、昨日話を聞いて、月姫の母さんから、キャンプ場の近くで見つけられたと聞いてるし、晴美姉さんからは、ある物を取りに行こうとしてたと聞いたな」
「キャンプ場ってあの日のキャンプ場?」
「あぁ、たぶんそこに、何かを取りに行こうと、したんだと思う」
「何かあったっけ? 記憶にあるのって、星を見に行くって事しか……」
「流石に星を取りに行くとかは、無いだろ」
「だよねぇ~、他になにか聞いてないの?」
「あっ! そう言えば、竹取物語……」
「ん? 何それ?」
俺は晴美姉さんから、ヒントを貰ってたのを思い出した。
「学校で習っただろ? 昔話の竹取物語だよ。晴美姉さんがあれにヒントがあるって言ってたんだ!」
「ヒント? てかそれハルねぇ、答え知ってるんじゃ?」
「どうなんだろ?聞いてもよく分からないとは、言ってたけど」
「ヒントは言えても答えを知らないって……颯、一体何を取りに行ったの?」
「それが分かれば、こんな苦労してねぇよ」
「それを言ったら、おしまいだぁ~」
「月姫が、言わせたんだからな!?」
俺はそう言って、月姫のおでこを、空いてる手で軽くつついた。
「んなっ!? 颯、いきなり何するのよ!」
「俺を、からかったからだ」
「絶対離れないって、わかった瞬間にDVするのね?」
「まてまて! 誤解を招くようなこと言うなよ!」
「なら、謝っておでこ貸して」
「腑に落ちないんだけが?」
「あ~あ、おでこに傷が残ったらどうしてくれるの?」
「残らないだろ……はぁ、わかった。傷が残ったら俺が責任持つ、それでいいか?」
俺は、あえてそう言ったら、月姫は一瞬固まって俺の顔をじっと見つめた。そして、俺の言葉を理解したのか、一気に耳まで赤くなり、慌て始めた。
「せっ……責任って、いっ………いきなり何言い出すのよ! 私達、まだそんなに経ってないのよ!?」
「なら、前のも、足したら、1年ぐらいにはなるだろ?」
「それは……ずるい……」
「まぁ、そう言っても昔のことに関しては、まだ思い出してないんだけどな」
「すぐ思い出すよ……って話し逸らそうとしてない?」
「してない、してない。寧ろちゃんと思い出したら……とりあえず教室行こうか? 他の生徒が結構こっち見てるし」
俺は恥ずかしい事を言いそうになったけど、周りの目線に気がついて、言うのをやめた。
「もう! そうやってすぐ誤魔化す!!」
そう言って頬を膨らませ、俺腕に顔を押し付けて、グリグリしてきた。これさ……周りから見たら、ただのバカップルじゃね? 俺は、そう思ったら無性に恥ずかしく感じ、歩く速度が自然と早くなっていった。
「颯、歩くのはやいよ。もっとゆっくり歩いて」
「あっ! すまん」
俺は歩く速度を慌てて落とした。月姫は、俺の速度に必死で着いてきてたから、息が少し上がってた。
「いきなりどうしたの?」
「いや……俺達って、周りから見たら……バカップルに見えてんのかな?って思っただけ」
「いいじゃん♪ それで颯に、変な虫がつかないなら、いくらでもバカップルと呼ばれてもいいよ?」
「変な虫ってな……そもそも俺に、そんなのつかねぇよ」
はぁ……自分で言って自分で凹むとか俺って……
「今まではそうかもだけど、これからは、あるかもでしょ? でも安心して♪ そんな変な虫は、私が追い払うから♪」
そう言ってニッコリ笑った月姫の眼は、どこか殺気を感じた。
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