初めての下校
俺は準備してる月姫を置いて、下駄箱まで来ていた。
あのまま教室に居たら、間違いなく俺の理性は崩壊し、交際初日に社会的終日を、迎えるところだった。
ちょうど靴を履き替えたところで、月姫が追いついてきた。
「少しは待ってくれても良くない?」
「悪かった。俺とお前を守るためには、こうするしか無かった」
「はぁ? 訳わかんないんだけど」
説明するのも恥ずかしいから、ここはスルーしとこう。
「ところで颯、一緒に帰るんでしょ?」
「あぁ、その事だが月姫の家ってどっちなんだ? 俺は、商店街抜けた先なんだが」
そう、校門を出て左へ行くと商店街、右へ行くと駅とかがあり、まっすぐ行くと大型のショッピングモールと、色々利便性に優れてるから一緒に帰るとなると、なかなか難しい時もあるのだ。
「私も商店街の方途中で曲がった先の、住宅街だけど?」
「なら、途中まで一緒に帰れるか」
「そこは家まで送るが、普通じゃないかな?」
「交際初日から家までとか、俺的ハードル高いんだけど?」
「颯なら大丈夫だよ♪ てか送って欲しいんだけど…その辺鈍感だよね?」
「すまんな。俺、付き合った事無いから気が利かなくて。それならなら是非、送らせてもらうよ」
「ふーん、付き合った事ないんだ……」
そう言うと、月姫は少し寂しそうな顔をしていた。なんだ? 付き合った事ないからって、そんな顔しなくてもいいと思うんだけど。
「まぁとりあえず帰るか。曲がる所来たら教えろよ?」
「お任せ下さい! ビシッ!」
月姫は効果音を出しながら敬礼して、俺の手を握ってきた。
「お…おい! いきなりなんだよ?」
「手を繋いでるだけじゃん♪ それともこっちの方がいいのかな?」
握った手を引き寄せ、抱きついてきた。
ち...近いし、腕に柔らかい物が…さっき必死になって修復してた理性がまだ壊されてく…
「ちょっ…誰かに見られたらどうするんだよ?」
「付き合ってるのに見られると困るの? もしかして..うわ「違うからな!」…まだ言いきってないのに!」
「言わせるか! なんで初恋で、初カノで、浮気前提なんだよ!」
「自分で言っちゃうか~」
「そこはつっこむなぁー!!」
なんか色々話して歩いてたら、いつの間にか校門を出ていた。腕に抱きつかれてるのも、なんか気にならなくなっている。
(恥ずかしいと言うより…なんか落ち着く…それに……)
俺は初めての筈なのに、どこか懐かしく感じた。しかし、何故そう感じるのかが、わからずにもいた。
そんなやり取りを繰り返しながら俺達は、商店街まで来ていた。スーパーとかもあるし、日常な物はだいたい揃うから、いつも人で賑わってる。そんな中、ふと月姫は足を止めた。
「ねぇ、アレ食べてこうよ」
そう言って指をさしてる方を見ると、移動式のジェラード屋が来ていた。確かに、この時期はまだ暑いしな…
「食べながら帰るか」
「やったー♪」
俺達は、ジェラード屋の前まで来た。
––バニラ、ストロベリー、チョコ、抹茶、ミント、フランボワーズ、ピスタチオ等マイナー的な物が7種。それと別で、マロン、スイートポテト、梨の、限定物が4種と、なかなかなバリエーションだ。
俺達は、ダブルのカップにする事にした。俺は、マロンとピスタチオ。月姫は、梨とストロベリーだ。
「お待たせしました」
「ありがとう」
俺は、店員からカップを受け取り、月姫に渡した。
「ありがとう♪ それじゃ~」
そう言ってストロベリーを、すくって口に入れた。
「んんっ~!! めっちゃ美味しいよこれ!!」
「そうなのか? それじゃ俺も食べるか」
月姫は、味に満足したみたいで、ひとくち食べる度に頬が緩み、幸せそうに微笑んで食べてた。
俺もマロンを1口食べた。確かに、栗の風味が口いっぱいに広がり、実も入ってるので食感もとてもいい。それに、甘すぎずちょうどいい甘さで、ジェラードのミルク感もあり、冷たいモンブランと言えばわかりやすいかな?
「ね…ねぇ颯」
「ん?」
月姫は申し訳なさげに、俺を呼んできた。はは~ん、さては味見が欲しいんだな。
「ほら味見してみるか?」
「いいの!? わーい、いただき!」
そう言って月姫は、マロンとピスタチオを、1口づつ味見した。
「そっちも美味しい!」
「結構美味しいよな」
「こっちもどうぞ♪」
月姫は梨をスプーンですくって、俺に向けてきた。
いや…それ、月姫が使ってたスプーンじゃ…俺は、どうしたらいいのか、悩んでた。
「ほら早く! 溶けちゃう!!」
「わかった食べるから!」
俺は恥ずかしく思いながらも、差し出されたスプーンを口に含んだ。正直恥ずかしくて、味がわからなかった...
「お…美味しいな」
「でしょ~♪ って、なんで照れてんのよ? 関節キスよりすごい事してきたのに♪」
「ぶふぉ!!」
思い出さないようにしてたのに、その一言でさっきの事が、頭の中で映像として浮かび上がってきた。
「それはそれ! これは…これだ!」
「なにそれ~あはは! 今の私達は、キスすらしてないのに…あんな事を……」
「話振っておいて、自爆するなよ!」
なに言いながら恥ずかしがってんだよ!!
そうして、お互い笑ったりしながらジェラードを食べてたら、スーパーから1人の女性が出てきた。その女性は、コチラに気がつくと声をかけてきた。
「あら? 月姫そちらの方は?」
「彼氏だよ♪」
ストレートに言うのか!? 俺も挨拶しとくか。
「はじめまして、お付き合いさせていただく深風 颯と、言います」
「えっ?…あっ…えぇ、深風君初めまして。娘の彼氏であってるのよね?」
「え? えぇ、そうです。 と言っても今日からなんですけど」
「そうなのね……よかったら今度遊びにいらっしゃい。歓迎するわね♪」
「ありがとうございます」
なんか驚いてたけど…月姫って、今まで男友達とか居なかったのかな?
「それじゃ母さん帰るわね」
「私も一緒に帰るよ」
「でも…」
「いいの! さぁ、荷物持つから帰ろ♪」
そう言って月姫は、荷物を半分受け取って、俺の方を向いた。
「ごめんね。そゆことだから、今日はここでお別れで、また明日一緒に帰ろ♪」
「あぁ、わかった」
俺は、そう言って別れようとした時、一瞬寂しそうな顔をしたような気がして、一瞬考えた。俺は……
「な…なぁ! 良ければ家まで送るぞ?」
「えっ? でも…」
「月姫のお母さんも気にしないならだけど、俺が荷物持つよ」
何故そんな事言ってしまったのか…まだ一緒にいたいと思った?
「深風君が良いなら、お願いしようかな」
「ちょっ!? お母さん!?」
「結構買っちゃったし、男の子が持ってくれるなら助かるじゃない?」
「むぅ~、颯ありがとう。お願いしていいかな?」
月姫は、母親の説得に折れ、荷物を俺に渡してきた。
「わかった。それじゃ、荷物持ったから帰ろうか」
俺は、両手にずしりと重い袋を1つづつ持ち、月姫ファミリーと一緒に、帰ることになった。
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