閑話 料理人クック歯科医へ行く
セシリア公爵家料理人のクック、歯科医の待合室に居ます。
耳を両手で塞ぎ、冷や汗を流しながら。
診療室から聞こえてくる声、悲鳴。
「ガァーーー」
「いたェーーーー」←痛いと叫んでいます。
顔面蒼白、医療室が拷問部屋にしか思えないクック、逃げ出したい気持ちを、脳裏に焼き付いた、公爵の優しい笑顔からの「早く治してください」が押し留めています。
拷問部屋から、虫歯を放置の大罪人が頬に手を翳して出てきます。
クックも虫歯を放置した大罪人の1人。
「クックさん診察室へ入って下さい」
立ち上がろうとして気付いた足の震え、右手と右足が同時に出るほど動揺。
拷問椅子に座り、口を開けるクック。
「あ~、これは酷いね~」
「クックさんは公爵家の料理人なんですって」
小さく頷くクック。
「料理人さんは間食、味見を頻繁にするでしょう、虫歯になりやすいんですよ」
「料理長さんは、毎月来て虫歯の早期治療をしてるからね」
料理長が、毎月来てると聞き見習わねばと思うも、始まった拷問に、無理無理、1分で見習う気持ちは衰退、消滅したのです。
拷問部屋から開放されたクックに衝撃を与える歯科助手。
「来週、来られる日は何時ですか?」
来週、また拷問だと言われ、此から憂鬱な日々を過ごすのだと思ったら。
「あと3回は通って下さい」
意識が遠くに飛んでいくクック、を現世に引き戻したのは。
「治療代、公爵家のセインさまから頂いていますので通って下さい」
セインがクックへの癒やし発動で勝ち取った街への外出、公爵は妻のリリイへ、セインを歯科医へ行かせると言って許しを得たのです。
公爵夫人はセインが治療で歯科医へ行くと思い込んだのですが、実際は、クックの治療代を前払いしにだったのです。
1ヶ月後、治療完了の言葉を聞き、これで拷問から解放と喜び仕事に励む日々。
「クック明日は暇か?」
料理長からの声掛けに、料理を教えてくれるのかと「暇してます」と答えたら
「それは良かった、歯科医の予約をしてあるんだ、わたしは10時でクックは10時30分だ」
それから毎月、クックは拷問を受けるのですが、鞭打ち程度で済まされたのです。
治療費、毎回、公爵から頂いていると、クックの前に拷問を受けた料理長がクックの分の支払いも。
そして、治療から戻ると、料理長はクックへ公爵家に伝わるレシピの伝授、公爵家のお菓子、半分はクックが担当する事に、今をアーモンドをクルミに変えたヌガーを作っているのです。
セインお嬢さまに、美味しいと言ってくれるのを楽しみにして!
歯科医、痛くなるまで行かないですよね。