第77話 貴族内の噂
公爵家で淑女レッスン
公爵夫人から招かれる講師、王都から馬車で2日の道のりを断らずに快く承諾するのは、公爵家の淑女レッスン講師を務めると、その道で認められた証、招かれた回数が複数ともなると業界内で一流扱い。
講師を務めた者は聞かれるのです。
公爵家の姉妹はと?
聞かれて答える内容に、姉妹ともう一人の存在。
長女のセイン、次女のプリティーともう一人、名はシドニー。
セインお嬢さまの専属メイドだと紹介されるのですが、メイドへ貴族令嬢としての振る舞いを身につけさせる理由は?
講師達には、セインとシドニーが主従の関係とは違って見え、更に姉妹に劣らぬ美少女、憶測が噂となって広まったのは、シドニーは公爵の隠し子で夫人公認。
シドニーは長女のセインより1歳年上で来年16歳、通例では社交お披露目。
既に、セインのメイドとして公爵家主催パーティーなどで容姿は広く知られているので、各方面より釣書きも届くようになり公爵夫妻が話し合い。
リリイは、長女のセインが16歳を待たずに教団聖女となり、社交お披露目会が行え無いだろうとの思いから「シドニーを養女として盛大にお披露目会をするのですわ」と言い出し。
公爵、異存は無いのですが、耳に届いている噂を認める形に成るのではと。
「シドニーの噂、気になさっておりますの」
「セインが教団聖女となりましたら、シドニーには良いお相手をと思っていますから、否定をせずにして下さいまし」
おいおい良いのかと思う公爵でしたが、リリイの許可がでたのでメイドでは無く公爵家の娘としてシドニーを嫁に出せれば、セインの事で苦労を掛けたシドニーへ少しは恩を返せると。
公爵夫人、自分に似たセインに着せたいデザインを沢山描いて有るのに、実現した1着は教団幹部の衣だけ、それも日の目を見ず。
その後、なぜかセインは公爵夫人からのドレス作成を悉く断ったのです。
プリティーには似合わない!と思ったら身近に居た代理の存在、それがシドニー。
公爵家のメイド服はオーダーなのでサイズは仕立て屋が把握、内緒でドレス作成が可能。
既に、デザインに合わせた生地選びを開始、シドニーを着せ替え人形に出来る口実が出来たと喜んでいるのです。
シドニーの元へ届いたアロー侯爵の妹レミーエからの手紙。
内容は、来年のお披露目令嬢人気ランキング
5位 アラミス子爵家長女のオペラ
4位 ダルタニアン伯爵家長女のユカ
3位 ヌール伯爵家次女のリリルカ
2位 ポルトス伯爵家長女のリン
「オペラさま、ユカさま、リンさま、流石です」
1位の記載が変なのです、書かれているのが。
”断トツの1位ですわよ”
「???」
意味不明なシドニーでしたが、オペラさま、ユカさま、リンさまの情報はセインも喜ぶと手紙をみせると。
「あら、シドニー、自慢ですの?」
「はい!セインお嬢さまを取り巻く皆様ですから」「ただ、1位の方、お名前を記載忘れとは、レミーエさまらしくないです」
惚けているのでは無く、シドニー自身が来年のお披露目令嬢の対象に入っていると思っていないのだと
「これ、借りますわ」
公爵夫人へ、シドニーが対象に成っているのを確認しに向かうセイン。
公爵夫人の自室
レミーエさまからシドニー宛てだと渡した手紙を見た公爵夫人 してやったり顔を見たセインは確信犯だと。
「なぜ1位がシドニーなのですか」
セインの問いに答えず、公爵夫人は専属メイドの1人へ
「先日入手した、絵を持って来て」
見せられた絵は、セインが椅子に座り、左後ろにプリティー、右後ろにシドニーが描かれていて、絵の補足に”セシリア公爵家の3姉妹”と記載。
「来年のお披露目として、セシリア公爵家からシドニーを申請したからよ」
淑女レッスンをシドニーにも課しているのが公爵の隠し子だと噂になり、否定が面倒だから養女にしてお披露目することにしたら、先程の絵まで出回ったと言われたのです。
「事前に言って下さいまし!」
セインが、16歳前に教団聖女に成ったら、お披露目会が出来なくなるから、その分をシドニーに注ぎ込むのだと、うきうきしている母親を見て、セインが躊躇うデザインのドレスを着せられる犠牲者に成るのだと判り、シドニーには黙って置こうと。
「これも見て」
ドサっと出された、シドニー宛ての釣書き。
「セインの専属メイドを、お披露目までは続けさせますのでと、お返事書くの大変なのよ」
宛名だけ書かれていない、釣書きへの返事が10枚以上すでに用意済。
シドニーの幸せ、お母さまにお任せしておけば安心と部屋へ戻ったセイン、シドニーへ手紙を返して「お母さまに、好みを伝えて置いた方がよくてよ」
好み?お菓子でも頂けるのかと思ったシドニーでした。