第38話 屋敷で勇者に声を掛ける
セイン主催のお茶会後、頻繁に勇者が公爵家へ訪れます。
「王族派の目は平気なの」
勇者へ聞いたセイン、何故か驚愕している勇者。
「セインさま、わたくしが認識出来るのですか?」
勇者は、スキル-隠密を発動中で目の前に居ようと認識出来ないはずだったのです。
勇者が意味不明なことを言うので、返答に困るセイン。
「目の前に居る人が認識出来ないって、わたくし、目は見えてましてよ」
勇者は自身に禁じている人へ向けてのスキル鑑定をセインへ発動、霧が掛かって見えないのです。
生命力に、犯罪、善行などがわかるスキルが初めて失敗?跳ね返された?霧が掛かっているので、失敗も跳ね返されてもいない、力、能力が足りないのだと気付いたのです。
「お嬢さま、怖いですから独り言はよして下さい」
呆れた顔のシドニーの言葉を聞き「え!」目の前の勇者さまがシドニーには見えていない?声も聞こえていない?
逃げだそうとする勇者の腕を掴み、自室へ向かうセイン、シドニーへ。
「部屋で考え事をします、用があれば扉の外から声を掛けて下さいまし」
何かを引っ張て行くようにして、部屋へ向かうセインを見送るシドニー、セインの突然言いだした考え事、また、とんでも無い我が儘を言い出すのではと心配。
勇者はセインから見たら、不審者としか思えない状態に、手を振り払って逃げたら、本当に不審者確定になると抵抗せず連行。
「ごめんなさいまし、お茶は出せませんわ」
綺麗に片付けられ、良い匂いのする女性の部屋へ、連れ込まれてしまったことを後悔する勇者。
「もしかして、異性の部屋に入るのは初めてなのです?」
頷く勇者を見て、ウィッチの部屋には入ったことがあると思っていたので、恋する中では無いのかと思っているセイン。
恋する中でも貴族令嬢の部屋へ、男性が入るのは許されない行為だと分かっていないのです。
勇者は、セインの部屋へ入ったのが公爵夫妻、そして母に知れたら、お怒りと、母からは責任を取れと言われるのが脳裏に浮かび身震。
勇者から、先日のお茶会時に公爵夫妻と話し合って決めた、公爵から王都に居る間、毎週火曜の10時に執務室へスキルを使って忍んで来いと言われたこと、そして、セインには忍びスキルが通じない初めての人だと聞かされたのです。
突然、頭を下げる勇者、
「セイン嬢さまのお陰で、母に会えました」
プリマさまは、反王族派の中でも、お父さまの信頼厚い魔族領に近い領地をお持ちの方の所で匿われていると聞かされていたセイン、移動だけでも往復で1ヶ月以上なのにと不思議に思っていると。
「昨日、スキル身体能力大向上を使って会いに行ったので、今日は筋肉痛なのです」
往復1ヶ月以上を日帰り?筋肉痛?
きっと、聞かされていない、とんでもスキルを使ったのだと、勝手に納得したセインは、脅かされ返しと、癒やしを発動したのです。
自身が淡く光り、金の粒子が漂い、全身の痛みが癒やされて行くのに驚いている勇者。
驚き顔が見られたので、してやったり顔のセイン。
扉の向こうから、シドニーの声。
「お嬢さま、お昼を一緒にと奥さまからお誘いが来ております」
声が聞こえるのを考慮した勇者は頷き、立ち上がり、椅子を直すと扉の方へ向かい、再び頷いたので、スキルを再発動したのだと。
「シドニー、入って良いわよ」
扉が開くと、シドニーを避けるように部屋を勇者は出ていったのです。
翌週の火曜から、午前中の予定を全て空けておくようシドニーへ支持、空けた時間、自室に1人籠もるセインを不思議に思うシドニーでした。