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第3話 癒やしの能力が露見

 使用人達は、公爵家で天気が良い日の夕方、頻繁に見られる情景、公爵夫人の長女セインへのお叱り、この数日間見られず不思議に。


 毎晩のように公爵の姉ミラが、セインへ施していた日焼け・擦り傷・虫刺されの癒やしが行われていないので、セインが庭遊びを止めたのだと思っている公爵夫人。

 淑女とはほど遠い日々の行いに胃を痛めていたのが嘘のようで、サロンでセインの醜態が知られないよう我慢していたお茶会を開こうと、招待者の選定に勤しんでいると。


 メイド長が、お仕着せを手に持ち。項垂れるセイン専属メイドのシドニーを連れてサロンに

「奥さま、このお仕着せ2着、シドニーが皆に見つからないよう、洗おうとしてりました」


 何故、メイド長が告げ口まがいのことをしているかと言うと、事前にシドニーへお仕着せ洗いの理由を問い質し、お嬢さまと隠れて庭遊びを続けていて、日焼け・擦り傷・虫刺されを、お嬢さま自ら癒やしていると聞き出していたから。


 使用人が自分のお仕着せを洗うことを、態々メイド長が伝えて来る理由が分から無い公爵夫人、皆に見つからないよう洗うのも、11歳の娘が恥ずかしくて隠したいこともあるだろうと思っていると。


 メイド長が追加情報を提供

「庭で遊んだと思われる汚れが付いているのです」


 庭で遊んだと思われる汚れ、先程2着と聞き、セインが庭遊びを止めたと思っているのは間違い?

「メイド長、セインは何処に?」


 メイド長がシドニーへ視線を向け、優しい声で

「セインお嬢さまはどちらに?」


 サロンに連れて来られてからすっと項垂たままのシドニー、か細い声で

「お部屋に」


 シドニーは顔を上げ、公爵夫人の表情を伺い、お優しい表情をされているのを見て、実情を知った時の落胆を思うと、さらに身が縮む思いをしているのです。


 公爵夫人はセインをサロンへ呼ぶか、セインの部屋へ行くか悩みましたが

「シドニー、セインをわたくしの部屋へ連れてきてください」


 メイド長が話さない事象があると察したので、サロンでもセインの部屋でも無く、自室で使用人の目を気にせず問い質そうと考えたのです。


 サロンから自室へと立ち上がった公爵夫人、シドニーの落ち込み具合からも、隠し事をしていると思われるメイド長に視線を向け

「同席してくださいね」


 頷くメイド長

「直ぐにお部屋へ参ります」


 サロンにシドニーと2人になったメイド長、手にしていたお仕着せをシドニーへ渡し

「ごめんなさいねシドニー、嫌な思いをさせて、わたくしの口から奥さまへ、セインお嬢さまが癒やしを使われたとは言えないので、こんなかたちになってしまい」


 シドニーの項垂れ理由は、奥さまを騙していたと思っているからで、お叱りを受けることでは無いのです。


「セインさまの専属、シドニーにしか出来ない重責、よくやっていると思っています、今回の件もそれほど深刻にならずに」


 シドニーには、メイド長の慰めは届いておらず。

 反射的に返事をした声は、か細く「はい」とだけ。


 サロンからセインの部屋へトボトボと向かうシドニーを見た者は、自殺でもするのではと心配したのです。



 シドニーの項垂れた姿と、洗いに行ったお仕着せをそのまま持って帰って来たことから状況を察したセイン。


「もう少し隠せると思ってましたが、遅かれ早かれお母さまにお叱りを受けると思っていましたのですわ、お母さま、わたくしが淑女らしくしているとお喜びだったから、悲しまれますわね」


 セインに視線を合わせ、まだ何も言って無いのにと。


「お嬢さま、何故分かるのですか?メイド長さまに、お仕着せの泥汚れを追求され、癒やしの能力を話してしまい、奥さまからは、お嬢さまをお部屋へお連れするようにと」


 シドニーの話を聞いても、変わること無く平然と

「メイド長の追求、厳しいですから」

「お母さまは、どこまでご存知なの?」


 相変わらず項垂れたままのシドニー

「奥さまは、庭遊びを止めていなかったのだと思われているだけかと思います」


「落ち込むのは、そろそろ止めて、今回もわたくしの我が儘に付き合わされただけなのですから、それと、お母さま、癒やしのことを知ったら喜んで頂けるかも知れませんわよ」


 セインの真意は、喜んでは頂けずに、癒やしを施せると知り卒倒するのではと心配を。

 

「シドニー、ごめんなさいね、また一緒にお母さまのお叱りを受けることになってしまい」

「わたくしは、この数日、お叱りを受けてなくて気分が優れなかったのですわ」


「行きますわよお母さまのお部屋へ、一緒にお叱りを受けてくれるのでしょう?」


 お叱りなら幾らでも受けるとシドニー

「勿論でございます」

 

 シドニー少しは元気になったかしらと思うセイン、お叱りを受けるとは思えない軽やかな足取りに、すれ違う使用人は、まさか此から屋敷を震撼することが起こるとは想像だにしていないのです。

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