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第20話 毒をもたらした者へ(1)

 公爵は娘のセインを連れ挨拶周り、国王夫妻に続き、王太子、王族派の大臣と周り、専用に用意された席に戻ると。

「お父さま、紫の色が付いてたのは、王太子さまに、環境大臣さまですわ、あと、ずっと此方を見ている、あちらのお方、それと毒入りワインを持ったボーイが2人いますわ」


 王太子は想像通りに対して、環境大臣は王族派でも常識人だと思っていたので驚きの公爵。

 そして、セインが向ける視線の先にはバッド伯爵。


 公爵が座る席に来たボーイ、グラスを公爵へ渡そうとすると、セインが公爵の袖を引っ張るのです。

 公爵は、ボーイから差し出されたグラスを受け取らず。

「そのグラスを持って付いて来なさい」


 ボーイが公爵の指示を拒否できるはずも無く。


 公爵は、毒を配った実行担当者へ『領民に健康を害する菓子をお配り頂き』と脅すだけの予定が、思わぬ毒入りワインに笑んで、ボーイを伴いマイヤー侯爵の席に一度寄っり、毒入りワインを持つもう1人のボーイの監視を依頼してバッド伯爵の席へ。


 白髪の老齢な紳士が座る席、国王主催のパーティー、伯爵位で要職に付いていない者が専用席を上座に用意されるのは異例、国王に近い存在である事の証。


 爵位が下位で国の重要職に付いていないバッド伯爵の席へ、公爵が自ら足を運ぶのに気付いた者達の視線が集中。

 バット伯爵は、公爵が挨拶に来たことに大満足、やっと分かったか若造、これで反王族派は解体だなと思っています。


 公爵は、立ち上がりもしないバッド伯爵に、挨拶することも無く伴ったボーイへ。

「バッド伯爵にワインを差し上げろ」


 青ざめるボーイは毒入りでは無いグラスを手にとると。


「それでは無い」


 お膳に載せた毒入りでは無いグラスを順に手にすると、首を振る公爵、毒入りワインの入ったグラスを手にすると、公爵に付いて来たセインが袖を引っ張り。


「それだ、バッド伯爵にお渡しろ」


 毒入りワインの入ったグラスがバッド伯爵の前に置かれ、手にしたのを確認後、別のグラスを受け取り乾杯の仕草をする公爵。


 青ざめるボーイがバット伯爵に視線を送り、首を横に振っているのに気付き、にこやかだったバット伯爵の顔が蒼白となり、手に持ったグラスに入ったワインが零れるばかりに震えだし、グラスが手から離れ床へと。


 静まり返えっていた会場に「パリーン」グラスが割れる音。


 公爵は、悲しむふりをして白々しく。

「一度手にした、わたしからのワインを飲んで頂けないのですね」


 渡されたグラスを、一度受け取ったにも関わらず、飲まずに床に落すのは、渡した相手を侮蔑する行為。

 その相手が国内筆頭貴族のセシリア公爵、バット伯爵が国王に近い存在だろうと(おこな)った暴挙に会場中は静まり返るのです。


 蒼白のまま、手だけでは無く全身をガタガタと振るわせて、先程までの勝ち誇った顔は何処に、立ち上がり頭を下げ。

「手、手が滑っただけで御座います」

「お許し下さい」


 娘のセインが驚く程の冷たい声と、悪魔とも思える形相の公爵。


 公爵の正面側に居た者からは、悪魔と見紛う形相に悲鳴とも思える声が聞こえる程。


「後日の挨拶をお待ちしています」


 その場に崩れ、座り込むバッド伯爵を見た者達は、公爵の言葉は、命が惜しければ隠居の挨拶に来いと訳されて聞こえ。


 バッド伯爵は、同席していた息子の肩を借り、蒼白のボーイと伴に会場を後にしたのでした。

公爵は、毒に気付いたら袖を引けと、セインへ事前に言っておいたのです。

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