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第16話 癒やしの恩恵 騎士団員

 盗賊討伐、セシリア騎士団に死者はなし。しかし、数日後には数名が世を去ると想像できる重傷者が数名、討伐成功とは胸を張れないセシリア騎士団隊長のナイツ。


 医療棟へ怪我人を運び込み、医療主任へ治療を托した後、身支度を調え領主の公爵さまへ討伐報告。

 応対にでた執事より、公爵さまは娘のセインさまを伴い外出中と聞き、公爵さまへ伝えると言う執事へ報告後、セシリア騎士団の隊長室へ戻ると。


 前セシリア騎士団隊長のガーデナーがソファーにドンと座り、隊長側付きの少年が出したお茶を飲んでいて

「ナイツ、公爵さま、お屋敷におられたか?」


 ナイツは、公爵家の庭師をしているガーデナーが急遽討伐隊に加わってくれたので、被害が少なく済んだと感謝を。

 ただ、怪我で剣の扱いが鈍ったと退団したのに、討伐の前から稽古だと公爵邸に呼び出され、以前と変わらぬ剣の扱いに驚かされていたのです。


「セインお嬢さまを伴って外出されていました」


 外出中、それも、お嬢さまを伴ってと聞き安堵の表情を見せるガーデナーを不思議に思うナイツ。


 ナイツを次に待つのは、治療の甲斐無く世を去っる部下の親族へ行う死亡報告。

 少なくとも4名の親族宅を訪問する必要があるだろうと、お茶を入れていた側付きの少年に、重傷者の名前を伝え親族が住む場所を調べておくよう指示、少年が部屋を出て扉を閉めると。


 馬車から零れ聞こえる呻き声、討伐成功とは思えない雰囲気だった帰還の道中に、医療棟で怪我人を見た医療主任の、何故楽にしてやらなかったんだと言いたげな視線を思いだし。

「ガーデナーどの、どうして助かる見込みの無い者まで連れて帰るよう言われたのですか?」


 ガーデナーは、自身への癒やしと、メイド長の怪我が癒やされたのを知っていたので、公爵さまが被害の状況を知れば、セインお嬢さまの癒やしを施して頂けると信じ、助かる見込みが無い者は苦しまずにとの話を否定し、急ぎ連れ帰ったのでした。


「公爵がお嬢さまを連れて外出されてたのなら、そろそろ奇跡が起こったと報告が来ると思うぞ」


 ナイツは、意味不明な返答に困惑。


 ナイツが奇跡を目にした時の驚く顔を見たいと思いながらも、知っていたのかと追求されたら面倒だと、奇跡の知らせが来る前に、重傷者を連れて返った理由を遠回しに話し、引き上げることにしたガーデナー

「側付きに調べるよう言った、重傷者親族の住まい確認は不要になるからだよ」


 ソファーから立ち上がり

「庭師に戻るは、ナイツ、今夜は安眠出来るぞ」


 ガーデナーが部屋を出て行き扉が閉まると。


「安眠できる訳が無いだろう! ドカーーーン」


 ガーデナーは、ナイツの怒りの叫び、机を蹴ったとおぼしき音が聞こえて来たのも気にせず廊下を歩いて行くと、血相を変え前から走ってくる医療主任とすれ違い。

「やはり今夜は安眠出来そうだぞ、ナイツ」


 ガーデナーの代わりに、ノックもせず入って来た医療主任から、医療棟へ行けと息絶え絶えに言われたナイツ、何事かと急ぎ向かった医療棟、中に入り、重傷者がいるはずの一角にスヤスヤと寝息を立てている団員を見て「団長、皆、助かりました」と聞き、その場に座り込み、「何があった!」と問うと、静まり返る医療棟。


 戻って来た、医療主任が「奇跡が起きた」と医療者達に代わり答えると、「神はいたのか」と呟いたのです。



 翌日、酒場でナイツとガーデナー


「叫んで否定していたが、昨晩は安眠出来ただろう」


 ニヤニヤしながらナイツにガーデナーが追い打ち

「医療棟で神はいたのかって呟いたんだって」


 ニヤニヤしながらナイツにガーデナーが更に追い打ち

「神の正体を聞いたんだよな」


 出された酒に口を付けていないナイツは、飲み屋での会話とは思えない真剣な顔で

「セインお嬢さまはセシリア騎士団の女神と成りました」


 ニヤニヤした冷やかし顔だったガーデナーも、手に持っていた酒の入った木製カップを置き

「俺の左手を癒やしてくれたのもセインお嬢さまなんだよ、公爵家内には他にも色々と癒やしを受けた者がいるが、口外許可が出て無くて話せなかった」


「女神は癒やしの発動後、お倒れになったと聞いたのですが?」


 公爵に抱きかかえられて戻ったセインを見て、公爵邸は大騒ぎだったのです。

 特にシドニーにシンシアとエイミーの悲鳴は公爵家を振るわせたと揶揄されるほど。


「心配ない、今日も女神は公爵邸の庭を走り回っていた」


 安堵の表情のナイツは木製カップを持ち

「騎士団の連中と医療棟の皆に伝えておきます」


 酒を酌み交わす2人、ナイツが

「セインお嬢さまを描いた絵が欲しいのです」


 抱いて寝るのかと、からかおうとしたガーデナー、真顔のナイツを見て

「依頼はしてみるが期待するな、欲しがっている者は大勢いるんだ」


 公爵家の者は、毎日お会い出来るのだから良いだろうと思うナイツ。


 ナイツの奢りで、その夜は酔いつぶれたガーデナー、お嬢さまを描いた絵のことを、すっかり忘れていて、ナイツに怒られるのは数日先の話。

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