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クズの生命

作者: ノロ

時々、どうしようもなく自分が人間であることが億劫になる。


他の人間を観れば見る程、自分がどうしようもなく努力することを諦めた人間以外の何者かなのだと感じることがある。


夢を見たこともあった。しかし、それは遥か遠く……いつの間にか興味を失くした。


ある日、この世の何物にも価値は無いのだと気付いてしまった。

音楽なんて、聴覚から取り入れる情報に過ぎないし。文学なんて人が意味を定めた記号の羅列に過ぎない。

表現なんて、酷く面倒で必要のないことだった。


…どうして生きているのか。味がしない飯、物事に対する欲求すら徐々に消え失せてく。


生きていなくていい、死後が怖くて…その延長線を歩き続ける。


平凡に生き続ける誰かを見ると劣等感で胸に酸素が足りなくなる。

そして、部屋に閉じ籠って…安寧を享受しながら、それでもこの安心感は他人がこの世界に存在すると知っているからこそだと解っている。


疲れた…もう呼吸をしなくてもいいか?


自分自身に問い掛ける僕は、今や僕自身がどの座標に居るのかさえ判らない。


やがて焦りも消えて、虚無へと堕ちて…堕ちて…堕ちて…


その先で…


僕は諦め、そして自分自身を知った。


生きたいと思った、生きなきゃいけないと思った。


身体はやつれ、脚は痩せ細り、気づけば若さを喪っていたとしても。

自分の手に残る記憶も、技術も、知識も、僅かながらにしか遺されていなかったとしても。


僕は心から自殺に走れる他者を尊敬した。

平凡以下の僕には足りない勇気を彼等は持ち合わせていたのだから。


僕は弱虫で劣等な他者にも劣る劣等種。

努力なんてどこ吹く風で、そのくせ他者の才能と努力には敏感な自己愛の塊だ。


だけど、それでも僕は自分という存在が消え失せるのが怖くて仕方なかった。

痛みや苦しみを受け入れる勇気がなかった。


だから僕は今此処に居る…

居るだけでいい…


生きていていい?

生きていて良い。


不確かな世界には、命以上に価値あるものなど存在ないと僕は知っていたから。

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