対面
お父様の処刑が終わり、その後すぐに鎖をつけられて、親衛隊へと引き渡された私は戦争の最前線の上空へと連れてこられた。
「じゃあな、元聖女様!
最後に俺たちのために役にたってくれくれよな!!」
「手ぇ抜いたりしたら、大切なお母様がどうまってもしらねぇぞぉ」
そういって下品な笑いを隠そうともせず、私をドラゴンから突き落とした、国王陛下直属の親衛隊。
悔しくて、悔しくて、悔しくて、悔しくて、悔しくて…!!!
でも、お母様を見捨てる事なんてできるはずもなくて。
唇を噛み締めた、血が出るほど強く…。
あの時、嬉々としてお父様の首を切り落としたアストラ様の顔を、それを歪んだ笑顔で見ていたアマリア様を、長年国のためを国民のためをとはたらいてきたお父様をあざ笑った国民を…!!!
私は絶対に許さない、どんなことをしても生き残り、あの国に、人々に復讐してやる…!!
たとえ、この戦場にいる全ての人間の命を奪ったとしても!!
だんだんと迫り来る、大地。
そこには、敵国の兵士たちが規則正しく隊列を組んでいるのを見て取ることができた。
『何者ニモ捕ラワレヌ風ヨ、我ガ身二宿レ』
私は落ちていく体に風を纏わせ、空中で地上に広がる大軍団を眺めた。
ヴァーファイト帝国の軍事力は大陸最強。
攻め込まれたら、ニルヴィルはひとたまりもないだろう。
もう、母国に対して情も沸かなかった、むしろ滅んでしまえとすら思う。
しかし私がここで彼らを止めなければ、お母様の命も奪われてしまう。
私は意を決して息を吸い込んだ。
聖女としての力は失ってしまったけれど、まだ魔法は使うことができる。
これ以上、私の大切な物を奪わせてなんてたまるものか…!!
『…母ナル大地、我ガ魔力ヲ糧二敵ヲ滅セ』
私のその声に呼応するように、大地が割れ敵国の兵士を飲み込んでいく。
突然の地割れに、叫き立てる声が聞こえる。
助けてくれ、死にたくない、走れ、兵士たちの声が私の耳にこびりつく。
「…っ」
…目を反らすな、私がやることから、これから私が奪う命から私が目をそらしてはいけない。
私は自分のエゴのためにこれからもっと沢山の命を奪うのだから。
『母ナル大地、我ガ魔力ヲ捧ゲル。有ルベキ姿二戻レ』
地割れが全ての兵士を飲み込もうとしたとき、突如として元の地形へと戻っていく。
…敵国にもなかなかの魔法の使い手がいるらしい。
しかしここで引くわけにはいかない。
『母ナル大地…』
次いで言霊を呟こうとしたとき、
「それ以上言霊を紡いでみろ、貴様の首を捻り潰すぞ」
「ぐっ…!!」
耳元で声がした、と同時に首を締め上げられた。
「お前は…、ノア・ミルミット…?」
少しの驚愕を含んだ声。
私の首を締め上げていたのは、ヴァーファイト帝国、皇帝。
ギスラン・ヴァーファイトだった。