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探偵と盗賊

 行方不明、という扱いから考えて誰かが届けでも出したんだろうか。先輩の仕業と言う可能性もあるかもしれない。


 ドラゴンがペットになったんだが登録などは不要なんだろうか。門番のおっさんに酒でも奢って聞いてみるか。


「仕事の後に行くなら酒場、かな?」


そう思い酒場へと向かうことにした。


 肉が中心の食事も悪くはないが数日続くとどうしても和食が恋しくなってきてしまった。せめて、味噌汁が飲みたいと思ってしまう。まるで数日間海外に旅行で訪れた人の気分のようだ。


俺は旅行者かよ。そう思って苦笑した。


「ああ、いたいた」


探していた人物は案外すんなりと見つかった。


 元の世界での仕事も毎回こんなに楽だとよかったんだが。しかしそうはいかないのが現実というものである。


少し泣きたい。


「おお、あの時のやつか」


 どうやら覚えていてくれたようだ。とはいえ、不審者と思われるような恰好だった為に記憶されたのかもしれない。


そうだとしたら落ち込むが。


「ええ。あの時は助かりました。聞きたいこともあるので一杯奢らせてください」


「それはいいが、金はあるのか?」


 以前現金を持っていなかったから気になった、というところだろうか?


「偶然持っていたものを売ったらいい金額で売れまして」


「ほう。で、さっきから気になって仕方ねえんだがお前さんの肩に乗っかってる小さいのはペットか?」


「懐かれてついてきたのがペットになりましてね」


まさか小型化するやつがいるとは思わなかった、と心の中でそっと呟いていた。


「そうか。餌代もいるよなぁ」


「それも含めて仕事が欲しいんですけどね。あまり仕事が回ってこなくて」


 就職難というやつだろうか。この世界も不景気なのか、なかなかお鉢が回ってこないというのはもどかしい。


「ペットは所有者がわからないと揉めごとになることもあるからなぁ。首輪でも付けてりゃあまだいいんだが」


「位置がわかるような首輪、ってないんですか?」


 GPS機能のようなものがあるなら欲しい。


「そういうのは悪用されるか秘匿されるか、だな。あったとしても一般人にはなかなか手が出ねえ」


「そういうものですか?」


「そんなもんだ。そういや、知ってるか?ペットを盗賊どもが奪って売られるってのが最近じゃ多いんだとよ」


「いえ、知りませんでした」


金品ではなくペットか。ある意味面倒だ。世話などにも金がかかるはずだがそこは利益の方が大きいのだろう。


「気を付けろよ?あいつらは物としてしか見てねえからな。油断してるとみると奪ってから裏で競りをして流してるからな」


「なるほど。オークション、ですか・・・。表には出せない盗品だから裏で、という考えはわかるんですが。そんなに売れるものなんですかね?」


 場所などを提供する協力者でもいるのだろうか。というか、そこまでしてでも欲しいのか、と呆れる。


「状態がどれだけいいか悪いかや珍しいものかどうかで価値が随分と変わるってぇ話だったな。それぐらいか」


「どうも教えてくれてありがとうございます」


そう言って門番のおっちゃんに頭を下げる。裏の情報までは集める機会も余裕もなかったからな。裏のことをどうやって知ったのかは気になるところではあるが。


「そう気にすんなって。また飲もうぜ」


「では、また」


そう言って別れた。


 首輪、と言ってもここは異世界。効果が付いたものやモンスターの皮で出来た物など様々だった。その中でシンプルな赤い色のものを買って店を後にした。


気に入るかどうかはわからないが。


 早速、ペットに首輪を付ける。嬉しいのか小さな翼をパタパタと動かして飛び回る。ほこりが辺りに舞いそうで少々困惑したが。


何処かに掃除機でもあれば買いたい。


 ギルドまでペットとして連れて行けばその子可愛いですね、と声をかけられるようなことが多発した。


「わー、小さくて可愛いー。触ってみてもいいですか?」


「ええ」


そう言ってから頷き肯定の意を表す。


「おい、そいつを寄越せ!!」


急な大声に驚きつつ様子を窺うことにする。


「幼竜は珍しいからな。きっといい値でさばけるだろうよ」


 今の言葉から考えると相手は子供のドラゴンだと思っているのだろう。思いっきり馬鹿にしてやりたい気分になる。


「傷つけない、と約束出来るのなら」


そう言ってあえて俺はこちらから差し出す。


 予想外の反応に相手は唖然としながらも受け取り、気づいたときには姿が見えなくなっていた。


「抵抗しなかっただろ。策でもあんのか?」


 近くにいた男性に話しかけられた。ギルドに居て防具を身につけていることから察するに、この人も冒険者なのだろう。


どうやら、先ほどの一部始終を見られていたらしい。その問いに俺は素直に返すことにした。


「一応は」


「なら目的は」


「泳がせておこうかと」


「過保護なんだな」


「そうですかね」


だとしたら意外と愛着がわいていたんだろう。自覚?そんなものはない。




 ギルドから離れた場所にある、薄暗く湿っぽい人通りもあまりない場所に数人の男達が集まっていた。そのほとんどは盗賊である。


「よくやったな。上出来だ」


そう褒められて男は思わず笑った。ここにいるのはこの後どうなるかさえ考えてなさそうな屑ばかりだ。


「おやおや、これは珍しい商品ですね」


よほど興味があるのか積まれた荷のうちの一つを商人はじっと見つめる。


「ああ。こいつが持ってきた」


「では、普段通りに」


「わかってる」


二人の会話は短時間で終わり、商品を指定された所へ運ぶために男達は黙ってその場をあとにした。




「おーい、居るか―?」


 昨日の今日でまだ泊まっている宿を教えてもいないのに朝っぱらから門番のおっさんが訪ねてきた。誰から聞いてきたんだか。


「あ、はい」


「邪魔するぞ」


「どうぞ?」


と俺が言うよりも早く部屋に入られた。解せぬ。


「さて、ペット探しだったか」


「何かわかったんですか?」


「ちょっと昔のよしみで、な」


「・・・?」


昔の、というあたりからして前の仕事の関係だろうか。おっさんの謎である。


「無傷で捕まってるってよ」


「複雑ですね」


「そこは喜ぶところだろ?」


と苦笑しながら言われた。


「それで何処ですか」


「根城から離れた建物にいる、ってことぐらいだな」


「貸切か人払いを済ませておくか、だと思ったんですが」


足が付きにくそうだしな。


「パーティーだとさ」


「ああ、なるほど」


それなら大勢に紛れて逃げ出すことぐらいなら出来そうだ。


「文句なら犯人に言えよ?」


「勿論。ただでは済ませませんけどね?」


 客に混ざって入り、取り押さえて奪還という筋書きだ。ただ、俺はそれだけで済ませるほど優しくはないが。

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