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暇人魔王

 「…暇だ」

 執務室には、我とスライムしかいない。ほかの者はみんな何かしらのところに出かけている。カルドは訓練室に、エルはオルのもとで実務などの勉強を、リーンとエスは城下で菓子の食べまわり。

 暇で執務室にいる様なのは特にするようなことのないスライムと我程度。


 

 

 スライムはリーンやエスが執務室に用意したその名もスラちゃんの家なるものを与えられており、そこでくつろいでいた。机に肘を突きながら、ただただスライムの様子を眺める。

 家といっても普通の家の様ではなくまるで小動物の遊び場のような、物もついておりスライムは自身の身体を分裂させ様々な動きをしている。

 

 

 

 「スライム…それは楽しいのか?」

 するとスライムは一つに集まって身振りで説明を始める。その姿がとても面白く笑いがこみ上げてくる。どうにか抑えようとしていたのだが、笑いを堪えているのがわかったのか、スライムはそれが面白くないのだろう急に不機嫌になる。

 ぷりぷりとすねるスライム…、少し可愛いと思ってしまった。

 

 

 





 しばらくして、エルが執務室に戻ってきた。

 「休憩か?まあなんでもいいから、コウ茶を淹れてくれ。」

 エルは、両手に持っていた勉強に使っているのであろう資料をテーブルの上に置き執務室の一角にある給湯部屋でコウ茶の準備をしている。因みにコウ茶とはアイルクリームと同じ魔王が作り出した飲み物の一つらしく五魔族連合王国内では庶民でさえも手軽に飲める飲み物の一つだ。

  

 

 どうぞ、とエルはコウ茶を我の前に置く。スライムにもちょっとした菓子を与えるエルは自身も休憩するのか、コウ茶を飲む。

 「エル…どうだオルの下で学んで…いやいい今のは忘れてくれ」

 言いかけてからだがそんな心配は無用だったと気づく。エルは我から生まれた存在我が生み出した存在、ましてやそんなエルを教育しているのはオルだ、魔王不在の間この国を守ったのは紛れもなくオルの存在も数に入ることだろう。

 それ程のものから学んでいるエルに心配など不要、そんな心配などむしろオルに対して不敬に値する。




 『お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です、いづれあなた様を支えられるようになるために毎日学んでおりますので』

 エルはコウ茶をそっと置き立ち上がる。その立つという動作だけでも気品が感じられた、オルの教育のたまものだろうか。

 『それでは失礼します、まだ授業の続きがありますので』

 そういうとエルは執務室をまたたくさんの資料と思しきものを両手に抱え出て行った。

 


 このまま夕食の時間までスライムと過ごしていてもつまらない、それならエルについて行っていった方がまだ暇がつぶせそうだ。

 「スライムは来るか?」

 スライムはジェスチャーで同意を示す。スライムを肩に乗せエルを追う。



 「エル、その書類少しもとうか?」

 すぐにエルに追いつき持っている書類を渡すように手を差し出す。スライムも体の動きで手伝う!!みたいなことを言っている。そのスライムの動きが面白かったのかエルは笑みをこぼす。

 『お気持ちはありがとうございます。ですがさすがに魔王様に荷物を持たせるのはあまりいいものではないので。あと、スラちゃんも気持ちだけ頂きます』

 


 やんわりと断るエルだが、まあ言われてみればそうだろういくら四天王とは言えど主であるものに荷物を持たせたら周囲の目が黙っていない。

 「そうか、ならばついて行ってもいいか?」

 少し…興味があってな、と付け加える。

 『そうですか、ならおとなしくしていてくださいね。私がオルケイン様に怒られるので』

 

 

 

 スライムと我はエルにそのままついて行きオルとその部下が事務処理だろうか仕事をしている部屋にきた。オルとその部下達は我に気づいて挨拶をしてくる。

 『これはこれは、魔王様いかがなされました?』

 「たいしたことではない、ただエルについてきただけだ。いつも通りにしていてくれ」

 いつも通りに、といっても主がいる前でいつも通りにはなかなかできるものではないだろう。言葉にしてからわずかながらの後悔をした。


 

 しかし、さすがはオル、短い付き合いなはずなのに我の真意に気づき早速我を空気扱いし始めた。はじめのうちは部下達も戸惑っていたようだが、慣れてしまったのかここに来てから数十分が経つがすでに空気扱いである。

 淡々と書類の整理をする部下達に交じりエルもオルの指示を聞きながら書類の整理をこなす。その姿はとても様になっていた、こんなこと言うのもおかしいようだがまるで初めからそこで働いていたかの様な働きだ。四天王は我直属の部下でもあるが同時に家族の様な存在だと思っている。だから素直に家族が働き認められていると思うとうれしいものである。

   



 オル達の観察を始めてから数時間程経ち、我は気が付いた。これ…執務室に居ても変わらなくね。絶対楽しくないよな…。

 「オル…そういえばそろそろ一か月経つが何かすることがあるか?」

 オルは少し考えるそぶりを見せてから二つ提案した。

 『そうですねぇ、魔王様の四天王のレベル上げとあとは…それならおとなしくしていて下さい』

 出された提案は実質一つだけの様だ。後者はただのオルの願望だろう。

 『付近に古代遺跡があったのでそこでレベル上げなどどうでしょう。あそこは魔物が多いのでどうでしょうか』



  


 魔物とはこの世界においてだが、一般に理性の無い魔素に魔力に飲まれたモノの事を指す。魔素とは、空気中に存在する魔力の最小単位だ、暗い場所や、深い林、洞窟、古代遺跡などに魔素はたまりやすい。魔物の発生条件はいくつかあり、自身の魔力に飲まれ魔物になる場合。濃密な魔素だまりで魔素に当たり続けた動物、植物などが魔物になる場合。何らかの条件を果たすことで魔物になる場合。

 という図書館で読んだ本の内容を思い出しつつ、確かに古代遺跡なら適しているだろう。

 「わかった。なら明日にでも行ってくる」  

 

 何もしないよりは楽しめるだろう。我とエスがついて行けばもしもなんてことは起きないだろう。今後何があるかわからないからレベル上げは早めにしておかねばと思っていたからちょうどいいだろう。  

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。次回は8話ができ次第投稿いたします。


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