プロローグ
つまらない………つまらない………つまらない…
何故こうも世界というものはつまらないのだろうか…
勇者として召喚され魔王を倒せと命じられ、倒したかと思えば今度は我を殺そうとする。
睡眠の邪魔になるから皆殺しにしてみれば自分は神だとか言う訳の分からん奴が現れ、お前を神にしてやるとかふざけた事を抜かすから殺したら人々は我を魔神と呼び恐れた。
つまらなぬ、なんとつまらない世界だろうか………
この間暇つぶしにどこかの宗教の神になったりもしたが最高司祭が裏切って殺しにかかったから皆殺しにしたのだった。
『カイザー、今日は何して遊ぶかい?』と、よく響くソプラノの声のする方へ視線を移す。
「なんだい、エス、この間神様遊びしたばかりではないか」と、オッドアイの白髪のフリルのついた黒を基調としたワンピースを着たロリに答える。
ちなみにエスというのは、適当に我がつけた名前だ。
まあ、そこら辺の話はまたいずれ…………
「……………様…………様…………イト様……カイト様…………起きてくださいカイト様」
なんだ、夢か……
『おきろよ!おい!まだ、こんな所でくたばるなんてオレが許さないぞ!』
ああ、もううるさいぞ!我はもう眠いのだ……
「「……………様…………イト様…………」」
ああ、声が遠のいていく、これが死ぬ時なのだろうかしかしこれは夢……最後我の名前を呼んでいたのはだれだろうか……
『………、……ザー、…………カイザー、起きてカイザー』
誰だろう、いや、これは聞きなれたあの声。
そこで我は目を覚ます。
「なんだ、エス」
『朝ご飯だよ、準備が出来たから食べよう?』
「…………分かった」
朝食はいつもエスが作る。いつからかそういう決まりになった。もう、我らは食事や睡眠などをしなくても生きる事が出来るが、しないと、どこかおかしくなるから続けている。
「なぁ、エスよ」
『なあに、カイザー?』
「1つ提案なのだが…………異世界に行ってみないか?」
『………うんいいよ、もう決めたんでしょう?』
「ああ」
『じゃあ、何処の世界に行く?』
「……………、それについては見当ついている」
「今回は魔王になろうと思う」
『…………それで?』
「…………………………」
どのくらいだろうか長い沈黙がこの空間を支配する。
『まあ、言いたくないなら言わなくてもいいわ』
「…………………………すまない」
『じゃあ、この世界はどうするの?』
「…………………………」今度も沈黙。
「誰にも干渉出来ないように結界を張る。そうすれば問題ないだろう。」
『あなたがそれでいいなら任せるわ』
…………………………………………
『カイザー準備出来たわよ』
「ああ、ありがとう、エス」と笑顔で言うとブツブツと「あの人付き合いスキルゼロのカイザーがありがとうだって?」だの「あの笑顔………凶器だわ……」など微かに聞こえているがそれをスルーして、
「エス、いいかい?」と聞くと、
『ひゃ、ひゃい!』などとかえってくるものだからつい笑ってしまった。
エスは、わ、笑うなー!!!とか言いつつその小さな身体の小さな拳をぽかぽかしてくる。
ボカボカではないまさしくぽかぽかとしか言いようのない殴りだ。
ジーーーッと言わんばかりの視線を立ち直ったエスが向けてくる。
「悪かったってな?」と謝るもプイッと顔を背けてしまう。
はぁー、少しやり過ぎただろうか。これは、向こうの世界でご機嫌取りしないとな。
「行くぞエス」まずは結界の作成からだ。その後新世界に旅立つ。
辺りを静けさが包み込む。
「魔神たるアスタルテ・カイザーが命ずる。魔神の加護を元にこの世界を守護する結界を今ここに」
…………ふう、上手くいったな。
さて、次は………。
「エス、いいか?」
『ええ、カイザー』
「我、勇者であり、魔神であるアスタルテ・カイザーが命ずる!世界の理を読み解き、異界への扉を我に示せ!!!」
すると、光が輝き無数の扉が現れる。
扉にもさまざまなものがあり、どれも楽しそうではあるが今回の目的にはそぐわないため、目的の扉を探す。
中でも、一際輝きを放つ扉をエスが見つけたので褒めてやると、恥ずかしいのか顔を背けてしまう。
「じゃあ、行くぞ新しい世界へ」
『ええ、カイザー』
そうして、我らは異世界へと旅立った。
昔、昔、身勝手な王族に召喚された勇者は身勝手な王族を皆殺しにし、世界の全てを手に入れ神、魔神と恐れられました。
その後魔神となった若者は神の住まう天界へ行き二度と姿を表しませんでした。
その後、若者がどうなったかそれを知るものは誰もいませんでした。
若者が身勝手な王族を皆殺しにして平和な国を創ったお陰で世界は平和になりましたとさ………………。
……………………おしまい。
ここまでお読み頂き有難うございます。ストックが尽きるまでは三日に一話投稿で行きます。それ以降はどうなるかわかりません。