峠の攻防 VS狼(魔狼) その③
魔狼の目的はあくまでも荷物の様で!?
その狼達の色は先ほどぶっ倒した狼達とは明らかに異なっていた。
元の狼達が淡い枯草色ならこちらは灰色でしかも身体のあちこちの体毛が
より濃くなって斑に身体に纏わり付いている様な感じである。
(むぅ。『魔力感知』の類いを持ってる様じゃな。『鑑定』が旨く出来ん)
5匹は誰を襲おうか考えあぐねている様でグルグルと右回りに回ったり左回りに
回ったるしてはこちらの隙を伺っている。
「ギャルオゥ!」ミラが威嚇も兼ねて火炎玉なブレスを一匹に吐いたが
ひょいん。と余裕で避けられてしまう。
(狼の背後で焼け跡が焦げてる様じゃが燃え広がらない所を見ると
手加減はしとる様じゃな。じゃが向こうもそれを読んでるみたいじゃし・・・)
燃え方で余り全力は出せないと踏んだのであろう。
その『魔狼』がミラにちょっかいを出して来た。「ギャルオゥ!」ボフン!!「ギャィン!」
うん、アホや。火力の調整なんぞその場その場で変化させれば良いだけの事。
いざとなったら避けようという意思すら無く突っ込んで来たその『魔狼』は
火達磨になって転げ回り、急いで火を消しつつグルグル行動に復帰する。
(ん?今のはワザと当たったのかの?成程。『魔力操作』で身体を固くして燃えにくくしてると。)
若干涙目な様だが焼け焦げ掛けた身体を引きずりつつ、こちらの防御壁な陣形を解こうとしてくる。
「気を付けて!前に出過ぎると荷車が襲われちゃう!」と上空からのヒューイからの
『念話』でアンヌも向こうの意図に気づく。
『MAP』よろしくヒューイの鳥瞰なら向こうの陣形も分かりやすいじゃろうからこういう時には有り難いの。
(しかしやはり狙いは荷車の荷物か。まぁヒトなんぞ襲って喰っても得られる物は少ないじゃろうしな。)
と目の前を通り過ぎていく『魔狼』の一匹に首を向け『鑑定』を掛けてみる。
(くふふふ。ナマモノと違って首の筋痛める心配もないし、今度はどうじゃ!)
魔狼 HP100/100 状態:腹減。****の指揮下にある。
:森林狼が森の魔物化しつつある動物を食べて『魔力操作』を覚えた存在。
苦手だった火系の攻撃に対して若干の耐性を持ち群れを成して行動する。昼間も出没する。
(おうふ。ボスの情報も若干漏れてる様じゃが向こうが格上かー。
まぁ2年もほっとけば育つよねぇ。そりゃ。向こうだって生きてるんだし。)
そうこうしている内に向こうもやり方を決めたのか1匹が一番弱そうなミィナに向かって行った所を
私がフォローしている内に1匹が土台となって2匹目がそいつを踏み台に飛び荷台に飛び乗ってしまった。
「ひぃ!」と怯える御者の犬耳のおっちゃんを後目に荷台の荷物の一つを的確に選び出すと
叩き落そうとするキィーロやらの手を掻い潜って何処かへと持ち去ってしまった。
そんなん手もあるんかぃっ!と思わず心の中で突っ込みを入れつつ防御を固めなおす。
その1匹が森の中に消え去るとほぼ同時に補完用の狼が2匹が現れグルグル行動に加わった。
あのブレスで焦げた狼も入れ代わりに去っていく。
『MAP』上からも急速にこの場から離れていく2つの赤い点。残りは八匹か。
グルグル戦法で相手の動きを封じつつ隙を付いて物資を奪う。戦略の一つとしては間違ってはいないのでしょうが彼らは一体何を狙っているのでしょうか。次回で一応戦闘は終了します。




