迷走するモノ
人選ミスなのかあるいは・・・
二人から事態を知らされたリーナの顔が呆れ顔になるのに
そんなに時間は掛からなかったと思う。
そりゃそうじゃろう。やってもいない仕返しだかをやった事にされてたりするんじゃ。
「いろいろ突っ込みたい所けど、まず関係ない本・・・って多分アレの事だよねぇ?」
と溜息交じりに告げたのはメッタメタにされた教科書の事じゃろう。
修理が終了するまでにそれを包装していた地味な本カバー。
それが装着されていた期間は短かったし、中身が教科書なのは本人が良く知っている。
何より授業中に生徒の間を歩いている先生がその教科用の本であるかどうか
見抜けない程目が腐ってるとでも言いたいのだろうか。その噂を流した者は。
「というかあの包装をしてたの知ってるヒト自体少ないと思うんだけど。」
とミィナも当時を思い返しつつ呆れてる。
「泥を塗りたくるのだってあの量じゃリーナ一人で朝一からじゃとても無理だしねー」
とアンヌもコクコクと頷いている。
召喚魔方陣の事故に至っては既に学園側のみに罰が下っているから
今更それをひっくり返す事なんぞ不可能じゃ。下手すると調査官のお怒り買うぞ?
雄牛の牛舎の門扉の破壊なんぞ、距離的にも時間的にもさらに云えば
リーナにそれをやるだけの理由すらない。
能力的にはミラの力借りれば不可能ではないじゃろうがな。
それらはミレーヌ様とてほぼ同様の理由で無理がある事は明白じゃな。
下の者、例えば『影』とかメイド・・・
そうか。メイドか。本人がやらなくてもお付きの者に遣らせてれば
ミレーヌの不在証明がなされててもやる事は不可能ではないじゃろが、
それをリーナが知ってミレーヌ自身に嫌がらせ仕掛けてるじゃと?
そもそも誰がやってるか分からんのに何故首謀者がミレーヌだと分かるんじゃ?
今度の事態の犯人は明らかにミレーヌとリーナに疑惑の目を向けさせ様としておる。
じゃが、穴だらけじゃな。学園の警備用システムすら把握してないかもしれん。
もし仮に悪戯やなんかに魔法使ってたりしたらほぼアウトじゃろうよ。
「にしてもミレーヌ様周りに悪戯とか良くやる気になったわね。犯人。」
とリーナも呆れ顔じゃな。
「んー。そこはほら本人自身がやる必要は無いんだし。」
とミィナもそちらの可能性に気が付いたのか口を挟む。
「え?あ、そか。ミレーヌ様にこっちがそういう風にしてるって思わせたい可能性もあるって事よね?」
とリーナが考え込んだ。
そう。今度の事態の犯人はそこまで考えてやっている可能性すらあるんじゃよな。
じゃが犯人が見落としている部分もある。まず二人の性格。それぞれの立場。
ミレーヌ様は一介の貴族じゃぞ?一介の一般女生徒でしかないリーナに何故絡む必要がある?
竜の雛持ちだからか?そんなの懐柔すればいいだけである。なんせ向こうの方が立場が上なのだから。
わざわざ学園に居る手の者の手を煩わせてまでやる様な事では無いんじゃからな。
ホント何をしたいんじゃろな。この犯人は。
「とりあえずワタシは今まで通りクエストに出まくる事にするわ。
そうすれば犯人も学園内で何か仕掛ける機会をその分失う事になるんだし。」
とリーナが顔を上げる。
どうやら主人公補正とか利用して犯人を学園から引き剥がす心算の様じゃが・・・
ミィナとアンヌが渋い顔をしておったのは言うまでも無い。
次回は戦闘シーンに突入予定です。但しソラは出番なし(ぇ。




