噂と不在証明
かすりもしないモノ
その話はミィナの横で聞いていても今一納得出来ないものばかりだった。
曰く- 荷物入れに泥を塗りたくったのはリーナ自身である。とか
曰く- 授業中にカバーを掛けた関係ない本を読んでいた。とか
曰く- 召喚魔方陣の爆発未遂事件を仕掛けたのは彼女自身である。とか
曰く- 牡牛の牛舎の門扉をぶっ壊したのは実は彼女である。とか
聞いてるだけでもうんざりする様な話ばっか。
しかもよくよく聞いてみると低学年の女子生徒の間で
こそこそとささやかれている類いのものらしい。
今の処はリーナへの実害は出ていない様だがこれは放っておく訳にはいかないだろう。
アンヌがそういう情報を掴んだのは彼女なりの情報網の中からそれとなく進言されたからとか。
「今はまだ単なるやっかみみたいなモノから来てる物だと思うんだけど、
なんかやり方が段々露骨になって来てるというかそういう話が故意に広げられてるみたいなの。」
とアンヌが難しい顔をして説明する。
「そんな。それって女子間の話じゃ終わらないよね?
あたしもキィーロ君やクィナ君にも聞いておいた方がいいかな。」
とミィナも不安顔になる。
ちなみに学園の学生寮は男女別なので、それはひょっとしなくても男子寮の方でも
同様の話が広がり始めている可能性があるという訳じゃな?
「うん。そうしてくれる?わたしだけじゃ限界あるし、ミィナが協力してくれると助かるわ。」
とアンヌも一息付いた様。
「それにしても、さっきの生徒会会員の子、何怒ってたのかしら。リーナ関係の話だと思うけど。」
とミィナが首を捻る。
さっきの話の内容の事で生徒会が巻き込まれたにしては怒り方の方向性が違う気がする。
今日ミィナが校内クエストに出てないのは道具の手入れやら室内の掃除をやっていたからなので
ミィナが部屋に居る事までは知っていた様ではあるがの。
「あ。そうそう。それなんだけど、どうもミレーヌ様周りにも嫌がらせが発生してるみたいなのよね。」
と連れて来たヒューイを見やる。
ん?何故ヒューイを見る必要があるんじゃ?
「ヒューイは知っての通り鷹系でしょ?貴族クラスの子にも割合人気というか
放牧所で良くモフられてるのよね。その際に聞き齧った噂なんだけどさ。」
とアンヌも困惑顔。
放牧所・・・。『召喚獣』とかの遊び場というか見せあいっこ場みたいなモンじゃな。
複合型ドッグランみたいな施設で私も時々連れて行って貰っておる処か。
「その噂によるとさっきみたいなリーナへの嫌がらせは
ミレーヌ様がやってるんじゃないかとかいう話が出始めてるみたいなのよ。」
ぶ。それってひょっとしなくても乙女ゲー部分でのフラグ関係の話じゃな?
「へ?」とミィナの顔が埴輪みたいな点の顔になる。
あのミレーヌ様の性格からしてそういう事をしそうも無い事位は
ミィナでなくても分かりそうな物なんじゃがな。
「んで、リーナがそれを知って今度はミレーヌ様に仕返しをしてるんじゃないかって。」
なんじゃそりゃ。荒唐無稽な話もいいとこじゃな。
ははぁ、今日もミレーヌ様の周りで何か起こってリーナの姿を観たとかいう証言が出たのかの?
じゃが残念じゃったな。一度クエストに出てしまえば門番たるゴーレムが記録してるから
まだクエストから帰って来てもいないリーナに悪戯とか嫌がらせが出来る訳が無い。
つまりその証言者はそのものが嘘であるという証拠を証明されてしまったも当然という処かの。
今頃そやつはどんな言い訳を言い繕ってるかのぅ・・・。
リーナがクエに出ているのはそれが趣味だからで前世知識でフラグ回避とかしている訳ではない筈。
リーナ「うーん。ソラ用の強化アイテムとかどうしよう。」




