魔属のヒト
学園内に渦巻く闇の中に光が生まれるまで
きっかけは他愛もない呪祖だった。
ヒトというものは些細な違いでも相手を羨みまたは蔑む。
きっとその女生徒も自分がいい『召喚獣』を手に入れられなかったとか
貴族な暮らしにうんざりとしていたとかそんな事でだったろう。
泥を塗りたくったり教科書をメッタメタにしてみたり
いくらやっても相手はそれを意に介しないし、自分も気が晴れない。
それはそうだろう。実際にやってるのは自分では無く
命令を受けた唯の可哀想なメイドだったのだから。
かつてミィナが犯人を割り出せなかったのも
学園が雄牛の牛舎の騒動の犯人を割り出せないのも無理はない。
探す方向そのものを間違えていたからだ。
だがそれでも可哀想なメイドの心は傷付いていた。
誰に気付かれる事も無く折れかかる心と芽生える闇。
だけどその心の闇に気付いた者が居る。
彼はそれを煽る事も無く彼女の傍に佇んだ。
光が光に惹かれる様に闇もまた闇に惹かれるもの。
やかて可哀想なメイドは彼に気付き
彼と寄り添う。そしていつしか彼らは恋仲となった。
だからこの状態を壊そうとする者を彼は容赦しない。
彼はまず彼女の標的にされてた側を伺う。
龍の雛を抱える彼女は敵にはなりえない。またその友達達もまた彼の敵にはなりえない。
だから彼は俺様王子に近づく。彼の幸せの為に。
後は『元凶』を『合法的』に処理させた後に食らい付くだけ。
闇に飲まれた魂はさぞかし闇の色をこの世にばら撒き続ける事だろう。
彼は彼女と自分の幸せの為にもそれを逃しはしない。
食いっぱぐれの無い未来を目指す為にも生かさず殺さず立ち回れば良いのだから。
魔属のヒトにとっては嫉妬や怨嗟もエネルギーの一つ。一時で終わるモノより長続きしてくれた方が
刈り取る側としても好都合なのでしょう。思惑は違えど彼もまた光側となって舞台の影で踊るモノ。




