ガヴリンの巣戦 後半
ガヴリン達の災難は続く
あの移り気な『迷宮泣かせ』がガヴリンの巣に張り付いている。
その情報は瞬く間にギルドの冒険者達へと伝えられ
腕試し志願の冒険者達がガヴリンの巣へと誘い込まれる様に
集う様になるまでにはそんなに掛からなかった。
ガヴリンの戦い方は基本的にはヒトのそれと似通っている。
武器防具は使うし毒や魔法も使うが脅威度そのものは低い。
つまる処駆け出しの冒険者向けの『生きている的』役なのである。
毎回攻撃パターンは異なるし巣の中ともなれば編成も多様化する。
ガヴリンは魔力が切れやすいからかこちらが喰らう魔法もたかが知れてるし
魔法で回復したとしても後が続かないが普通だ。
それが中級魔法回復薬の素材の採取場所付近に
巣を構え魔力の回復手段を手に入れたのだから厄介化するのは当たり前。
もうこれで魔法は撃ってこないだろうと思うとまた撃ってくるのだ。
基本は変わらないとはいえ普通ならそれに嫌気が差して手早く事態を
収集しそうな気がするのだが、冒険者という存在はどうもその辺の感覚が違うらしい。
実に喜々とした表情で次から次へとガヴリンの巣に突っ込んでいく。
既に街のギルドの掲示板の前では予約が空くのを待つ列が出来てるとか。
学園側の校内クエストでもそれはほぼ同じ。貴族のクラスの子達が物見遊山の感覚で
PTを募集しよう物ならあっというまにその枠が埋まってしまう位には。
「まぁ何も返してこない案山子相手に剣振るったり魔法を撃ちまくるよりかは歯ごたえある
のは分かるけどさ、先生方まで一緒になってはしゃぎ回ってるとは思わなかったわ。」
とは巣近くの素材仮置き場まで荷車引いて荷物を納めに行った女子達の談である。
ミィナやアンヌが空になった素材入れを受け取る後ろで
リーナも皆と一緒になってそれには苦笑している。
(大方日頃溜まった鬱憤やなんかをガヴリン相手に発散しているのじゃろうよ。)
生産系担当の先生方ですら視察と称してPTに紛れ込みすっきりした顔で戻ってくる事すらあるのだから。
巣を構えてしまったガヴリン達には気の毒だが彼らの鬱憤晴らしの的になって貰わねば。
(この一連の騒動もまた乙女ゲーの『イベント』ならば・・・)
と私はリーナをそれとなく見やる。
(彼女自身にもどうにも出来ん部分はあるじゃろうしな。私は私の出来る事をやるまでよ。)
と大あくびしているミラや上空を舞うヒューイの様子を見る。・・・うん。問題ない様じゃな。
「じゃぁそろそろ場所移動しようか。ここ大分素材採り過ぎちゃったみたいだし。」
とミィナが袋を畳みつつ提案した。アンヌも周囲を見回してそれに同意する。
「あ、じゃぁ巣の近くの集約所の方の手伝いお願い出来るかな?人手が足りないんだって。」
と荷車引いてた生徒の一人がその声を待ってましたとばかりに声を掛けてきた。
「えー。」とりーナが向こうやらされる事に付いて大方予想が付いてるのか嫌そうな顔をした。
ミィナもアンヌもげんなりした様な顔してるとこみると撤収の支度でもさせられるのかも。
「んじゃ宜しくねー。他の生徒達にも声は掛けておくから。」
とガラガラと荷車引いてその生徒達は他の子達の元へとそそくさと去っていく。
(まぁ龍の雛持ちを何時までも採取に回してる訳にもいかんだろうしの。そろそろ終盤なのかもしれん。)
恐らくは防衛や安全対策も兼ねてなのかも知れないが足取りも重く
彼女らは『召喚獣』達と共に喧噪の続く巣の近くへと歩いていくのだった。
称号持ちが張り付くのなら行ってみたくなるのが冒険者の心情という物で!?という事で若干巣の中はカオス状態になってた様です。ソラ達は戦力外扱いなので巣には突っ込ませんよ?下手に突っ込ませたら龍の親も黙ってないでしょうしねぇ・・・




