校内クエスト解禁とイベント消化
クエストの前振りです。
3学期は結構忙しい。学園を出れば即戦力も見込める位にはならないと。という事で
校内クエストもそれに合わせた仕様の物が提示される様になる。
校外での『採取』クエストも『討伐』クエストも初心者向けから中級者向けへとシフトする。
授業の大半は3学期になるまでに終わってしまっているので
授業よりも校内クエストでの成果が重要視される様になるのだ。
そんな忙しい時期に差し掛かる時に転校生が城からやって来た。
例の俺様王子である。表向きは龍の雛のお目付け役では無くあくまでも勉学の為だが
貴族のクラスはそれこそ蜂の巣を突いた様な大騒ぎ。
貴族という事もあってか表面的には騒げないので見た目には静かだが
ある種異様で熱の籠った雰囲気は一般学生達にも伝わり過ぎる程伝わっていた。
先生方の顔の青白さにさらに拍車が掛かりそうなのは云うまでもない。
幸いにも俺様王子は校内クエストに興味深々でノリノリな為、
校内に居る時間そのものは少ない傾向があるのでそれはそれで楽なのだが
クエストに同行する生徒達の間でその『立ち場所』の争奪戦がそこかしこで発生していた。
因みに乙女ゲーの主人公たる『リーナ』はそれには参加はしていない。
乙女ゲーの『本来の流れ』でもそれは無いし彼女の『役割』はそこには無かったから。
彼女が担う『役割』は『採取』クエストでの『素材』の採取と『アイテム』製作。
本来ならば『採取』クエストで得られる『素材』やらで攻略対象の好む
『アイテム』やらを製作して彼らに渡す事で好感度を高める。
という『役割』があるのだが『転生者』で俺様王子の攻略をもやる気の無い彼女が
それを『積極的にやる』訳でも無く。
ただ『錬金術師』並みの行為が出来る事にのみ彼女は喜びを見出していた。
「だって、ワタシが嵌ったのって主にこの部分なんだもん。」とリーナが龍の雛をあやしつつ呟く。
だから彼女は『採取』クエストをミィナやアンヌと組んで
その『召喚獣』達に手伝ってもらう事を選ぶ。
当然というか王子用の攻略『アイテム』を作るのに必要な材料を手に入れた場合には
総て、ミィナ経由ですべてミレーヌに渡す事も忘れない。
無論、彼女自身は適当な理由を付けてだが、ミレーヌはミレーヌで『採取』の手間が省けた事と
王子の好みの傾向を知っている事もあってむしろ良き友人を得られたと無邪気に喜んでいる。
因みにリーナが攻略『アイテム』を創って渡さなかったのは鑑定した時などに
自分の作だと云う事が分かってしまう事とミレーヌの立場を立てる為、である。
「無駄にやり込んでる訳じゃないし、そもそも『ワタシ』とミレーヌじゃデザインの好みが違うしね。」
とリーナは乙女ゲーでの『アイテム』のアイコンを思い出す。
「ただやっぱりゲームの強制力というか何というか虐め問題は発生するのよねー。これが。」
とため息を付きつつリーナは教室の自分の荷物入れの惨状に目をやる。
今朝学生寮を出て早めに教室に来たらこの様である。物の見事に泥が塗りたくられた自分の荷物入れ。
幸い教科書等には被害はまだ出ていないがその内出る事は彼女は既に『知っている』。
ゲームでは主犯はミレーヌ扱いだったりするが本当は誰がやったかはゲーム内でも分からない。
「幸いミィナにはまだ被害は出てないけどこうなると校内クエストの『イベント』も怪しいわね。」
と友人にも降りかかるであろう火の粉を思い描く。
「そうなると・・・。あの狐の『玩具』の『召喚獣』をなるべく早くにでも『強化』しないとね。」
と荷物入れの泥を片付けつつ『強化』に必要な『素材』を思い出す。
やがて教室内に入って来た同級生達が悲鳴を上げつつ彼女の片付けを手伝う。
ミィナもカンカンになって彼女の手伝いをしていたが、彼女の顔の広さをもってしても
犯人は不明だった。
俺様王子も校内に現れ『乙女ゲー』の舞台が整いつつある様です。狐の『玩具』もそろそろ『修理』を終わらせるべきかも知れませんね(リーナは『強化』と捉えてますが)。 6/3 足りない部分を加筆しました。




