寝子と狐の玩具
ご対面です。
えーと。『君』。あ、いやあたしと同じで『女の子』だっていうから『貴方』でいいのかな?
と小首を傾げてベッドの上で半身を起こしたあたしの目の前に棚から下ろした
狐の『玩具』をお腹の辺りに置いて見下ろして見つめてみる。
結局あれから2日位寝込んでしまってようやく起き上がれる様になった所だよ。
顔面蒼白でやつれた感じの召喚式担当の先生がお見舞いに来てくれた時に
「あの『玩具』があたしの『召喚獣』だよ。」と教えて貰った時は
正直盛大にベットの上でずっこけてた。
これって『山が鳴動して出て来たのは鼠だけ』?ていう感じがしてさー。
狐の『玩具』なんだから狐族の子にあげたら喜ぶんだろうか?とかつい思っちゃったり。
先生が言うには『異界』の『玩具』だそうだから呼び出せた時点で凄い事なんだろうし
かなりレアな部類の『召喚獣』には違いないんだろうけど、後の出来事の事聞くとね・・・
何故ってあたしがぶっ倒れた後も『召喚テスト』は続行されて
あの後でリーナが召喚した『召喚獣』の子ってのがこれまたぶっ飛んだ存在だったから。
なんと本来召喚出来ない筈の希少種なドラゴンの子引き当てちゃったとかで
学園どころかお城の人達まで巻き込んで上から下への大騒ぎになっちゃったとか言うんだよ?
先生方に負けず劣らずなんか物凄くぐったりした顔のリーナが
こっそりとお見舞いに来た時に教えてくれた。
大事そうに小さい毛玉を抱えてたけどそれが例の希少種のドラゴンの子なんだって。
「両親なんか文字通り『舞い上がっちゃって』て暫く降りてこれなくなっちゃってた。」とか言ってた。
そりゃそうだよねー。庇護こそ貰えてないらしいけどドラゴンの子を託されたも同じ事なんだし。
でなきゃ今頃学園どころか国が滅んでたと思うとちょっとぞっとするけどね。
街の人達もあたしの召喚の時の魔法陣の暴走の余波喰らってたそうで
『魔力酔い』のヒトが多数出ちゃってるらしいし先生方はえらく怒られたらしい。
因みにあたしやリーナには特にお咎めは無し。学園の召喚魔法陣は真っ先に封鎖されて
お城からは高名な魔術師やら召喚師の方々が召喚魔法陣に連日訪れては鳩首会談やってるらしいけど。
なんか術式が書き換わっちゃったとかで嬉しい悲鳴上げてるとかなんとか?
そのお陰もあってか先生方も首切られずになんとか済んだらしい。皆顔青白しやつれてるらしいけどね。
「なんであたしの召喚の後で『召喚テスト』止めなかったかなー?」とちょっとあたしも怒ってる。
あ、いや、モフモフな子を引き当てたリーナの事が羨ましいとかじゃなくてね。
また暴走して今度こそ爆発するとは思わなかったのかな?と先生方を黒い笑顔で問い詰め倒したい。
それは兎も角。あたしが今こうして生きてて『魔力酔い』で済んでるのはこの子のお陰なんだよね?
なんかあっちっこっち焦げてる何処かすっとぼけた顔の木の狐の『玩具』。
可動を追求させた造りでそんじょそこらじゃ買えそうもない代物だって事もなんとなく分かったし。
時間経過と共に少しずつ焦げも治りかけているみたいだけど
痛そうな顔もせず(機構的に無理だろうけど)すっとぼけた顔してるからか何か余計に申し訳なくて。
『名付けの儀』を済ませば正式にあたしの『召喚獣』になるその子に内心謝ってる。
―召喚に巻き込んじゃってごめんね。-
所でどんな『名前』付けてあげたらいいのかな?
「『ポチ』?『タマ』?『キツネ』?友達の名前を付ける訳にもいかないし。うーん。どうしよう。」
頭巡らせてたらまた眠たくなって来ちゃった・・・
ミィナの両親も勿論『ふっ飛んで』来て娘だけでなく街の救護に回されてる様ですが特に物語には絡まないので描写はしません(ぇ。賠償金?とかはちゃっかり貰ってたかも知れませんが




