『誰でもない』存在(vs鵺(ぬえ))その弐
反撃開始です。
アンヌを移動させ終わり、『鵺』を見据えてみる。
「キューイッ!!」何度目かの突撃で反撃が届きにくい上空へと
避けたヒューイのバードアタックだかだけじゃあ奴には大して
ダメージは与えられそうにはない事は分かるんじゃがの。
あ奴の胸に当たった3射目の『破魔矢』は役目を終えて地に落ちた際に
踏み砕かれちゃったみたいだし、転がっとる2射目の矢もいつ踏み潰されるか。
「さて。続きをやるとするかの?ルゥスやアンヌ達にばかり
『大技』出させてばかりでは悪いからのぅ。」と私は呟くと、
『鵺』に向けて脱兎の如く走り出した。
上空のヒューイの行動を見極めようとその顔を空へと向けている『鵺』
を誘導すべく、『鵺』の跳躍到達予測範囲内ぎりぎりの所まで近寄ると
円を描く様に立ち位置を調整しつつ、『鵺』を正面に見据えられる所で
立ち止まり、弦がまだ付いたままだった弓の折れに魔力操作で魔力を集中させると
「コンコン!」と『拍子木』の様に打ち鳴らしてみせる。
ギロリ。とこちらを見てくれればしめた物。(ほれほれ、こっちじゃこっち)。
跳躍して距離を詰めてくる『鵺』に対して隙を見出したルゥス達の魔法や
ミラの火炎球ブレスによる援護射撃が開始される。どうやら私の吐いた台詞を
覚えててくれた事に安堵しつつも、後方へと飛び退くとほぼ同時に跳躍し終わり
着地した『鵺』の背中にルゥスの火炎呪文やミラの火炎球ブレスが命中した。
「タイミングはばっちりじゃな。じゃが、まだまだ終わらんぞっ?」
私は一瞬動きを止めた『鵺』に対して1つに纏め持った弓の折れを
棍棒の様にして握り締めると『突進』で相手の懐に飛び込み、魔力を纏わせたまま
殴り付けてはその反動を利用しつつ回転しながら反撃の前脚での払いを寸前で回避する。
「いまじゃっ!エンチャウント(付与)!!」私は再び援護攻撃で飛来した
火炎弾の一つで弓の折れを掠らせ着火させる。「『魔力操作』っ『突進』っ!!」
この際火が付きさえすれば、ルゥスの火炎魔法かミラのブレスのどちらかでも構わない。
火炎呪文と火炎球ブレスが着弾しそれに耐えている『鵺』に対して追撃が襲い掛かる。
私の一撃一撃は確かに軽い物かも知れんが『連撃』で喰らえば塵も山となろう。
「奥義っ!『狐の舞』っ!!」かつてリーナ達が人前で披露していた『鳥舞』を参考に、
冬山で白角兎相手に繰り出してたジャンピング・アタックを
組み合わせ、高速接触移動な要領で赤く燃え盛る弓の折れで打って『突進』して打っては
『突進』してゲシゲシと交差しつつ連撃する。
(この際自分まで物理的に燃えようが構ってられんのじゃっ!!)
『キシャーーッ!』ビリッ!!回避がちょっと遅れて焦げ始めてる冒険者の服の一部を
持っていかれてしまったが、お返しとばかりに魔力を込めた2つの弓の折れを『狙撃』で
狙いを付けて投擲し追加ダメージを与えつつ『鵺』の跳躍範囲外へと後退する。
うむむむ。こんなんじゃ嫌がらせな仕返し程度にしかならんのじゃ。
何かもっとこう、エネルギーな塊なあ奴に強烈なダメージを与えられる物は無いかのう。
着ている物までもがボロっちくなりながらも舞った『狐の舞』は無駄ではありません。次回の戦闘シーンで決着付けます。 3/31:描写を変更しました。




