慰める者
リーナ視点です。
ガツーン。バラバラバラ。校舎の壁にスケルトンな鼠が
叩き付けられて砕け散る。振り回されるのは己への怒りと魔力が篭った
魔法のバトンならぬモップである。
鍵の掛かった部活動用倉庫に到達した私達は中に仕舞われてた
武器を選定してモップの代わりにしようとしてるんだけど、
超絶不安定な涙目の猫耳な彼女はモップも装備したまま手当たり次第に
ノンアクティブな敵を叩きまくっている。
「忘れ物も無し。と。後は扉を閉じれば自動的に鍵が掛かるのね。」
と私は肩で風魔鷹を休ませてる巻き尻尾な犬耳の友達に確認する。
「うん。まぁそうでなきゃ危なくてしょうが無いんだろうけど。」
と念の為にパタンと扉を閉めてからガチャガチャやって鍵が掛かってるか
確認してから私達の方へと振り返る。
「おーぃ。雑魚掃除はもぅいいから、とっとと先に進もうよぅ。」
と私の背後でゲシゲシとはしたない様相でさっきとは別な鼠のスケルトンを
踏み付けてた彼女の背にワザと元気そうな声で話し掛ける犬耳な彼女。
ホントは自分だって一緒になって悔しがりたいんだろうけど我慢してるんだよね。
その声を聞いてビクっと片耳を動かし動作を止めて振り向いた猫耳な彼女の顔は
相変わらずのくしゃくしゃな半泣き顔だった。
「う”ぅぅぅ”。ホントにいっち”ゃうの”?ほんとにま”だ”なくていいのぅー?」
彼女が泣いてるのはあの階段の踊り場で蹴り飛ばされた事に対してではなく、
自分の不甲斐無さに対してだろう。召還獣が主人たる召還師の『身代わり』になる事位は
授業でも教わってはいるが、連れ去れた上に召還不能という事態はそうそう
体験出来るような物ではないしね。言うなれば半身を奪われた様な物なんだからさ、
そりゃ泣くに決まってるでしょ。私だってミラをどっかに飛ばされたら泣き喚くわ。
あの子に蹴飛ばされて、ほぇ?なんで?と彼女が見やった先には
自分そっくりな魔物と一緒になって鏡の中へと沈んでいく自分の召還獣の姿があって、
沈みきるまで呆然としていた彼女が慌てて鏡に取り付いた時にはもはや手遅れ。
パニックになった彼女を宥めすかしてただの鏡になったそれから引き剥がして
簡易魔法陣での召還を勧めてはみたけど阻害されてるのか反応が無くて。
敵ボスは学園自体が一種の封印となってる事から飛ばされても校内のどっかに
強制転移されてる筈だと説き伏せて、もしかしたらここに先に来てるんじゃないかと
彼女を半ば引きづりながら来てみたけど案の定というか合流不能だったんだよね。
「落ち着いて。貴方も見たでしょ。倉庫の中の武器が明らかに減ってるという事は、
既に私達以外に誰かここに到達してるって事なんだし、そっちに付いてってるかもよ?」
と私は握った手の親指で私達が来た方向を指す。
私達以外にここの鍵を開けれるのは現状では外からの助けしかない。となれば行き先は
ボスか職員室のどちらかとなる。まっさきにこちらに来たのならば多分職員室へと
行った筈。倉庫の内容物の減り方から見て多人数が来てた形跡があると犬耳な彼女も言ってたし。
「ただ、何故か練習用の弓矢まで持ち出してるみたいなんだよね。弓は一番強い奴かな?」
と弓が納まってた棚の整理用ラベルを見て首を傾げてたけど、それは適当に持ってっただけかも。
猫耳な彼女を慰めつつも先を急ぐ事に。仮に外からの助けに付いていってなくても
ボス戦までには逢える筈だと信じて。
リーナ達の武器選択に関してはあえてボカしました。モップ装備とかは変わりありませんけどね。PTの構成上祝福が受けられないのでやむなしの側面もありますが魔力操作だけでも何とかなるという事で。




