豹の騎士は回想する。
どうやら合流する模様です。
逃げ遅れて教室に閉じ込められた形だった下級生達を助け出せたのは
不幸中の幸いだったかも知れない。
私だけでも攻略は出来なくもないのだろうが、彼らの魔法の効果を
集約する事でより効果的に敵にダメージを与えられる様になったのだから。
「それでは他の皆は寮の方に逃げ込めたんだな?」と確認も済ませたし
後は彼らを職員室まで送り届けるだけでいい。
攻略速度を維持するだけならそのまま彼らを引き連れていけば
早いが無理をさせる訳にも行かないし、私の仲間が既に攻略に先行している
現状では彼を追った方が良いだろうと判断する。それが私を送り出してくれた
護衛対象の御方の望みでもあるのだし。
何より彼は病み上がりに近いのだ。口ではなんともでも言えるし
見栄は張れてはいるのだろうがその動作はどこか危うい物があるのも事実。
今の彼の状態はジャンプ位は出来ても、小走りの状態ですら種族特性で
短距離ランナーである私よりも長くは維持出来ないのだし。
そう言えば種族特性で思い出したが彼も私も良く似ている部分がある。
それは2人共、群れに入るのが苦手という点だ。似た者同士という事でなのか
良く彼は私に突っ掛かってくるが、あれは犬種、いや今は実際には『ワーウルフ』
なのだが彼らが気に入ったモノにじゃれているみたいな感覚なのだろうか?
ともすれば一人突っ走りがちな彼だが根は悪い奴では無い。目標とする物が余りに
高過ぎて周りに構っている暇が無いだけだったと私は見ている。
彼が単なる『ヒト』であった時は魔力操作では彼の方に軍配が上がっていたが
総合戦闘力では私の方が上であった事も今や過去の話だ。
それまでも強さを地道に求め続けてたらしい彼は機会を得て『ワーウルフ』という
今までよりも強力な種へとクラスチェンジを果たしたし、これからは余裕も出てくる事だろう。
(彼が本調子になればほぼ互角か魔力操作の点で彼の方に軍配が上がるかも知れないな。)
だが私にも『ランクアップ』の余地はまだ残っている。単なる『豹』ヒトから
『黒豹』ヒトになれれば私も彼に負けずとも劣らずな立派な騎士としてその横に
並び立てれる日も案外近いかも知れないな。
そう思いながらも下級生を引き連れつつ校舎内の部活動用倉庫へと移動する。
職員室に急行するよりも先にそちらの方の攻略を優先したのは、学園長が顔見せの際に
部活動用倉庫の鍵を安全対策として持って出ていた為に校内に残っている先生達も
直ぐにはそこを開ける事が出来なくなっている筈だったからだ。
生徒達の一部は授業の一環として『鍵開け』の訓練はしてはいても、その対象は
遺跡等の宝箱とかであって稼動している学園とかの施設には対応してはいない。
購買用の倉庫の在庫だけでは心許ないであろうし、なるべく早く急行して使えそうな武器を
回収する必要もあったからそういう意味でも回収班を繰り出す手間が省けて幸いであった。
「ん?誰か向こうから走って来たみたいだな。あっ。君も取り残されていたのかっ!!」
と警戒しつつ見据えた私の視線の先には掃除用具のモップを抱えて暗がりの向こうから
トテトテと走って来たあの背丈の小さいマントを翻した旅人姿の狐ヒトの女の子の姿があった。
そろそろルゥスとケインの元ネタがバレてるとは思いますがそれはそれとして。ついにソラの狐ヒトの武器選択ですよ!?どーしましょっ(ぉ。モップは武器には入りませんよね!?




