進撃開始
ルゥス視点です。
キーキーと音を立てて鼠のスケルトン達が薄暗い廊下を走り回っている。
だが唯単に走り回っている訳ではなくて、一定の方向へと向けて
川の流れの様に集まっていく。
もう死を恐れる事の無い彼らに与えられた目的は唯一つ、侵入者を撃退する
という一点だけである。彼らは入り口の方へと我先にと進み、
その流れを塞き止めるかの様に立ち塞がるヒト影へとわれ先に飛び
掛かっていくが、彼らはその人影から発せられた赤い斬撃の光跡によって
薙ぎ払われ、切り払われては骨を次々に周囲へと散らしていく。
だが諦めるという選択肢すら与えられていない彼らの散らされた骨は
「カタカタカタ。」と寄り集まりその人影よりも一回り程大き目な
巨大な骨の鼠の姿となって2足な骨で廊下を踏みしめ立ち向かう。
「意外としぶといな。燃えろ。火炎呪文。」という鷹揚の無い
声と「「ボン!!」」」と派手めな音と共に火に包まれ燃え盛る魔物は
それでも前と歩を進めようとしたが追撃の赤い残撃によって袈裟懸け状に一刀両断され
ると今度こそバラバラに細かく砕け散って崩れ去っていく。
「予想より魔法が派手になってしまったな。魔力のコントロールがまだ甘まめか。」
と人影は呟くと赤い輝きを消した剣をブンと払うと躊躇無くそれを腰の鞘に収めてしまう。
「相手が脆すぎて剣の練習にもならない様だし暫くは素手で行くとするか。」と
暗がりの広がる廊下の奥の方を見透かす様に見据える。
「カサカサカサ。」常人ならば聴き逃してしまう程の小さき骨達の足音だったが
彼の耳は集団化しつつあるその音を聞き逃さなかった。
恐らくは先程の様な連中の第2波が来るのだろうが、相手に不足は無いと歩を進めていく。
「ふ。満足に走る事も出来ん今の俺には丁度良い按配だな。連中にとっては運が悪かった
とは思うが精々俺のリハビリの糧として付き合って貰うぞ。」
と表情を替える事無く次の標的へと向けて歩いていくその横顔は紛れもなくルゥス本人である。
彼は今も校舎の外で自動侵入者撃退モードで壁として立ち塞がって最短距離を塞ぐ
門番のゴーレムや背負っている薪部分に火が付いたまま追いかけて来る生徒達から逃げ回っている
狸耳な石像と戦っている本来の護衛対象達を囮にした形で校内を攻略している真っ最中である。
程なく彼の目の前に立ち塞がったのは今度は陸亀な形の小さなスケルトンの大群では無く
最初から合体融合した大型の陸亀な2足歩行のスケルトンであった。それは頭尻尾手足総てを
甲羅の中に素早く収納するとゴロゴロと横に転がりだし向きを変えてルゥスへと距離を詰めていく。
リハビリは順調に進んでいるとは言え彼は王子や彼女らの様に連続して走ったり
跳んだりする程にはまだ回復しておらず、若干手持ち無沙汰だったのだが、ある令嬢の提案によって
彼らが外の守りを固めている連中の気を引いている間に突入を命じられたのである。
「あの方の御期待に沿う為にも貴様らに遅れをとる訳にはいかん。遠慮なく行かせて貰うぞ。」
と言いつつも、鋸か鮫の刃物の様に尖った甲羅の縁を避け終わると、
頃合を見ていたのか間髪入れず両足で廊下を蹴って空中へと斜め前に飛び上がり、
その勢いのまま空中で前転すると、彼の前方を回り込む様に背側を向けて方向転換しかけていた
大亀の甲羅に対して、揃えた両脚を向け最も硬いであろう筈の大亀のその甲羅の中心に向けて
ジャンプキックの要領で綺麗な放物線を描いて突進し、甲羅に大きな風穴を開ける事に
成功すると、大亀から少し離れた場所へと腰を落としつつも危なげなく着地を成功させる。
その背後では転がっていた時の慣性を利用しつつ、骨な頭と尻尾と両手足を出し
再び2足で立ってみせた大亀のスケルトンの姿があったが、背から腹に抜けた大きな風穴は
塞がる事は無く、グラリ。とバランスを崩すとそのまま後ろへと音も無く倒れこみ、
転がった衝撃でバラバラと完全にバラけて塵の様に闇へと掻き消えていく。
「さて。先を急ぐとするか。後続にはアイツが充てられる事だろうしな。」
と彼は亀のスケルトンの最後を気にする事も無く佇まいを直すとそそくさとその場を去っていった。
以前の回同様にソラがらみでないので戦闘シーンでありながらも副題での告知はしませんでした。仮面ラ○ダーなノリで敵をぶっ倒してるシーンなのである意味もったいないかな? それは兎も角ルゥスが気にしている『彼』の活躍シーンはどうなることやら(ぇ。 3/14:戦闘内容の一部を差し替えました。




