中腹寺院とルゥスの意外なる関係
ルゥスが何故留学して来たかが分かるみたいです。
12支宮の方へは行かず、今度は丘の坂道をだらだらと
歩いて降りて行く事に。向かう先にあるのはどう見ても和風建築な
木で出来た寺院群である。
(あれは・・・清水の舞台みたいな物かの?)
螺旋階段状の5重の塔みたいのとか寺院建築の中でも珍しい構造の
ばかりみたいなのが逆に気掛かりなんじゃが、豊川稲荷みたいに
赤い鳥居の群れが寺院への参道を繋いでいたりと厳かな雰囲気は立っていたりする。
「この辺りの神殿の総称は寺院といいます。丘の上の神殿と異なり
木を建材として使っている事が特徴ですが、建て過ぎた為に森の民達とは
いざこざが絶えなかったそうで、ついには専用の建材育成の森が造られた程だそうです。」
と阿吽の一対の守護像が入り口を守る神社を紹介しながら説明するガイドさん。
丘の上の神殿群もそうなんじゃが、建築には木材消費の問題が付き纏うん
じゃよなぁ。ここの建物群は石材とか丘の上に上げた後に転がされてたり
した丸太とかも流用してるそうじゃが、あの説明じゃとそれだけでは足りなくて
大規模な伐採にまで手を出した事もあるって事なんじゃろうけど。
(ん?それってば例の狐ヒト狩りに繋がってたりせんじゃろうな!?)
それならば豊川さん並に鳥居が乱立しているのも何となく説明は付く。
(あの鳥居群は豊穣の神様の怒りを抑える役目ももっとるんか・・・)
間引きした建材用に育成した木材の使い道としては鳥居も有りかも知れんが
その内丘が赤い鳥居だらけになってしまいそうじゃな。
まぁ神域で育成された建材という事で需要は他にもあるみたいだし、
何とかバランスは取れてる様じゃが一抹の不安も過ぎる。
「あちらの寺院は東方の国からの奉納品ですね。太陽の使者であるとされる
白妙の雌狼が主神として祭られています。」と指し示された先の境内には
先客としてルゥスが一人お参りをしていた。
「あれ?ルゥス君のクラスの他のヒト達はどうしたんだろ?」
とアンヌがキョロキョロと周りを見回す。祈りが長すぎて置いてかれたのかな?
私達が境内に見学に入りお堂の軒先の到達するとルゥスはようやく祈りを終えた所じゃった。
横に避けたルゥスにミィナが気兼ねなく会釈して聞く。
「ルゥスさん、随分長いお祈りをなさっていたみたいですけど、何か理由があるんですか?」
ルゥスはどう答えようか一瞬考え込んどった様じゃが即それに答えてくれた。
「ん?いや、俺がワーウルフになった事を報告しようと思っただけだ。気にするな。」
と本殿の中に飾られている白妙の雌狼の絵の方をそれとなく仰ぎ見る。
(まさかとは思うがこやつが留学して来た理由ってソレが目的じゃったのか!?)
こっちの日本に該当する国ではどうかは知らんが私の元居た日本では狼は絶滅種の筈じゃ。
それがこっちにも当て嵌まるんならば、国内ではワーウルフ化は夢の又夢。
ワーウルフにランクアップの恩恵があるかどうかまでは知らんが彼が目指す物が何なのか
ようやく分かった気がする。ミィナやアンヌは参詣理由に首捻っておった様じゃが
リーナならば彼の気持ちの一端は分かったかも知れんな。
白妙の雌狼さんの元ネタはずばり大神さんです。安直ですね。でもルゥス自身にとってみればワーウルフ化はそれだけ至上命題だったと言う事なんでしょう。国内で無理なら海外に求めるというのは何処も同じ事。




