丘の上の神殿群
まずは高い所から。
寝ぼけ眼で向かえた翌朝からは神殿巡りと相成ったのじゃった。
目玉焼きが乗ったトーストと暖かいミルクで軽く朝食を済ませた後は
崖上の方に立つ崩れかけた神殿群の方へとバス代わりな荷車から
補修用に設置された露天型水力式エレベーターみたいな物に乗り継いで上がっていく。
壊れた軌道エレベーター風な建物はこっからも見えるんじゃけれども
今回の修学旅行の行き先には含まれてないので遠景で我慢。
ガイドのおねぇさん曰く、あれは過去の大戦以前の建物じゃそうで、今の共通語が
出来る以前にああなったらしいが大破壊の余波でもビクともせんかった
言うからおっそろしく硬い構造物なのは何となく分かる。
衛星軌道上に小都市でも造られてて今でも姉妹な蛇神様の片割れとか住んでたりして。
「この都市を取り囲む丘の上にはかつて『12支宮』と呼ばれる神殿群がありましたが
大破壊の余波を受けほぼ総てが崩壊し、あの様に破片が周囲に飛び散りました。」
と周囲の地形に突き刺さってたりする建材を指し示すおねぇさん。
「神殿群は戦いが終わった後、一応残ってた建材で何とか再建を目指したものの、
飛び散ってしまった建材を回収する金銭的余裕も無く、今も殆どが壊れた状態からの
再建を目指している真っ最中です。まぁ被害も甚大でしたでしょうし仕方ないですね。」
と言って苦笑してた。
神殿直すより生活の場の方の再建を先に整えるのが先決じゃったろうし、
建材が不足してたせいもあったんじゃろうが、飛び散った建材の中には
丘の下の集落とかの補修に回されてしまった物もあるとの事。
つか『12支宮』ってひょっとして全種族分の神殿が乱立してたりしてたんかのぅ?
鼠・牛・虎とかな金ぴかな12体の全身鎧なオプジェとか飾ってあって
守護騎士同士だかの闘争がかつてはあったりしたのかも知れんがボロボロな神殿群
観る限りそれ所では無いっぽい。一応各神殿とも機能してるんで守ってる巫女さんとか
居たりするらしいが何処も財政難な為か観光産業が頼みの綱らしいがの。
「こちらの神像をご覧下さい。ヒトと魔属の神様が直接対決をなさっている
姿とされているモノです。あふれ出る筋肉美が美しいですね。」
とちょっとうっとり顔の魔属なおねぇさんが魔属の神様らしい立像の方を特に見つめながら言う。
崩れ掛けた神殿の中心部の広場には何故かクロスカウンターかましている状態の半裸で
肉体の描写が良く出来ている2体の男性の石の立像が台座の上で争っている姿で建っていた。
中心のこの像以外の像は継ぎ接ぎだったり部品が無かったりと散々な様相じゃったけど
ミロのヴィーナス風な艶めかましいのもあったりと何も服まで別パーツ化してまで
建てなくても。って位皆凝った造りじゃったわ。
斜面脇の工房の方だかでは今もちまちまと遺跡群の修復作業とかやってるそうじゃが
当時の模倣が精一杯で優秀な石工さんでも日々勉強の毎日らしい。
(全種族分の特徴とか当時の趣味とかある程度把握しとかんといかんじゃろうし大変じゃな。)
再建言うても出来うる限りは当時の様子を再現する方向でやってるそうなんじゃが
かつてはこの付近に岩山があったかも知れんがもうそんな物は跡形も無いじゃろうし
残されたストックや錬金術なんかで生成しなおした岩や何かをリサイクルしまくりながら
やってるそうじゃ。ここはまだそれでも元となる素材があるだけやり易い方らしいけど、
海を越えた先の大砂漠地帯では砂の海の処理法巡って精霊とかが大喧嘩の真っ最中らしい。
「ここは手伝ってくれるヒト達が居るのは有り難いんだが今もって派閥争いみたいのが絶えなくてね。」
と職人さんの元締めらしき牛耳なヒトが苦笑してたけど、当時よりも豪華にしたい!なんて
いう願いを持ってたりする職人さんとかもおるんじゃろうなぁ。
過去の修理でこっそり追加されたらしい装飾が最近の修復の際にバレたらしくて
コレどうしようかとか鳩首会談してる職人さん達を皆と一緒に見守ったりもしたわ。
丘の上の神殿群の元ネタはもろバレでしょうけどギリシャの神殿です。神像がクロスカウンター状態なのは大破壊の後で奉納された物だったりするかも知れませんけどね。




