春先授業
授業が始まったみたいです。
段々春に近づくにつれ皆の活動も活発になってくるみたいじゃな。
俺様王子達も見た目はノンビリと学園に戻って来ているが
余裕を見せるという牽制も兼ねてなのかワザとゆっくり移動して来たらしい。
気の早い者はそろそろ街のギルドの方の見学に行ってみたい様じゃが
まだ窓口も学生対応なのでクエを受けるにしても
精々使いっぱしり程度のクエしか受けられないっぽい。
まぁその代わり正式登録の際の手荒い歓迎なんかは受けづらくなるので
完全に無駄って訳じゃないだろうけどな。
という訳でか学園でもそういう輩をほっとく手は無いので
授業の一環として早めのギルド顔見せを慣行する習わしになってるらしくてな。
親鴨に連れられた小鴨宜しくぞろぞろと街のギルドの裏手に移動。
(これって職場体験と言う名の体の良い臨時職員みたいなモンなんじゃないのか?)
アンヌはギルドで扱ってる商品が気になるのか裏から見る買取カウンターとか
販売カウンターの方に興味しんしんじゃったわ。
各村や街のクエストの凱旋所はあくまでも出張所みたいなモンらしくて
ギルドに所属してなくても使える一般向けの窓口でしかないが、
ギルドともなると国単位でのお抱え集団みたいな感じで
扱う商品なんかも幅が広いんじゃと。
「あ、これ『船蛸』の時に見た職の追加用呪文書だわ。」
とリーナが売り物として管理されてるべきスクロールを発掘した。
「ほんとだ。刻印というか鍵の絵の部分があの時と一緒だわ。」
と近くで別な収集物を整理していたミィナがそれを見て頷いてる。
女子達はギルド内倉庫の雑然と詰まれた元献上品の整理を行う事になったんじゃよ。
便利な『ストレージ』じゃあるまいし中に突っ込んだら
勝手に整理と管理がされる様な仕様にはなってないのは分かるんじゃけれどな。
「めんどくさいからと言って何でもかんでも突っ込む一時保管庫造るんじゃないわよ。」って
いう苦言がため息と共に誰が言うとも無く呟かれたりしてて皆うんうんと同感してた。
店頭近くの置き場はちゃんと管理されてるけど裏側はこうなってんじゃなぁ。
お陰でたまーにこんなのあったんだー!って発見があったりするので
整理を依頼された側としては見つけ甲斐があるんじゃろうけどな。特にアンヌが。
さっきから恐ろしい勢いで整理しまくってるので迂闊に近づくと
こっちまで『鑑定』分類されて分類済みの山の上に放り投げられそうじゃ。
案の定と言うか尻尾をとっ捕まえられたミラが『鑑定』されそうになった挙句
「んー?あれ、ミラじゃない。ごめんねー。悪いけどちょっとどいてて。」ポイ。
と鑑定済みの柔らかめな毛皮とかの山の上に重石代わりに類けられておったし。
リーナとかが担当している部分は危険性の余り無さそうな呪文書が
多いのか「これは回復呪文ね。こっちは解毒呪文、これも回復・・・」
と仕分けも順調そう。まぁ攻撃呪文の呪文書は扱いが難しいのか
最初から別な倉庫で管理されてるらしいので紛れ込んでる事は無いとは思うのじゃがな。
「・・・・。」アンヌの気配に圧倒されてるのかヒューイは無言で微風起し中。
換気扇代わりももはや板に付いてる感があるが、居ると居ないとでは大違いじゃろうし
こういう時には有難いわ。埃まみれにはなりにくいしの。
キィーロ達男子は整理が終わった物品の運び出しやらを担当してるので
倉庫の出入りを繰り返してるけど時々未整理の物品を追加してくるので油断はならん。
申し訳無さそうな顔してるがお主らのせいじゃないしの。
私は出来るだけ似た物を回収してはミィナの所へと持って行くという補佐をしとるよ。
この施設、何でも学園並みの探知魔法とか施されてるとか職員が言ってたしな。
スキル使いすぎて変に引っ掛かるよかなるべく使わないに越した事は無い。
3年生ですので学園内で授業やるよか現場に近い方で学ばせた方が先生も楽でしょうしね。夏から冬に出掛けさせ過ぎな気もしてないでもありませんがあくまでも校内クエストの延長なので実質的な社会デビューはこれからになるという事でここは一つ。




