火種はまだ燻り続ける
どうやら待ち構えられてた様です。
リーナがひっそりとミィナ達の所へと戻って来た時、
かなりげっそりした顔だったのは言うまでも無かろう。
流石に表立った嫌がらせは無かった様ではあるが、
水面下の白鳥の脚の如く裏の方では無言の牽制やら
嫉妬が入り混じった目線の火花が飛び交ってて結構気疲れしたらしい。
あっちを立てればこっちが立たずなんて事はざらな世界じゃ
波風を立てずに進むなんて事はかなり難しいじゃろうからの。
私も『狐ヒト』姿であやつらに遭遇したからその一端は覗いてるが
リーナに比べりゃその負荷率の違いは天と地の差位はあるやも知れん。
「そーいえば何でリーナが踊り手に選ばれたのか聴いて無かったわね?」
とミィナが首捻ってリーナに聴いてる。
「私がここの採取クエの報告に行った時の事なんだけどさ。
その時にミレーヌ様達にとっ捕まっちゃってね。
『あら丁度良かったわ。貴方も鳥舞に是非参加してね。』
ってニコニコ顔で言われちゃったのよ。」と苦笑したリーナが
翼化した右腕をやれやれと言わんばかりにヒラヒラさせるとため息を付く。
クエ報告は誰それが行くとは特に決めては無かったからのぅ。
たまたまリーナが一人で行った時を狙われてしまったと言う事かな?
ミレーヌ様の直々の誘いじゃ断れんじゃろしとんだ災難じゃったの。
「あ。ひょっとして牛騒動の時の事覚えてたのかな。」とアンヌがしかめっ面してる。
(あぁ、あの時か。リーナはヒト前で祭事でも無いのに『翼変化』使ってたしな。)
逃げ惑う女子達を救うのに大立ち回り。それなら祭事でも人前で余裕で舞えるでしょ?
と判断された。って事なのかの?一応それも名誉な事には違い無いじゃろうけどなぁ・・・・。
「その辺は仕方が無いとはワタシも思ってるんだけどね。あんだけの事やったんだし。」
とその件に関しては半ば諦め顔のリーナ。
「それよりも出で立ちとか目立たない様にするのが一苦労だったわ。
ミレーヌ様だけで無く取り巻きなヒト達の機嫌も損ねちゃいけないし。」
とリーナが既に畳んでしまった衣装を横目でちらりと見ながら告げる。
あーそうか。衣装は自前で用意しなきゃいけないんだろうけど、派手にするのも不味けりゃ
下手に手ぇ抜くのも不味いじゃろし、かと言って平均点過ぎても後腐れあるじゃろうから
調整は難しいじゃろうなぁ。学園戻ったら嫌がらせ再発は避けたい所じゃが・・・。
「後、ちょっと気になる事聞いたんだけど、例の狐ヒトの子がここらに来てるみたいよ?」
とリーナが話題を変える為に言ったのは私の事じゃった。
げ。なんたる事。風呂場での邂逅の件でミレーヌ様に興味持たれてしまったんじゃろか。
ミィナとアンヌが驚いた様に顔見合わせとる。
「え?あの子、ここに来てるの?冬の稼ぎにクエスト回しにでも来たのかな?」
とミィナが小首を傾げてる。
「かも知れないわね。あの子着の身着のままっぽいし、お金稼ぎに『銀狼』相手は難しくても
こっちなら楽に稼げるんじゃない?もしかしたらわたしみたいにお使いクエやってたかも。」
とアンヌが右手を顎に添えて見逃したかな?て顔しとる。
「でもああ見えてどっかのお嬢様かもしれないんだよねぇ?」とミィナがこっちを見やるが、
私はさぁ?と首傾げるしか選択肢無いんじゃが。
学園の購買じゃ市民の服なんぞは売ってないし、学園の外の街に行くには時間足りんし。
『巫女』姿じゃ何がどう転ぶか分からんかったから私は着たきり雀やっとるだけなんじゃがな。
幸い貴族な方々はそもそも自力で服を買いに行くより商人呼びの方が多いからか
服飾系の店舗が一般向けの展示と小売をやってたりするから後でお店覗いて来ようかな。
観光地価格かも知れんが余り変な服は売ってない筈じゃ。
変なロゴとか入ってない事を祈ろう。金髪ドリルな横顔の令嬢のシルエットとかな!
リーナにその気(王子攻略)は無くても女子達の情報網は彼女を逃さなかった様ですね。これが『ヒロイン補正』という物なのかも(何かが違う気もしますが)。学園卒業までになんとかなるんですかね。ホント。ソラの新衣装考え中ですがそろそろ『狐ヒト』での武器とか先に与えた方がいいかも知れません。




