送り狐
村の中に潜入する様です。
あれから『MAP』を観つつ距離を置いて猫の尻尾と耳を持つ獣人の後を付けてるのじゃが
あっちへフラフラこっちへフラフラと獲物探し回ってようやく村に辿り付いたのは昼前。
まぁ獲物が角兎1匹と蛇1匹だけじゃすぐ帰れないのは分かるがのぅ。
猫系の特性なのか『気配感知』の類いも持ってる様でうっかり近づき過ぎた時なんぞ
こちらをチラチラ見透かしながら即、弓を構えようとするしで油断ならんかった。
因みに獣人いうても『けも耳』らしくて村人含めて耳と尻尾以外はほぼヒトじゃったな。
まぁそれはそれで悪くは無いがの。
観える範囲で確認すると犬、猫、鳥っぽいのから狐とか兎さんとか耳尻尾の種類も豊富な様じゃの。
村の入り口とかで特に『魔物』避けみたいのにはひっかから無かったのですんなりこっそり潜入中。
ダンボールの類いとかあれば偽装は簡単なんじゃが贅沢は言ってられないので
誰かに不審に思われない様に素早く物影に隠れながらあやつを追跡しとる所じゃ。
流石に村の中ではそぅそぅ武器を構える訳にもいかんじゃろうし耳ピクしながらも進んでく。
「ちわーっす。今日の獲物獲って来たよー。」と開けっ放しの一軒の店か何かに入っていく。
む。あれは『道具屋』か『肉屋』か何かかの? それでは早速サササっとその店の中の隅に潜り込む。
「ん?」とそやつが後ろを振り返ってみてももはやそっちにはおらんので意味は無いぞ?
首を捻りながらも中の方のカウンターに獲って来た獲物の捌いた物を入れた袋を置く。
中から出てきたのは犬耳のおっちゃんやった。「おぅ。今回は意外と遅かったな。」とそやつに言う。
「いやー、出だしは良かったんだけど後が続かなくてね。それ今回の依頼の分な。」と袋から中身を出す。
出てきたのは狩った魔物とかの肉とか時々集めてた野草の類いの束じゃな。あれが『薬草』かの・・・?
出だしというのはあの蛇と角兎の件の事じゃな。ったく惜しい事したわぃ。
「角兎の肉と毛皮3体分と薬草5束分確かに。他には何か売れそうなのあるか?」
とその店主らしきおっさんがカウンターに置かれたそれらを何やら見定めつつそやつに聞く。
そーそー。『魔石』の扱いとかはどうなってるのじゃ?
「んー。後売れそうなのはこの蛇の素材と角兎の魔石だけだな。」
と依頼だかの分とは別に持ってた袋から蛇な素材と懐の袋から魔石を3個出してカウンターに置く。
店のおっさんはそれらも見定めてたから多分『鑑定』してるとは思うんじゃが・・・
「ふむ。状態は全部合格のCランクだな。魔石はちと安いがそれでも構わないか?」とそやつに向き直る。
Cランク?『解体』の良し悪しがランク付けされとるんか。まぁ当たり前なんじゃろうがの。
猫耳をピコピコ動かしながらも何か考え込んでいたそやつは一瞬対応が遅れた様じゃったが
「え?あぁ、いや構わないぜ?角兎のとかは大分ダブ付いてるんだっけか?」
と辺りを気にしつつ話を進める。・・・まだ私が気になっとる様じゃの。
「あぁ。要らん『魔石』は魔力回路の燃料とかに回してるが処理が追い付かなくてな。」とおっちゃん。
なんと。そんなにいらん物なら私にくれぬかのぅ。
「ほれ。これが今回の依頼の分と売った素材とか魔石の分の金だ。無駄遣いするなよー。」
と『鑑定』が終わったらしいおっちゃんがカウンターの内側から硬貨の様な物を20枚程渡す。
「お。悪いね。じゃぁまた来るわ。」とそやつはジャラジャラお金を確かめつつ仕舞うと
首を捻りつつ帰っていった。ま、あやつはもう放っておいても良いじゃろう。問題はと。
「さて。この素材はこっちにしまってと。この『魔石』は裏の『魔石』置き場にでも捨てるか。」
と犬なおっちゃん。おぃこら。買い取っておいてその扱いはないじゃろうにっ!?
因みに村には魔力による結界が張ってありますが彼女は素通りしてしまっているのでそれの存在にすら気付いていません。何かで気付かせてあげるべきだったかも。