暴走を止める為にすべき事
ルゥスの獣化が始まってしまったみたいなんです!?
ルゥスが暴走してた原因はどうやら『自分が『ヒト』である』と言う事らしいの。
『乙女ゲーム』内での『ヒロイン』たるリーナの役目は調整役となって
なんやかんやしつつ関わったヒトの悩みなんぞを解消して行って、
それが相手との恋愛成就に繋がっていく。ってのが大まかな流れになる筈じゃが、
関わらなかった攻略対象者達はそういうのは自力で解決してかにゃならんのは
当たり前っつーかほったらかしにはならんのもまた事実でな。
『ゲーム』じゃそんな所はボカすか適当に処理されるんじゃが、
本来は『ヒロイン』たるリーナが現実にその解消シーンの一つの形に遭遇する。
なんて事態は普通は無いじゃろうし。
今回の様なケースはどういう扱いなのかまでは私には分からないが、
『正式なルート』であったとしてもリーナだけで手に負えるとは思わんわ。こんなん。
有り余る月の光を潤沢に浴びて銀色の体毛に覆われ始めたルゥスの身体は
『けも耳』を通り越し、完全な獣化が始まってしまっている。
(うわー。『銀狼』としての再生能力まで追加されてしまってるのじゃ!?)
本体たる『銀狼』の傷を癒そうとする意思が影響してるのか、切り離されたとはいえ
その一部たりえる『魔石』は『銀狼』としてルゥスの肉体を再構成していると私は判断する。
(やはり『魔石』はコンデンサーの一種でもある様じゃな。エネルギー源を切り離さなければ!)
と周囲を伺って見る。
ルゥス本人に干渉するのは駄目じゃな。本人はあの調子だし『吸収』で『魔石』を
体内から抜き取ろうとしようモンならそれこそ地獄の果てまで追い掛けて来そう。
(つか今下手に砕いたり取り出したらルゥスが死にかねんし却下じゃな。)
ならば『銀狼』は。というと、今現在はルゥスの変身用の回路の一部と化してるので
例えぶん殴って気絶させた所で役目は殆ど変わらないのでほぼ無意味だし。
(うへぇ。召還魔方陣の時同様に舞台装置であるこの空間をまずなんとかせねばならんのかよ。)
と人知れずため息を付く。幸いそれに適した『道具』は私なら即用意出来る事だし。
キィーロ達はどうしていいか分からずにその場に立ちつくしてる。リーナも同様じゃな。
彼らに妨害工作を頼むにしては手の内を知られているだけに阻止されかねんし
ここは私が何とかしてやらなければならんじゃろう。
私はあえて悶えてるルゥスに突っ込んで行く。(振り払われるのは覚悟の上じゃっ!!)
ぴょいん。ルゥスの視界に入る角度まで『立体機動』で飛び上がり、
ルゥスが気配で変身の邪魔をされてたまるかと払われた彼の腕に当たって隅の方に吹っ飛ばされる。
「ソラ!?」立ち竦んでいたミィナが私が吹っ飛ばされた事で再起動を果たすが
私はその間に瓦礫の山の陰に何かを見つけた振りをして『ストレージ』から出した
柄の無いマトックモドキの刃の部分を地面から拾い上げて口に咥えるのを忘れない。
別段マトックの刃で攻撃をする訳では無い。目標は別にある。
ちらりと『銀狼』の方を観る。『魔力操作』の応用でエネルギーの流れを読めれば
良いがそんなん分からんでも大方の予想は付く。地底に月がある訳無いんじゃから
月の光の導入経路、すなわち換気口のある上方を探すだけの事じゃ。
それさえ見付けられればまだ何とかなるかも知れん!
ワーウルフの形態の一つに獣化があります。要はケモノ化する事でより元となった狼の力を使える様になるという、ソラの『変化』と似た能力ですね。使いこなせればかなり強力な存在となるのですが、制御が難しいともされるので停めないと大変な事に・・・ 追記:サブタイトルも暴走中に付き改題中です。




