水場の罠(VSブースト魔狼Ⅱ)その五
巻き返し開始です。
アンヌが『魔狼』の攻撃をようやく振り払った。
被害はというと服の袖が若干破けてる程度で血は流れていないっぽい。
「う”ー。乙女の柔肌に穴が空いたらどうしてくれるのよ。」
と文句言いつつヒラヒラと『魔狼』の涎を払いながら動作に支障が無いか確認中。
どうやら牙を突き立てられてた訳ではないっぽいが、
ばっちぃ事には代わりないじゃろうし心配じゃの。
ヒューイも相当気が立ってるのか鋭い目付きで眼下をまだ見回しているし。
ここんとこ換気扇程度代わりにしか役に立ってなくて
相当鬱憤も溜まってるんじゃないかな。
しかも今回はご主人様に攻撃されてるし、何事か考えあぐねている様にも見える。
私もそろそろ水場の縁に上がった方が良さそうじゃな。
ケインも水の魔法剣で『魔狼』達の攻撃を捌いてくれているので
上がるのなら今の内じゃろうて。
水を掻いて『立体機動』で軽くジャンプするとスタッと水の縁へと素早く降り立つ。
(お?水分が勝手に取れていく。ってケインの魔法剣が原因かの。)
狙ってた訳では無いが切っ先が下げられたケインの魔法剣は
いわゆるチャージ状態にある様で、近くにいるだけで乾きが早くなる様じゃな。
その間にも間合いを取りつつ『魔狼』達が次なる手をどうしようか
こちらの動きを伺っている雰囲気なんじゃが、徐々にその様子がおかしくなって来た。
なんか身体を覆ってる緑色の風の障壁に揺らぎが生じて居心地が悪そうな?
(んー?さっきまでの防御膜が薄くなったりして来てないかの?)
もしや胃の中に貯めてた一角緑兎の角を
消化してしまったのかと期待したけどどうもそれでもないっぽい。
(変じゃの。何かに阻害されている様な気がするんじゃが?あ。ひょっとして。)
と手近な『魔狼』を攻撃しつつ上空を見上げてみる。
やっぱり。天井付近に張り付いてるヒューイの全身が薄く光り輝いていた。
風魔鷹たるヒューイは風を操れる。ミニ版『ウィンドカッター』は
レベル的にはまだ無理でも怒ってなんとかしようと試行錯誤している内に
借り物の風を操る『魔狼』の防御膜を搔き乱す事が可能となったのじゃろう。
そういやヒエラルキー的に見ても猛禽類は狼よりも強くなる場合もあるんじゃったっけか?
どうやら異世界でもその法則はきっちり働くみたいじゃな。
風を操る事に関しては鳥であるヒューイの方が狼より下手であり続ける訳も無いでしょうしね。次回も戦闘シーンです。




