山を造るという事
地形を整える作業に入る様です!?
あれから数人がかりで息も絶え絶えな魔熊を仕留めたものの、
巨体過ぎてそのままでは村の凱旋所までは運べない。という事で
その場で『解体』を行う事になったのじゃ。
私同様に『解体』スキルを持っていてもどう『解体』していいのか
分からん連中が輪になってドワーフらによる『解体』を見守っている。
ドワーフ「すまないがこの部位の『解体』を誰か頼む。」
と次々に差し出される部位を手が開いてる者が既に『解体』に携わっている者の
手元を見ながら見様見真似で『解体』したり手解きを受けていたりもしている。
額に手斧射ち込んじゃったし敷物としての価値は下がってるんじゃろうが
その毛皮はほぼ熊の姿のまんま凱旋所に持ち込むらしく、
ご機嫌な鼻歌まじりで空の荷車に括り付けられておったけれども
流石に死に顔は伏せられておったわ。ゾンビ化とかはせんで貰いたい所ではある。
ある程度処理が片付いて『素材』となった『魔熊』を乗せた荷車らを見送ったら
そろそろと沢のある方向へと移動を開始する。
これはまぁ、自然の治療というか『補完』をするには
まずは川の水源に近い方から手を付けないとどうしようもないからじゃな。
『植木鉢』で例えるんでならば、まずは『植木鉢』を用意する事から始めなくてはならん。
この場合は山自体が『植木鉢』となる。もっと大きい括りだと大陸全体を『植木鉢』に
例えても良いのじゃが、あんまし大まかにしてしまうと現行の人工森の様な
モンばっかになってしまうからのぅ。
しかしながら今求められてるのは多様性な森。出来うる限り小さい括りにしないと
バランスも取りにくいじゃろうし難しい所ではある。
(なんせ何をするにも無料という訳にはいかんのが文明社会という物じゃしな。)
森が正しい方向に育っていけば下流の物産の質や海の生態系にも『得』となる。
海の町から始まった『祭り』が何故上流の村への『祭り』に繋がるのかという理由もここにある。
山が、いや陸の自然が乱れていれば、その影響下にある海もまた荒れてしまうのじゃ。
船の残骸を『素材』の一部としてまで川を遡上させるのは、それを生まれ故郷である
山や森に返すという意味もあるが、それだけの理由ではない。
例え『錬金術』と云えども無からは何も生み出せない。元となる『素材』が
必要だからである。山に残された物が少ないというのであるのならば、
それを出来るだけ元に帰して貰えればその分苦労しなくて済む。要は安く出来るという事じゃな。
沢に転がってる岩や石や船の残骸を『錬金術』で合成したり変成したりさせつつ
過去の改修に手を加えていく。一つ一つの作業は地味で手間が掛かるが
それが何れは食卓やらの生活の質に関わってくる事を経験で知っている彼らだからこそ
手を抜く事を良しとはしないじゃろう。
私やミラやヒューイはそんな彼らを傍からサポートするのが役目。例え火元代わりじゃろうが
扇風機代わりじゃろうが素材拾いじゃろうがやれる事からやっていかねばの。
現実世界でも海の恵みを得る為に雑木森を一から育て直す所から始めている所があるそうです。山の恵みは海の恵みを左右するという事なんでしょうね。




