やさグレもの(VS魔熊)その③
手斧をぶん投げる様です。
ギリギリと絞まり続ける荷造りロープの後方では男女問わず
多数のヒトやゴーレムらが纏わり付いている。
「引っ張るだけじゃ駄目だっ!そこらの木も利用しろっ!!」
埒があかないと判断した参加者一人からの提案により木を一周する形で
廻り込みさらに木の幹を滑車代わりにしてロープを引っ張りあげる人々。
一方魔熊も前進だけでは息が詰まるので立ち上がって
腕を地面に叩き込んで土槍を発動させて
ロープを切り裂こうとしようともがいたが、
振り上げた右腕の肘関節部分に手斧が括りつけられたロープが
投げられ絡め取られてしまうと今度は土壁を
発動させようとして振り上げかけた左腕の肘関節部分を
別な者に後方から投げられた手斧付きロープで絡めとられてしまって
無理やりエビぞり気味な形で地面に半固定させられてしまいそうになった。
「!$%!!ガフッ!!!!」
呼吸困難で泡を噴きつつも抵抗する魔熊は今度は踏みしめた右脚を地面に
叩き込むとそこから土槍を出現させ
腕の行動を阻害するロープを切り裂こうとする。
「ズゴッ!!」スカッ!!
四つ脚動物の強みとでもいうべきなのか四肢のいずれかでも呪文を発動出来る
様ではあるが行動が先読みされていては意味が無い。
(右で攻撃、左で防御て方法先に開示してりゃそらそーなるわな。)
突き出て来た土槍は余裕を持って切っ先の行先からロープが避けられてしまっている。
今度は左脚を後方の地面に叩き込んで土壁を出現させた魔熊であったが
(あ、詰んだわ。アレ。)
今度はせり上がる土の壁の上面を利用されて却って自分の首を自分で絞める格好になってしまう。
「!?!?!?」
直ぐに土に帰ってしまう即席の防御壁だった事が幸いしてロープがそれ以上に首や腕を
絞め続ける事態からは逃れられた様だが自分が今エビぞり気味になってる事を
考慮して無かったらしい。
(んー。多分土壁でロープを引っ張る作業を邪魔したかったんじゃろうが駄目駄目じゃな。)
土槍みたいに尖ってる訳でも無く単なる壁ではロープを押し上げる効果は
あっても切るまでの鋭利さは望めない。
攻撃手段の殆どは封じたがそれでも邪魔にはなるのですかさず脇の方から
魔熊の左右の膝に向けてロープが次々に絡め掛けられ魔熊の行動力を奪っていく。
それでもまだ動かせる方の首を巡らせて抵抗を続けようとする魔熊の体表が薄ぼんやりと光る。
(む?『魔力操作』じゃと?今度は身体強化でもする気か?)
私は魔熊のしつこさに半ば呆れと敬意を払いつつもふとロープを巻き付かせる為に投げられて
役目を終え木に立てかけられている手斧に目をやった。
(ここで逃れられたら手負いの熊だけに危なくてしょうがないし、やるしかないかの。)
手斧を口に咥えて後方に下がっていく。同時に『立体機動』を駆使して木を駆け上がり
(『魔力操作』『立体機動』『転がる』『狙撃』!これでどうじゃっ!!!!!)
魔力を込めまくった手斧が縦に大回転しながら魔熊の額に向かって射出され、
「ゴスッ!!!!」「ガッ!!!」
と派手に突き刺さって止まった。止めまでは刺せなかった様じゃが後は野となれ山となれじゃ。
「うん?誰があの手斧をぶん投げたんだ!?」
不思議がってるドワーフのおっちゃんの横をそしらぬ顔で通り過ぎ、ミィナ達に合流すべく
移動して行った。
周囲の木々を利用してロープワークで敵の動きを封じる。こんな事が出来るのも人工森だからこそです。
やられる方はたまったものではありませんがね。熊の倒し方は現実にある方法を応用しました。




