やさグレもの(VS魔熊)その②
土魔法を使われる様です。
前進し囲みを破らんとする魔熊は振り上げた右腕を地面に叩き付け
凹ませる程の斬撃で持って目の前の狐ヒトの村人に襲い掛かっていた。
ひらりと避ける狐ヒトだったが着地した瞬間に慌てた様に
またひらりとその場からジャンプして足元から出現し突き出される
様に伸びて来た鋭い土の槍の攻撃をスレスレで避けて後退しつつ囲みを維持する。
(!?なんと、土槍か?流石は魔物だけあるわぃっ!)
どうやら発動にはいちいち腕を地面に叩き込む必要があるらしく
こっちが駄目ならあっちでもな感じで拳を地面に叩き込む魔熊ではあるが
(射程が短すぎてけん制にしかなっておらん。しかもじゃ。)
突き立った土の槍は直ぐにボロボロと崩れて土に戻っていく。
(地味に後処理が早いのは良いがあれでは障壁にもならんの。)
切り裂く事に特化しているのであろうソレは形態維持時間が極端に短かった。
「ガルルゥっ!!」
歯噛みしながら唸り捲る魔熊がじりじりと追い詰められていく。
いくら均等に並ぶ木々や斜面を利用して『突進』や『転がる』を
使っても包囲されている事には変わらない。
襲いやすい弱い者は既に後方に後退しており周りは狩人やらの戦闘要員ばっかである。
いくら魔熊がタフでも四方八方から責め立てられ続ければ
倒されるのは時間の問題でしかない。
「ギャルオゥっ!!」またもや隙を見出したミラの火炎球ブレスが放たれた。
だが、迫りくる火炎球ブレスをみやった魔熊は今度は左腕を地面に叩き込むと
その目前に土の壁が素早く立ち上がると熊の代わりに被弾した。
(ちょっ。今度は土壁じゃと!?どんだけ土魔法に通じておるんじゃ!?)
どうやら今度のも形態維持時間その物は長くない様で直ぐに土に戻ってしまうが
これで魔熊がかなり攻めにくい相手だという事も分かる。
肩や背中に刺さっていた矢は既に抜け落ち跡形も残っていない。
多分毛皮やそれでも厚いであろう脂肪層で碌にダメージも与えられてはいないんじゃろう。
(冬籠り直前の熊じゃったらさらにダメージ与えにくそうじゃな。まだ運が良いと云う事かの。)
恐らくあの土魔法は魔熊にとっては生活に必要な魔法であって攻撃に特化した物ではない。
(魔法で地割れとか起こされないだけマシかの?まぁ起こした方も唯ではすまんが。)
魔熊は今度は右腕を救い上げる感じで土にガッシと食い込ませるとそのままの勢いで振り上げた。
「ババババッ!!!!」掬い上げられた土が小粒の土の弾丸となって目の前のエルフに襲い掛かる。
(今度は土礫か。石弾で無い分嫌らしい攻撃じゃな。)
石弾に比べると攻撃力では劣るが範囲攻撃としては有能である。
魔力で調整されたそれは相手を汚す事には向いている。つまり怯ませる事が可能なのだ。
慌てて腕や手でガードして隙を作り出させる事に成功した魔熊はその合間に包囲の隙間から
逃げ出そうとするが、そうは問屋がおろさなかった。
「キューィ!!」太目の荷造り用のロープを両足で掴んだヒューイが素早く魔熊の後方から
飛来すると四つ脚移動の為に前のめりになり掛けてたその瞬間を利用してグリンと回り込むと
燕返しの如くグルリと魔熊の首の周りを一周すると元の方向へと戻っていく。
「グガッ!?」逃げ出す事に集中していて対応が遅れた魔熊の首がロープで絞まっていく。
自らの体重と勢いをも利用し引き摺り逃げようとする魔熊と
包囲の外側に居た人達との綱引きが今始まった。
魔熊ならば土魔法を使ってもおかしくはないだろうという事で使わせてみました。詠唱が無い分弱い様ですが脅威度を上げるのには十分役には立っている筈。次回も戦闘シーンです。




