やさグレもの(VS魔熊)その①
熊さんに出会った様です。
急いで『MAP』を確認すると赤い点が恐ろしい位のスピードで
こちらへと走って来ている所じゃった。
森の斜面の上の方では蜘蛛の子散らす様に黄色い点が右往左往している様じゃが・・・
「皆避けろーっ『魔熊』の『突進』だーーっ!!」
(ひぃぃ。やっぱし熊かぃ!しかも唯の熊じゃなくて魔物化してるとはの。)
鳥馬が曳く荷車よりも早いスピードで斜めに斜面を駆け下ってくる
茶色の塊が見える。
人工森の利点は逃げ回る方も逃げやすいが逆も同じで追いかけやすいんじゃよな。
ましてや向こうは元々山仕様じゃからヒトよりか足腰が頑丈である。
まぁ狐ヒトやエルフらにとっては左程遅れを取られにくい相手なんじゃが
それでも脅威である事は変わらない。
特にこの時期は多分向こうは食料事情やら繁殖事情やらで気が立っている
事が多いと思われるからの。
こんな食料が得にくいだろう開発された森に居るという事は勢力争いに
負けて移動中な奴だったりする可能性大じゃろうしな。
「グオオオゥッ!!」
(で、デカッ!!)オーク並み、いや下手すればそれ以上はありそうな
ガタイを震わせて2足で立ち上がったそいつが威嚇の声を上げる。
天然の森ならいざしれず人工森では足場もしっかりしているので立ち上がりやすい。
が、その代わり前後が余裕無い訳で。誰かが上から一抱え程の岩をそいつの
背に命中させた。
ドワーフ「ガハハハッ!!どうじゃ。おめぇの弱点はその踏ん張りの余裕の無さだっ!!」
いやまぁ確かに熊にとっては静止して斜面に留まるのは向いてないんじゃろうけどさ。
「ゴロゴロゴロゴロ。」
山の斜面を『転がる』の状態で迫って来られる方はたまったものではない。
「あほーっ!!山とかじゃ石とか岩の類いや例え熊でも転がしちゃ駄目って教わってないのー!?」
と転がる先から逃げてエルフやその他の方々達が抗議の声を上げている。
ドワーフがポリポリと髭を搔きつつ詫びた。「あ。そうじゃったっけな。悪い悪い。」
茶色いバカでかい毛玉はただ転がってくるのでは無く生えている木を利用して
器用に軌道修正して人々を追い掛け回す。
「ポスポスポス。」木々の上からエルフらが放ったらしい矢が2~3本斜め上から刺さるが一向に
気にする気配も無く転がりまくり、斜面をある程度上った所で再び仁王立ちし
ブルブルと身体を揺すってまた咆哮した。
「グルガゥーっ!!」
不機嫌そうな声で威嚇しているそやつを遠巻きにして弓矢を持ったエルフや狐ヒト達が
集まって来て包囲されている事に気が付いたのであろう。
「ギャルオゥッ‼」ミラの火炎玉ブレスが「ボフン!!」と着弾するのとほぼ同時に
エルフや狐ヒトの魔術師らが放った火魔法が次々に着弾する。
若干えげつない気もするが向こうも『魔熊』であるからかブスブスと焦げた顔を
爆煙の中からひょいと覗かせると次の瞬間には囲みを破るべく前へ走り出て来た。
全然元気じゃないですかアレー!?睨み合いはさらに続く。
天然森ならいざ知れず人工森ならば熊も平地並みに立ち回りが可能だったりするんですよね。ドワーフな方の様な攻め方は真似しちゃいけません。




