山の住人達
山を再構築する様です!?
さて、これから山の奥の方に行かねばならぬではあるが、
そもそも何故この時期に山に入るのかと言うと単純な話、
迷いにくくなるからである。
かつて山を開拓した時の名残りというべきなのかも知れないが
私がかつてこの世界で最初に転生しえた森とは違い、
こちらの森は春や夏に素人が分け入ろうものならば迷う事必須だからである。
その理由はこの森の大半が未だ人工森で形成されている事に由来する。
天然の森の方が迷いやすいんじゃないかって?残念ながら逆じゃよ。
見渡す限り同一種の木々で再構成された森の方が迷いやすいんじゃ。
主に視覚的な意味でな。
切り倒す事も前提にした木の間隔は言わずもがななんじゃが
濃淡の余り感じられん緑もまた方向感覚を失わせる役目に拍車を掛けている。
『立体機動』やらを駆使する『エルフ』達も基本は天然の森の生み出す地形が
あってこそその特性を生かせるのであって、こーゆー人工森では
逆に実力を発揮出来んそうであんまり好みではないそうじゃが
それでもマタギもどきな事をしてこの森の整備を手伝ってるらしい。
そして山と言ったら欠かせないであろうもう一つの種族が居たりするのが
ファンタジーな世界の『お約束』でもあるんじゃが、居るんじゃよ。
あの『ドワーフ』がな。『エルフ』が森の民ならばあちらは山の民。
鉱山とか開拓してそこに住み着いとるらしんじゃが、案の定というべきなのか。
ド「フン!細っこい腕しやがって!!その高慢ちきな顔をこっちに寄越すな!!」
エ「なによ!そっちこそ髭もじゃな暑苦っしい顔をして!!」
とまぁこんな感じで村等から来た連中の前で何かと言い争いになってたりする。
キャットファイトとか取っ組み合いしたりしないだけマシなのかもしれんな。
ちょっとしたいがみ合い程度で済んでいるのは両者が切っても切れない関係だからかの?
『ドワーフ』は森林資源を。『エルフ』は彼らの工業技術なんかが無ければ
お互い旨くはやって行けなかったりするからのぅ。あれは似た者嫌悪だかて奴かも知れん。
一しきり挨拶代わりらしいその『儀式』を終えてしまえば後は合間合間に
睨みあったりする程度であたりさわりの無い関係を保ってる様じゃな。
まぁ彼ら2種族の協力もあって深淵なる手付かずの森の一歩手前の
ヒトの手の入った人工森もちょっとづつじゃが本来の森の様相へと戻って来てるそうで
私らのやる事と言ったら土壌の再形成の手伝いやら地形変更の手助けがメイン。
元々あった地形も長年の表土流出やら栄養の使い過ぎやらで枯れて来ているので
木々が茂っている様に見えても実際はかなりヤバい状態に近い所もあるらしい。
(その辺は私が元生きていた世界とそう変わらんな。ただ違うのは・・・・)
ミィナやアンヌやリーナ達が真剣な面持ちで現地に赴任している錬金術師らに
説明を受けていたりキィーロが『ドワーフ』やゴーレムらと一緒に持って来た
資材やらを置き場に移動してたりと人海戦術で山や森を『補完』しようとしている点じゃ。
例えもう元の状態には戻せなくてもそれと同様かそれ以上の状態にする。
ある意味に置いて理想系ではあるものの『やり過ぎ』な部分もある訳で、当然弊害も出る。
「ピーーーーィ!」(ほら来たっ!!)
見張り役の警戒の笛の音が周囲に鳴り響いた。どうやら招かざる客が出てしまった様じゃの。
『エルフ』が居るのならば『ドワーフ』が居てもおかしくはないよね?という事でほぼ勢いで『ドワーフ』登場です。行き過ぎた『開発』も問題ですがその逆もまたしかり。次回は戦闘シーンとなります。




