夜への準備
地上に居すぎるのも危険です
あれからも休み休みしながらも魔森鼠の死骸が入る穴を掘り上げて
きちんと埋葬し終わった頃には日も傾き夕暮れ時じゃった。
押すだけでは動かなくて穴の際をぎりぎりまで削ったり、
逃げ遅れて穴の下で下敷きに成り掛けたりもしたけどなんとか夜になる前に済ませられた。
「今日の所はこの付近の樹上ででも過ごすとするかのぅ。」
早速『立体機動』スキルを発動させつつ間隔が狭そうな樹と樹の間を蹴り上がって
幹と枝の隙間に身を潜めそうな所を適当に見繕う。
「やれやれ。この森が『人』の手の入った『森』で無くて良かったわぃ。」
とへたり込んで地上を見下ろす。
『口』が開けば枝葉を集めて即席の『巣』を作るという選択肢も増えるのだろうが今はまだ無理。
「さて。死骸は埋めるには埋めたが匂いまでは完全に消せてない筈じゃ。夜に何か寄ってくるかの?」
と埋めた場所の監視体制に入る。
『気配感知』とか『夜目』の類いのスキルはまだ無いがこちらには『MAP』がある。
「む。夜間使用すると画面が目立つかと思ったが・・・余り見えんな;」
と薄暗い空に溶け込む感じの『MAP』画面を見遣る。
まだ育ってないせいなのかあるいは夜間仕様ではないのか分からないが画面自体が見えにくい。
「まぁこっちの緑の点とか赤い点とかだけでも光って観えるのは在り難いのぅ。」
魔森鼠の時は伝わってくる気配だけで居場所が何となく分かったので『MAP』は使わなかったが
夜ともなればまた話は別じゃ。
「夜の森ともなれば『狼』とか出るかの?『フクロウ』みたいのもおるかも知れんな。」
と念の為に『MAP』画面が下の地面から観えない様に枝の上に視線を移す。
「ふむ。生理現象としての『眠気』が無いのは良いが、寝れる時に寝た方がいいのかのう・・・。」
と目を閉じてみる。一応『MAP』画面もクローズはしておく。
やがてこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた狐の玩具は眠りへと落ちていった。
元『生物』ですから寝ようと思えば寝れます。『無生物』だからって『睡眠』が必要ないとは限らないという事でここは一つ。




