退船中
リーナの弱点が皆に暴露される様です。
ギリギリギリギリ。「カタカタカタ。」ギリギリギリ。「カタカタカタカタ。」
何個かに大まかに纏められた『船蛸』の『素材』が何回かに
分けられて大船倉より引き揚げれて来た。
太めのロープを引っ張ってるのはミィナ達や私以外にスケルトンな方々や
ハーピー達であったりする。
因みにスケルトンな方々は無報酬らしいが一応『仕事をこなす』という
役目を担う事で『浄化』に向かっていけるらしい。
本来は目的地に着いた時や寄港した時の荷揚げ作業を疑似的にせよ
体験させる事でこの世への心残りを減らす。
もはや出発地点に戻る事の無いこの船では完全な達成感は得られない。
それでも陸揚げという行為は元船員であった彼らに取って十二分に
心休めとなるに違いない。
だからこそ簡易な出入り口からの甲板への出現という制限はあっても
彼らは船の中から出てこれるのじゃな。
私は確かめてないが恐らく簡易な出入り口の方にも魔物除けの術式は
施してある筈である。それが陸揚げの際だけは限定解除されるのであろう。
真のラスボスに使役されているのだろうとはいえ彼らもまた元船員である。
己が本来やるべき仕事に携われるという事は誇りでもある。
「「んじゃこっからは私達が荷物降ろすねー。」」とハーピー達が
地上への『素材』下しを買って出た。
下の浜辺にはクエストの凱旋所からの荷車が2台程既に廻されて来ており
そこへ次々と『素材』が降ろされていく。
元の『船蛸』がおっきかったからあっという間に2台の荷車が一杯だ。
「こっちは終わったよ。そろそろ俺達も退船しないと。」
とキィーロが階段を駆け上って来て出口から出てきた。ヒューイも
大船倉の中から飛び出て来てまた波除けに止まっている。
「こっちも準備良しっと。ってあれ?リーナどうしたの?」と
アンヌが波除けから恐々と浜辺を覗いていたリーナに声を掛ける。
振り返ったリーナの顔は真っ青だった。
「・・・ワタシ、実はこういう崖みたいな所から地上へ降りるの苦手なのよぅ。」
ありゃ。鳥ヒトなのに高い所は苦手なのかの?いつかは自力で飛んでたのに。
「自分で地上から飛ぶ分には問題ないんだけど。こういうのはちょっと・・・」
とかなり凹んでる。
ひょっとしたら過去に突き落とされた記憶でもあるのかも知れんな。
「それなら、私達が降ろしてあげようか?」「降ろしてあげるー。」
と無邪気な声でハーピー達がリーナに声を掛けている。
何気に荷物扱いされとる様じゃが降ろして貰えるんなら楽でいいんじゃないかの?
リーナにしてみれば崖下を覗く行為だろうが船から地上を見下ろす行為であろうがトラウマ思い起こさせてしまうのは仕方がない事だとは思いますけどね。いつかは解消されれば良いのですが。




