宿借りしモノ(VS 船蛸 その5)
相手の能力を借りる様です。
ぎゅるぎゅると斬れた脚を蠢かす複数の『船蛸』の切れ口は
『自己再生』によってまた新たな脚先が生え始めていた。
「ギャルオウゥ!!」ボフン!ミラが火炎球ブレスを放ち斬れ口を
焼いてるので当たった脚の再生速度は若干落ちている様ではあるが
それでも焼き石に水状態に近いのは本体が元気そうなので丸わかりである。
「チャリン。」とキィーロが折られた剣の破片が
音を立てながら船底に落ちて来た。
どうやら再生に伴って斬りかけた所から自然に抜け落ちた様ではあるな。
「シュポン!」ドカン!バラバラバラ。おっと。また墨の衝撃弾か。
発射する際の音と漏斗の口の方向さえ気を付けてればそんなもの・・・・
「ブシューーーッ!!」
(あばばばばっ!?空気鉄砲の次は『蛸墨』攻撃じゃとーー!?)
墨弾を避けて安心してた所に漏斗を向けて『蛸墨』を発射されるとはの。不覚。
目晦まし兼足止め用としては有効な戦術ではある事は褒めておくとするかの。
ぎゅるるん!蛸脚で私が水圧や墨被りで怯んでる事を前提にした攻撃を
『船蛸』が繰り出して来た。
(ふっ。フェイントを噛まして来た心算じゃろうがそうはいくかのっ!!)
この攻撃はあくまでも私を回避行動に持っていくのが目的の筈。
だけれども私はヒトではなく『玩具』である。よって通常の『避け』は必要ないっ!!
私は伸びてくる蛸足をすり抜ける様に後ろや横にでは無く前に進む。
乾いて来た蛸墨が何やら固まってきた様ではあるが問題ない。むしろ好都合じゃ。
私は船底に転がり落ちていた剣の残骸の刃を口で横に咥え拾うと
『立体機動』を使って再び脚の間で『鼓舞』もどきを行いつつ速度を出来るだけ上げる。
「シュポン!」再び墨弾発射に切り替えた『船蛸』の攻撃をも足場に利用し
『船蛸』を見下ろせる位空中に駆け上がった私に向けて『船蛸』がまたもや
目晦まし用に『蛸墨』を「ブシュウウウっ!!」と発射した。
(掛かったな!阿保めがっ!!私の目的の一つはそれを浴びる事にあるっ!!)
さっきもそうだったが『蛸墨』は空気に触れると急速に固まる性質がある様じゃな。
墨弾を作りだすのに固まりにくいんでは扱いづらいじゃろうし当たり前の事かもしれんが。
ならば私はその性質を逆に利用してやれば良いだけの事。
私は全身を蛸墨で覆われながらも折れた剣を横から縦に銜え直しつつ、『立体機動』を
使って空中に四散しつつある『蛸墨』の残照をちょと蹴って軌道修正する。
不安定な足場じゃから跳躍力は余り得られんが問題はない。
後は私のスキルの使い方次第じゃな。仕上げとまではいかんじゃろが目にもの見せてくれるわっ。
蛸の墨なんかは発射した後でないと変質しないそうですが墨弾は発射前に空気を取り入れる必要もあってか体内で固体化出来るという事でここは一つ。次回で船蛸との戦闘シーンは終わります。




